表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かげろうのシーマン  作者: 佐久間五十六


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/100

自分の信じる正義の御旗

 防衛大学校を卒業してからは、あっという間であった。幹部候補生過程を終え、現場を転々とする様になってからと言うもの、雅人は何か大切なものがこの日本には、忘れられている様な気がしていた。

 仲間の死や諸外国との武力衝突の間で自分の立ち位置が分からなくなっていたとも言える。だが、その答えは直ぐに分かった。ある司令官の言葉がそれを気付かせてくれた。それは鹿屋基地を去る時に江川海将補から言われた言葉であった。

 「今、世界は混沌(カオス)の中にある。世論はそれに流されている。だがな、桐生君。君はそんな情報に惑わされてはいけないよ。どんな時でも大切なものは、この国を守り抜くと言う気持ちだ。無論、自衛官は上官の命令が絶対だ。己の気持ちとは裏腹の行動を取らなければならない事もあるだろう。それでも、自分の中にある絶対的な正義を曲げる必要は無い。自分の正義を曲げる事は、軍人として敗北するも同じ事。道に迷った時は、この言葉を思い出して欲しい。短い間であったがありがとう。」

 自分の信じる正義…。そんなものは考えた事も無かった。だが、今ならその言葉の意味が分かる。それは自分の階級が上がったからとかそう言う事では無い。そもそも自衛官は正式な軍人ではなく、公務員である。とは言え、諸外国から見れば明らかな軍人と見なされている。自衛官のジレンマはこれだけではないが、えてして立ち位置が分かりにくくなってしまうのは、自衛隊の存在の曖昧さと不明確なせいでもある。

 だが、国家の最後の砦である彼等自衛隊が、そんな不安定な状況であっては困る。江川海将補の言う様に、自分の信じる正義を貫く覚悟がないのだとすれば、自衛官の資質に欠けると言う事である。国家の為に死ぬ覚悟があるのと同じ様に、自分の正義の御旗だけは下ろしてはいけない。

 シーマンが空を飛べる様になった世界は、まだ到来してから日が浅い。しかしながら今や日本の海を守る為にはかげろうのシーマンが必要不可欠である。人知れず今日も日本の空からパトロールしている彼等のお陰で、我々は安心して眠れるのである。かげろうのシーマンはいつでも日本人の味方なのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ