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かげろうのシーマン  作者: 佐久間五十六


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戦死者へのレクイエム

 一野一佐の捜索は、結局3ヶ月程続いたが発見には至らなかった。せめて遺体だけでもと、隊員達は一生懸命必死にさがしたが、広い日本海において、たった一人の人間を探すのは困難を極めていた。

 陸で行方不明者一人を探すのと、海上で一人を探すのは難易度が、格段に違う。海上では波風があるし、何よりも海水が体温を奪い低体温症で死ぬ可能性もある。その為、救命胴衣を着用していても危険であると言われている。

 遺体が水底に沈んでしまえば、サルベージはほぼ不可能に近くなる。海上の行方不明者を発見出来るケースは救命胴衣を着用して漂流している場合のみとも言える。その為、大抵の場合は、陸に比べると比較的短時間で打ち切られる。見つけるのが極めて困難だからだ。

 この領域だけはいくら海上自衛隊と言えども、手出しが出来ない。それに死亡した人間の捜索には海上保安庁も出動してくれない。海上保安庁の任務は生存している要救助者を救助したり、パトロールをするのが主任務であり、行方不明者の捜索に長時間をかけるのは稀である。こればかりは諦める他無い。

 今回の事案の様に、領空侵犯機が海上自衛隊の哨戒機を撃墜すると言うのは、想定外であっただろうが、扱いは殉職である。家族には、何の喜びも無いが、階級の特進は気休め程度にはなるだろう。とは言え、人が死んで喜ぶ様なきちがいは、少なくとも自衛隊関係者にはいない。

 だが、主権国家として国家間の争いで命をかけた者に対して、階級特進位はしてやらねば、国家の面子が保てない。日本は戦死した人間に対して何のケアもしてくれない。そう思われては、国家の面子も何もあったものでは無い。

 自衛隊は創設以来、事故死によって隊員を失った事はあったが、国家間の紛争で戦死した人間はいなかった。一野一佐は中国の戦闘で、初めてだった。こればかりは国家にとって大切な事と言得る。

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