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かげろうのシーマン  作者: 佐久間五十六


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代償

 米軍の空母運用を例に上げてみよう。空母運用にも落とし穴が存在するのは以外に知られていない。まず、艦載機の問題がある。それに加えカタパルト(発艦用の射出装置)の技術も必要不可欠である。

 飛行甲板の前方部を反り返らせたスキージャンプ式と呼ばれる発艦方式で運用していたが、最近は全通甲板による電磁カタパルト方式が主流である。また、垂直離発着が出来る戦闘機(VSTOL)の開発も進み、米軍の開発したF-35Bの運用に合わせて、日本の海上自衛隊の護衛艦「いずも」と「かが」は、垂直離発着戦闘機対応の全通甲板に改装した。日本も空母運用については、それなりの歴史があるが、戦後長い間空母型護衛艦の運用はして来なかった。

 とは言え、米国海軍がこれ等の条件をクリアして、空母運用システムを確立する為に支払った代償は決して小さくないものであった。米国空母の艦載機がプロペラ機からジェット機に移行したのは、1949年頃である。しかし、移行と共に海軍機の事故率は急速に上がって行った。離発着の際の事故が急増した為である。

 米国以外にも空母の運用方式が未完成のまま、事故が急増した国も少なくない。特に着艦時の事故率が高かった。空母への着艦は、機体に装着してあるフックを後甲板に張った、アレスティングワイアに引っかけて行う。最後の瞬間は定点に飛行機を落下させる感じの着艦である。また、着艦と同時に一旦カットしたエンジンを全開にする。もし、フックがワイアに掛かっていなかった場合に、機体を再び上昇させる為である。

 その様な方法を開発して、パイロットや、艦載機、甲板作業員の練度を高める為には、膨大な時間と犠牲が必要であった。海軍機の事故率が空軍機の事故率を下回る様になったのは、1988年の事であるのだが、それまでに失った海軍機の数は約1万2000機であり、死亡した搭乗員は約8500人に達した。

 米国が世界に冠たる空母機動部隊を保有した背景には、こうした苦しみがあった事もまた事実である。もし仮に日本の自衛隊が米国の様な空母機動部隊を保有する(憲法違反だが…。)願望があるのだとすれば、米国海軍以上の大きな犠牲を払う覚悟が必要である。そうでもなければ、日本の自衛隊が空母を保有する事は出来ないだろう。

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