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かげろうのシーマン  作者: 佐久間五十六


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覚悟

 それから2ヶ月後の事であった。雅人は江川海将補に突然呼ばれた。

 「忙しいところ呼び出して済まない。実は君に伝えなくてはならない事がある。」

 「何でしょう?」

 「辞令が下りた。厚木へ行ってもらいたい。」

 「また、ですか?これで4度目ですが…。」

 「まぁ、そう言うな。転勤は幹部自衛官の宿命でもある。」

 「分かりました。」

 「詳しい事はこの封筒に入ってある。」

 「はい。」

 「戦いが終わって一息ついていたところですまんな。」

 「いえ。江川海将補の責任ではありませんから。大丈夫です。」

 「短い間であったが、世話になった。厚木でも達者でやれよ。」

 「お世話になりました。それでは荷物の整理があるので、これで失礼します。」

 雅人は全速力で荷物をまとめた。自分は三等海佐と言う幹部自衛官だと言う事を時々忘れる事がある。任務に夢中になっている時は特にそうだ。基地に戻るとふと、現実に戻る自分がいる。その現実に戻される感覚が雅人は、大嫌いであった。

 とは言え、どこに配属されようが、自分は自分である。それでも部下の命を預かっている人間と言う自覚が、欠けてしまうのはよろしくない。それで部下を死なせる様な事があるならば、上官失格である。

 雅人は、多くの死線を乗り越えて来た。朝鮮事変では、数多くの敵潜水艦を撃沈している。時に非情になりなければ、この仕事はやっていけない。頭では割り切れている。分かってはいるが、自分には部下と上官がいる。はた目には格好良く映るのかも分からない。

 しかしながら、現場で様々なものと関わらなければならない自衛官と言う職業のハードな部分を嫌と言う程見て来た雅人にしてみれば、本当なら投げ出したくて仕方がない。それでも逃げずにやり通す覚悟を決めていたのは、自分にはそうする事でしか生きていられなかったからである。ここで逃げると言う選択肢を選ぶ事は簡単だろう。

 しかし、逃げた先に一体何がある?雅人はその状況を受け入れられなかった。辛くても逃げる場所は無い。であるならば、とことん向かい合って闘い抜くまでである。それ程の強い精神力が無ければ、幹部自衛官には適していないと言える。

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