表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かげろうのシーマン  作者: 佐久間五十六
6/100

暗黙の了解(サイレント・ルール)

 余談が多くなってしまったが、P-3Cはゴリゴリの戦闘機ではなく、あくまでも防御的な航空機である。作戦遂行上の特徴から見ても、馬鹿みたいなスピードは要らない。その為、航空自衛隊の戦闘機のパイロットみたいに成る必要はない。

 あくまで焦点は対潜水艦・対不審船であり、陸上や航空機は、言わば対象とかけ離れたもの"ゴミ"であると考えてもらえば良い。時間を重ねて訓練すれば、操縦技術は間違い無く向上する。今の雅人に必要なのは、経験であった。

 航空学生だが上官の推薦もあり、赤レンガ(幹部候補生学校)を無難に卒業して三等海尉(ensign)になり、あっという間に一等海尉まで昇進したエリートには、下士官や、兵士と違い充分な経験は無かった。エリートはエリートなりに努力をしなければ存在価値を見出だせぬ訳である。給料や家族の事で苦悩するなら、とうの昔に自衛隊等辞めている。

 金を稼ぐだけなら他を当たった方が身の為である。命と金を天秤にかける方が間違いである。崇高な使命感に燃え、国の為に死ぬ。事が出来る人にしか自衛官は勤まらない。士官である者が、必ずしも士官出身(下士官・兵出身者もいる。)とは限らないが、現状の制度では、将官・佐官クラスの士官は、防衛大学校卒業者が多数を占めているのが、事実である。雅人の様な航空学生出身の司令官もいなくはないが、航空学生は現場のパイロットの士官であるケースが多い。

 せっかくチャンスを貰ったのであるから、それを驕らず自分のやるべき事を精一杯やらなくてはならない。雅人は一日も早く実戦任務につける日を、待ち望んでいた。教育隊を卒業したら彼らは直ぐに部隊に配属される。同じ様にエリート隊員も例外ではなかった。

 大日本帝国海軍には、指揮官先頭で、殿は海軍兵学校出身の士官が務める。と言う暗黙のルールがあった。帝国海軍の後継機関である海上自衛隊には、その様な伝統は今はない。だが近代海軍の先駆けとなった大日本帝国海軍の伝統の多くは、色濃く海上自衛隊に引き継がれている事は間違いない。

 きっと我々一般人が知る事の出来ない暗黙の了解(サイレントルール)と言う物があるのかもしれない。

 そんなある日、雅人は美良海将補に呼び出された。

 「失礼します。」

 「入れ。」

 「桐生雅人一等海尉であります。」

 「おう。待ってたぞ。君に話があるのは、他でもない。我が隊は少数精鋭だ。そこで明日から、君にも夜の哨戒任務に付いて貰いたい。詳しくは横尾三佐に聞くように。」

 「はっ!(敬礼)」

 雅人は心の中でガッツポーズをした。いよいよ待ちに待った実戦である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ