指揮官の決断力と判断力
雅人の哨戒機部隊は、中・北の潜水艦部隊と戦っていた。巨大な原子力空母を落とす為には、恐らくきっと陸地や空からの攻撃では、それらのダメージは命中したとしても、軽微であり無力化されてしまう。となると自ずと潜水艦部隊からの魚雷攻撃しか致命的なダメージを与えられない。と言う解答しか生まれないのは必然である。
米国海軍の原子力空母ともなると魚雷攻撃以外に効果的な攻略法はない。それは、日米韓も分かっていた。しかし米国はともかく、日本や韓国は潜水艦保有数が少ない。そこで活躍するのが、海上自衛隊の哨戒機部隊である。日本は対潜作戦能力に関しては米国に次ぐ規模の部隊を保有している。雅人は、部下にこう下達している。
「気負う必要は無い。いつも通りで良いんだ。多少特別な情勢かもしれないが、何て事はないさ。与えられた任務をきちんとこなす。それで良いんだ。相手がどんな国であろうが、俺達がやって来た事が正しいと証明してやるのは、今をおいて他にはない。」
対潜水艦ミサイルの発射許可も既に防衛大臣から下りている。後は現場の判断に任された。どの潜水艦をやっつければ良いのか、見分けはついていた。雅人には、一つの基準があった。それは、遊軍の艦船がロックオン(照準合わせ)をされたら警報がなる。警報が探知されたならば、即座に攻撃をすると言うものであった。ロックオンされているとなると、事態は急を要する。それが原子力空母ともなると、原子力発電所や核兵器に攻撃を喰らうのと同じ事である。原子力空母がメルトダウンしては、洒落にならない。それは、避けたい。
だとすると、何処で相手国の脅威を排除するのがベストかが重要である。その様な線引きをする為には、この一線を超えたら、と言うボーダーラインを引いておく必要があらかじめある。その一線こそがロックオンなのである。敵がその照準を合わせた瞬間に迷わず攻撃をする。コンマ何秒の世界であるが、その彼我の差が生か死かを分けてしまうのだから、現場指揮官の決断と判断は求められてくるし、最重要である。




