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かげろうのシーマン  作者: 佐久間五十六


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デッドライン

 日本政府は、これに対してうんと言わざるを得ず、何とか自衛隊を参戦出来る様に、戦時特別支援法なる法律を作り、憲法に抵触しない形で正式に参戦した。

 米韓両国が日本に参戦を求めたのには理由がある。北朝鮮の後ろには中国と言う存在があり、中国の政治的、軍事的圧力に対抗する為には、日本及び在日米軍の力が不可欠だと言う事である。

 もう一つは、仮にロシアが参戦してきた場合に有効な手立てが無く、在韓米軍と韓国軍だけでは、苦しいと言う事があげられた。

 要するにこの朝鮮事変は、中国VS米国の代理戦争的な戦争であり、どちらが強いかと言う事を示すために、北朝鮮や韓国を利用しているだけなのである。とは言え、日本はなし崩し的に自衛隊を朝鮮半島に送る法律を可決し、遂には集団的自衛権の行使、つまりは国権の発動たる戦争に参加した。

 いかなる理由があれど、この戦いの後には議論を呼ぶだろう。雅人の心配はそこにあった。部隊を預かる責任は持つ。しかしながら、部下も自分も違憲行為だと気付いていながら、作戦をする事は確信犯的で、後ろ髪を引かれる様な想いがした。とは言え、これは日本政府の決定事項であり、命令が違憲行為だとしても、内閣総理大臣が決めた事である。雅人は部下にこう訓示した。

 「俺達は日本を守る為に訓練して来た。崇高な使命感を持ち日本の未来を守る為に命をかけてきた。そのスタンスは自衛官として譲れない"デッドライン"だろう。その様な気概も無しには、戦争なんてするもんじゃない。明らかに今回の朝鮮出兵は憲法に抵触するものだろう。そう思っていても、命令は命令だ。我等の主君は朝鮮事変を対岸の火事だと傍観する事を許さなかった。我々は与えられた任務に最善を尽くさねばならない。これは、自衛隊創設以来の大事だ。相手も本気だ、心してかかるように。以上だ。」

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