表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かげろうのシーマン  作者: 佐久間五十六
5/100

いびつな戦力のバランス

 階級は副機長であったとしても、実力が伴っていなければ、部下から馬鹿にされ、上司からも信頼されない。そうならない為には、一日も早く己の技術を向上させる以外に方法は無かった。

 雅人は自ら横尾三佐に操縦訓練を志願し、模擬訓練を続けた。無論、航空機や隊員は国家の持ち物であり、事故を起こしてはならない。航空機一機で数十億円、隊員一人あたり数億円。P-3C一機を失うだけで、それだけのロスが出てしまう事を、隊員は心得ておく必要がある。自衛隊機の事故は国民の信頼も失わせる。その為、必然と訓練は厳しいものになっていた。

 不断の努力の甲斐もあり、雅人は二ヶ月程度で誰にも文句を言われない操縦スキルをマスターした。仕事である以上、当たり前だが根性無しには出来ない事である。雅人は那覇基地配属になってから3ヶ月立つ頃には、 全隊員から信頼される副機長になっていた。夏は暑く、冬は暖かい南国の気候にも、ようやく慣れて、オフ(非番)の日の過ごし方もきちんと出来るようになった。

 話は変わるが、P-3C哨戒戦闘機は、前述の通り、"対潜水艦及び不審船"をターゲットに哨戒活動をする戦闘機である。その主兵装もそれに従った任務に対応出来るものになっている。アスロック対潜水艦ミサイル魚雷や、ハープーン対艦ミサイル等、いざとなれば攻撃出来る様になっている。

 そもそも、日本の対潜水艦作戦能力が高いのは、戦後から米国と言う同盟国に振り回された歴史がある。米国の極東地域における戦力の大部分は、韓国と日本に集中配備されており、陸軍が主力の在韓米軍と海軍、空軍、海兵隊が主力の在日米軍、と言うバランスを見れば、日本と韓国に駐留する米軍戦力のばらつき及び戦略が見てとれる。

 韓国に駐留する米軍に陸軍が多いのは、休戦中の北朝鮮軍を意識している事は誰の目から見ても明らかである。一方、日本は島国であり、海に囲まれた不沈空母である。北はロシア、南は中国、西には北朝鮮と言う仮想敵国に囲まれた日本近海は、これ等の国の潜水艦がごったがえしている。

 地政学的且つ歴史的に米軍への依存度が高い沖縄に、結果として戦力の集中が起きてしまい、沖縄と日米両政府の間に軋轢が生じてしまう事になってしまったのである。自国の国益を優先させるのは、文明国としては当然の事であり、人間である以上生存しなければならない。その結果が海上自衛隊の機雷除去能力(掃海能力)や、P-3Cを用いた対潜水艦作戦能力だけが世界トップクラスと言ういびつな戦力のバランスをもたらしたのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ