北朝鮮の暴挙
雅人は部下からの突然の報告に驚きを隠せなかった。北朝鮮が韓国に大規模な兵力を進駐させ、ソウルが火の海になっているという事であった。
雅人は直ぐに正確な情報を収集して、出撃の準備を始めた。いくら北朝鮮が兵力で韓国より上回るとは言え、韓国には米軍もいる。韓国と在韓米軍が反撃に出る事は、もう避けられない状勢であった。
「何とか被害やダメージは最小限に…。」
雅人は腹をくくった。こうなった以上ある程度の犠牲はやむを得ないと考えた。実際朝鮮戦争は休戦状態だった訳であり、いつでも再開出来る事にあったのは、知っている。しかし何故、北朝鮮はその国を滅ぼす事に成り兼ねない暴挙に出たのであろうか?北朝鮮側の真意の程は分からなかったが、それが分かるよりも先にお達しが来た。
日本国とその管理下にある自衛隊は米韓軍を支援する緊急措置を閣議決定して、北朝鮮及び中国に対して宣戦を布告した。これは、自衛隊創設以来初の事態であり、防衛出動が下命された。
これを受け、九州・関西地区の部隊を中心に、人員及び兵力が韓国に投入される事になった。その規模は全自衛隊員の3分の1にあたる約8万人にもなった。雅人の所属する海上自衛隊鹿屋航空部隊にも、出動の命が下った。とは言え、韓国に直接向かう訳ではない。日本と韓国近海の哨戒任務で、制空制海権を取るのが任務となった。
無論、戦時の防衛出動である為に、北朝鮮及び中国機の襲来には備えなければならない。TVや新聞と言ったマスメディアやSNSは、日本が周辺地域事態法により防衛出動する事になった事より、韓国や在韓米軍の被害ばかりを伝えた。大東亜戦争においてプロパガンダや煽り立てを行っていた時よりはマスコミも成長したのであろう。
戦況は日本や西側諸国の支援を得た韓国軍が、北朝鮮軍を首都ソウルから排除した。米韓軍はその勢いで、何とか国境線付近まで北朝鮮軍を押し込める事に成功したものの、在韓米軍及び韓国軍の被害は甚大なもので、死者1万人を越えようとしていた。幸いにも自衛隊員に死者は出無かったが、いつ犠牲者が出てもおかしくない危険な状況である事は確かであった。
そして、米韓両政府は戦況の苦境から、日本などにも後方支援ではなく、前線に参戦して欲しいと打診して来た。これは、日本政府としても憲法違反にあたらないかと慎重論が根強かった。




