こんなところでくたばってたまるかよ
その重要で重大な会議の後に、雅人は木暮三佐に飲みに誘われた。
「約束すっかり忘れてるんだもんな。まぁ、それだけ仕事ちゃんとしてるってことなんだろうけど。」
「すみません。何て言うか、部下に伝えるのに必死だったっていうか…。」
「ところでよ、こんな事して、ロシア軍が黙ってはいないって思うんだよな。」
「防衛省も、そこんところは折り込み済みなんじゃないですかね?ただ、不審船を打ち落とすだけで、こんなに大部隊を送り込まないでしょう。」
「確かにイージス艦に、哨戒機に戦闘機はちょっとやり過ぎかもな。」
「中国海軍相手に戦ったあの時の事を思い出しますね。」
「まぁ、リザルトとしては関係を悪くしただけだったけどな。」
「詳しい事は分かりませんが、少なくとも現場は必死でした。」
「今日の作戦配置も、尖閣戦に参加した人間ばっかりらしいしな。」
「そうなんですか?」
「ああ、俺はともかく山沢さんは、最先任のエースパイロットだ。」
「とは言え、俺も八戸では山沢さんに次ぐ古株だがな。」
「っていうか、オライオンで戦闘機に付いていけ何て無茶ブリにも程がありますよ。」
「はっはっは。そりゃそうだな。時速の桁が違う。」
「何だか、戦争したがってる感じがします。」
「まぁ、米国に喧嘩売る度胸のある国だ。ロシアにも同じ事をしようとしているのだろう。」
「海幕も作戦考えたのは素人かもな。」
「いつも以上のプレーは無理ですよ。」
「確かにな。ロシアを敵に回して得する奴ぁいない。んな事は分かってるが、不審船を黙って見過ごす訳には行かない。不法行為は厳正に対処しないと。」
「それは、本来海上保安庁の仕事なんですけどね…。」
「今更んな事言うなよ。」
「そうですね。まぁ、死ななければOKですよ。」
「だな。死んだら全て終了だ。なんとしても生き残れ。」
「米国のサポートには期待しない方が良いな。本気で魚雷を打ち込む様な状態になるまでは静閑してるだろうからな。」
「油断は禁物ですね。木暮三佐が八戸のエースパイロットでも。」
「バカにすんなよ。俺はエースパイロットじゃない。」
「生き残れたらまた、こんな冗談を言いたいですね。」
「そうだな。ロシアに勝って冗談言いたいな。」
「こんなところでくたばってたまるかよ‼」
「だな。」




