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かげろうのシーマン  作者: 佐久間五十六


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嵐の様に激しく過ぎて

 無論、八戸で遊んでいた訳ではない。PX-1やP-3Cによるスクランブルや出動依頼は、那覇よりも遥かに多かったし、那覇とはとにかく全然違っていた。

 雅人は沖縄での経験から、自分は何でも出来ると言う様な勘違いをしている事に気付いた。たかだか一戦に勝利したくらいで、100戦200戦の経験を持つ先輩隊員と肩を並べた等、思い上がりも甚だしい。八戸での任務では冷静にそう思いながら過ごしていた。

 特に目立って見える様な違いは無かったが、雅人は実戦だけが自衛官の仕事ではないと感じていた。己の未熟さを知り確実な成長を雅人は遂げていた。そんな八戸での任務では、一つだけ那覇と共通している任務があった。

 遭難した漁民、漁師の捜索である。那覇も八戸も漁師町である事は共通していた。ただ、この任務は、本来の海上自衛隊の任務ではない。海上保安庁が率先して行う任務なのだが、海上保安庁が手におえなく自衛隊に災害派遣要請が出されて初めて出動出来る。間違っても率先して出動する事は出来ない。海上保安庁の対処能力を超えた時、海上自衛隊が出動する。これが戦後以来の国防の基本方針である。陸上で、警察の対処能力を超えた時に陸上自衛隊が出動するのと理屈は同じだ。

 海上保安庁で手におえない事案となるとは、よっぽどの事である。海上自衛隊が出動する時にはより厳しい状況になっている事は覚悟せねばならない。国民の生命・財産を安全に確保するのが、任務にあたる自衛隊の第一目標である。事実、東日本大震災においては、約10万人もの人員が、救助、捜索で成果を上げている。

 無論、自衛隊はレスキュー専門の部隊ではない。そうした厳しい声があるのも事実だ。しかし国民の生命・財産を守ると言う観点から見れば、目の前の命一つ救えなくて何が自衛隊だ。と言う気持ちはある。目の前に助けを求める人がいる。並ば我先に手を伸ばすのも、自衛隊の任務の一つである。ただし、勝手な行動は許されない。指揮命令系統をぐちゃぐちゃにしてはならない。これは、組織の人間ならば当たり前の事である。上官の命令は絶対である。

 この原則は守る必要がある。その中でベストパフォーマンスを出来る様にする為に、日々訓練をしている。日頃からやれていない事を実戦でいきなりやれと言うのは、無理難題と言うものである。とかく、雅人にとって八戸での毎日は嵐の様に激しく過ぎて行ったのであった。

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