丸め込み
「失礼します。桐生一尉入ります。」
「入れ。」
「まずは作戦を無事完遂出来た事を称えよう。」
「ありがとうございます。とは言え、課題も沢山見つかりました。」
「それだけでも攻撃をした甲斐はあった訳だな。」
「それにしてもマズイ事になりましたね?国交断絶とは手痛い。」
「仕方無いな。全面戦争になるよりはマシだ。」
「全面戦争になっても負ける気はありませんが。」
「そう言う事じゃないんだよ。まぁ、作戦に参加した隊員に罪はない。」
「政治的な配慮はあった事になりますか?」
「防衛大臣は、詳細な作戦計画を国会に報告していないから、あちらこちらから袋叩きだが、部隊の作戦は成功したんだ。問題無いだろう。」
「自分にとっては命がけの覚悟を持って臨んだ作戦でした。」
「そう言う経験は大事だぞ?実戦力は確実に身に付く。」
「百の訓練より一の実戦と言う訳ですね?」
「今回は言ってみれば序の口だ。日本政府もあわてて火消しに入ったが、国交断絶で落ち着いたんだ。」
「中国海軍を潰すなら今だと思ったんですが。」
「そうなると今回の作戦の10倍の戦力が必要だな。」
「俺らは第一陣で、援軍が来ると思ってました。」
「残念ながらこれは防衛大臣の判断だからな。」
「3日以上戦ってたら、こっちが殺られてましたよ。」
「とにかく今回は実績を作るのが目的だ。」
「え、って事は中国との関係悪化は…。」
「計算済みって事だな。まぁ、シナリオ通りってとこだな。」
「掌で回されてた駒って事ですね?」
「ああ、俺達(制服組)は、駒だ。」
「防衛大臣は、もっと長期戦になる事を想定していたのでしょうか?」
「中国海軍ではなく、今回の作戦は中国海監の掃討作戦だった。海上自衛隊と航空自衛隊をある程度投入すれば、短期戦で終わると考えていたのだろう。戦禍が拡大していれば状況に応じて増派していたのだろうな。」
「それ以上の情報は機長には伝わっていないと言う訳ですね?」
「まぁとにかく、シナリオ通りになってくれて良かったよ。お前等は与えられた命令に忠実であった。」
「訓練より状況は良かったです。」
「実戦経験には違いない。大きな事だ。」
「P-3Cが攻撃にも使える事を知れました。」
「それは前から知ってるよ。」
「次はどこに出張るんでしょうか?」
「分からん。」
「朝鮮やロシアに手を出すのでしょうか?」
「火に油は注がないだろ?心して待ってろ。」
「そうですね。」




