お題
この作品はメリバ・死ネタ表現を含みます。
ご注意ください。
「お題はね〜・・・」
朦朧としながら彼女はそう言い、事切れた。
こんな事になるなら絵なんて何でもいいから描いとけば良かった。
でも、なんだか、絵を描いてしまったら突然彼女が死んでしまうのではないかと、怖くて恐くて描けなかった。
だが描かずとも彼女は死んだ。
死んでしまった。
だいすきな人のだいすきな絵も見れずに。
ずっと逃げてきた僕のせいだ。
これまで、何度も僕のためにお題を出し続けた彼女の額にそっと手を当て、目を閉じる。
どうしてだろう
もう君は息をしていないはずなのにたくさんの声が、思い出が、手のひらを伝って僕の体に流れ込んでくる。
『イルカは?あの目が可愛いよね〜』
『スイカ食べたいな〜水々しいスイカ、描けない?』
『せめて最後に、君とお花見したかったな…』
(僕の中の君はまだ生きてる)
『大丈夫、今度こそ描くよ』
僕は目を開け、彼女が眠っている部屋を後にした。
完成させてみせるよ。
君が最初に言った桜を。必ず。
ご清読いただき、ありがとうございます。
友人から貰ったお題から連想して書きました。
今回のお題は『お題』