拒否権は……ないんですね
人物紹介
う~んう~ん
「由樹が功のいう事を聞くからだ」
声がする。呆れたような声に。
「こういうのは最初に慣れた方がいいでしょう」
悪気を感じていない明るい声。
「させた方も悪いけど、最初に教えておいた方がいい事もあるわよね」
困ったようにため息交じりに告げる幼い子供の声。
(なんか亮太か咲良ぐらいの声だな。という事は幼稚園……? 低学年……?)
そんな声に誘われるように目を覚ますと……。
「あっ、起きた」
三人の顔がアップで見える。
最初にころころ姿を変えていた謎の存在が最初の女子高生の格好で覗き込んでいるのを認識して、次に水郷とよく似た顔立ちの黒髪青い目の男性。最後に幼稚園児の被る帽子を着けている女の子。
「驚かせてごめんね」
謝るのは女子高生の姿をしている”ちくん”と呼ばれた存在。
「悪ふざけが過ぎたな。お仕置きはしておいた」
青年の視線の先には四隅でキノコを生やしている水郷の姿。
「頭痛いとかありませんか?」
心配そうに眼を大きく開いて尋ねるのは幼稚園児。
「通過儀式という事で勘弁してくれ」
先輩が手を挙げて謝っている。
「……………」
情報が無いのでどうなっているのか理解できない。とりあえずソファーで眠っていたのだけは理解できたが。
そんなこっちの困惑に気付いたのか回復したのか水郷がキノコを生やすの止めて。
「気絶という反応をしてくれたのはおもし……珍しかったよ。地君の千差万別の変身は驚くよね~」
などと言い出してくれた。
ってか、この人面白いって言い掛けたな。
「功」
「すみません。海方」
かいほう?と呼ばれた人が叱りつけるように名前を呼ぶと慌てて謝っている。
「先輩………」
何ですかこれ。この人たちは……。
「ああ。悪い。この方々は世界の防衛システムさま方だ」
防衛システム………?
「はいっ?」
首を傾げるのは仕方ないだろう。
「そのままの意味だ。外務省でも知っている者は少ないが、このお三方が地球というかこの世界の守護者だ」
「先輩。漫画や小説の読みすぎですよ」
何言っているんですか。
「それが事実なんだよね」
水郷が口を開く。
「外務省という多くの人は外国と交流、交渉するイメージだけど、その外務省の一部に外務省UW………アンダーワールド相手の外交をする組織もあってね。君をスカウトしたんだ」
アンダーワールド………異世界ですか。
「さっきお前も言っただろう。漫画や小説……あとゲームとか。異世界に召喚されるという話」
「まあ、よくありますよね……でもなんでそれが……」
ある意味御約束だろう。
「古来から神隠しと言われていたのは実は異世界人の誘拐で、小説やらゲームでの定番は実際に起きていた事」
「その対応をするのがここなんだよね」
公にできないから知っている大臣も少なくてね。
「という事で、ここの事務所の所長という肩書を持っている水郷功です。ほとんどお飾りだけど」
「今は身内しかいないからフルネームを言っているけど、他所の世界によっては名前を教えてはいけない御仁もいるから所長と呼んだ方がいい。ちなみに俺は………」
先輩が言いたくないとばかりに目を泳がせている。
「マスオ君でしたよね。後輩にそんな仇名を付けられていると酒の席で暴露したからそれに決まったとか」
にこにこと幼稚園児の攻撃に先輩がダメージを受けている。
「あとは……まあおいおい自己紹介すると思うけど、大事なのはこのお方達だな」
水郷が頭痛いと額に手を抑えて。
「はいは~い。じゃあ、わたしから挨拶するね」
手を挙げて最初に言い出したのは女子高生。
「大地の化身。大地の君と呼ばれて長いから地君と呼ばれています。この器での名前は土屋由樹。あとこっちの」
女子高生だったのが学ランに身を包んだ青年に変化する。
「姿では、土屋由樹と名乗っている。よろしくな」
と気障なポーズが違和感を感じさせない美形。いわゆる女性の憧れる男性の姿をしているのだ。
「今回は性別は女性で生まれているが、地君は状況によって性別、年齢を変化させて動かれる事が多い。一番よくとられる姿が女子高生だと思えばいい」
「能力が完全復活したのが17歳だったからね~」
「記憶が戻った時が。だろう」
「あの時はどうなるかと思ったわね」
明るく教えてくれる土屋さん……と呼べばいいのだろうか。地君と呼んだ方がいいのだろうかと考えていたら冷たい声が二人から出てくる。
「うっ!! ごめんなさい………反省しています」
何があったんだろうか。
触れてはいけない事のようだから触れないけど。
「水郷海」
「海方は私の血縁上では叔父にあたるよ」
海方の自己紹介を遮って水郷が告げる。ああ、道理で同じ苗字だなと思ったわけだ。
(んっ?)
「叔父さん……?」
水郷の? 水郷がではなく?
「海は器を交換する時は必ず水郷家で生まれると決めているからね」
「海はこう見えても人間の年齢では50を超えてますよ」
土屋さんと幼稚園児が交互に説明してくれる。
50………。うん、突っ込むのをよそう。
「……海方。海のお方と呼ばれていたがこんな変な呼び方になった」
「ほんとなんでだろうね~♪」
不思議~と面白がっている土屋さんを水郷君?が睨んでいる。
「最後は私ですね。梶菜々美と言います。空の姫。空姫と言われていまして、現在幼稚園児です」
「最近器を交換したからな」
「私や海みたいに年齢を今のところ変えれないから」
「菜々美ちゃんと呼んでください」
「……………」
冗談だろうか。
「で、以上がこの外務所の事実上トップのお三方だ。今日から君の上司にあたる」
上司……。
「あのこの勤務断るとか拒否権は……」
「ないな」
「ないね♪」
「よろしくお願いします」
三人三様の返事が来て断る暇もなく決まってしまった。
ゆきという名前はお気に入りで気が付いたらよく使っています。別の作品にもいるけど、こっちの由樹の方が先に生まれています。
本編で触れた記憶を失った事件はそのプロトタイプの話です。




