冬告鳥(ふゆつげどり) ―冬のつばさ―
実りの秋の、やわらかく、さわやかな風が、
透明で冷たい、刃のような乾いた風に変わってゆく。
澄みわたる高い蒼空は、遠くどこまでも広がっていたけれど、
空は澄んでいても、どこか、上から覆い被さってくるような感じを受けるものへと変わった。
冬を告げる鳥がやってくる季節だ。
曇天の翼を大きく広げて、冷たく乾いた刃の風を吹かせ、
風雪の混じる冷たき飛礫を散らし、冬の澄んだ冷たい空気を我らへと届ける。
夏の木々や獣、虫や魚は眠りにつき、
冬の眷属の季節がくる。
冬の翼が大きく羽ばたくような、
切り裂く冷たい風に導かれて、
眷属の冬鳥たちは、
はるか北の、冬の世界からここへと訪れてくるのだ。
昼の光と太陽が退き、
夜の闇と月、星が歩を進める。
冬の寒さと宵闇の季節が訪れる。
人たちは、暖かな住処で春の日差しと乙女を待ち、
そして安らかな眠りへと誘われてゆく。
冬の翼は大きく広がって、世界を寛大に覆い尽くし、
世界を静かな眠りへと導く。
世界は白く染まってゆく。
冬告鳥の翼は暁色に彩られる。
冷たき空気の中、
世界はふたたび目を覚ます。
― あとがき一言 ―
朝の風景をみて思いついたものです。
いい朝を迎えてゆきたいものですね。
余談ですが、
自分の脳内では、自キャラの稲荷狐が朗読してます(^ω^)