BAR
店はカウンター席のみでできており、本当にこじんまりとしていた。
ダウンジャケットを脱いだ女性が、メニュー表を提示しながら、話しかけてきた。
「自己紹介まだでしたよね。ピピです。よろしくお願いします。メニューとシステムの説明をさせていただきますね。」
僕はうなずく。
「はじめの1時間飲み放題で3000円、ドリンクはメニュー表の左ページから選べます。1時間経つと以降30分ごとに2000円かかります。私にもしご馳走していただけるなら、1杯1000円になります。メニュー表右のページは別料金になりますのでご注意ください。以上ですが、ご質問は?」
僕は特に質問がなかったので、首を横に振った。
「では、はじめのドリンクは何になさいますか?」
僕はメニュー表に、目をやり眺める。
普通、ビール、カクテル、ウイスキー、などジャンル別に表記されているはずのメニュー表はには、そういった区分が示されていない。
その代わりに、ダンジョン、墳墓、塔、古城、船、砂漠、森林、荒地などの区分けがなされている。
そういう設定なのだろうが、どんな飲み物が出てくるか想像もできない。
「どんな飲み物なんですか?」
僕の問いに、ピピはただ笑顔で答えてくる。
エーイ、ままよ。僕は心の中でつぶやき、
ダンジョンの中の1番上にある、アバ古代地下牢という飲み物を注文した。
出てきたのは、白色の半透明なショートカクテル。
「いただきます」
グラスに唇をつけ、ひと口飲むと、世界が勢いよくまわりはじめる。