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遭遇


 学食で会うなんて珍しいな、と思って振り返った僕が見たのは、想像通りの人物で、今朝も声をかけてきた高梨たかなし あかねその人だった。


「学食とか珍しいじゃん茜、あ、ここ席空くから座ったら」

「うん、ありがと……月島さん、久しぶりだね」

「久しぶりだね、高梨さん。高校になってクラスもずっと違うもんね」


 僕と月島さんとは小学校から一緒で、僕と茜は中学から一緒だった。つまり月島さんと茜も中学から一緒ということで、見た目的にも文科系と体育会系でバッチリ分かれているふたりだけど、それなりに面識はあるみたいだった。


「月島さんって、いつも学食なの?」

「ううん、今日はたまたま。お弁当忘れちゃって、学食初めてだから三上君についてきたんだ」


「あ、そっか、そうだったんだね! 圭ってば何か失礼な事言わなかった?」

「え、ちょ……」


「さっきね~、私はモテない男子みたいって言われたんだよ、ショック~」

「あ、だからそれはですね」


「ひっどいなぁ~。圭サイテー」

「ホント反省してますから」

「月島さん、また圭に何か言われたら私に言ってね、すぐ捕まえに行くから!」


 しゅんとなる僕をいじって遊ぶふたり、ほんと、女の子は集まると怖いものです。



「あはは、ありがとう高梨さん、でも……気にしなくて大丈夫だよ、私も三上君と付き合い長いから、三上君のことはだいたいわかるし」



「え……そ、そう?」

「うん、三上君優しいから、本気で私が嫌な事するとは思わないし」

「女神っすな~。流石小学校から同じ学校に通ってるだけあるわ、分かってますね、うん」


 なんか急に株が上がったから、とりあえず乗っかることにした僕。盛大に相槌をうっておくことにする。


「そ、そっか、でもデリカシーないとこあるし、気を付けてね!」

「茜はなんでそんなに辛辣なの?」

「ふふ、ありがとう。そろそろ行こっか三上君、またね、高梨さん」

「う、うん。またね、月島さん」

「僕にはまたね~ってないの茜さん? またね~」

「はいはい、またね~」



 月島さんと教室に戻る途中、僕は茜についてぶつぶつと文句をたれていた。それを隣で笑いながら適当に聞いてくれる月島さん。


「扱い酷くない? あれでも中学の三年間は、男女の違いあれど、部活でともに切磋琢磨してきた仲なのにだよ」

「デリカシーないって言われてたね~」

「デリカシーの塊なんだよ本当は、気を使って話してるよいつも」

「何か言われたらいつでも言ってだって……よっぽど心配なのかな?」

「失礼だよねぇ。僕は奥手だからナンパなんてしません」


「あ、そういえばさ……」


 たぶん僕の愚痴を聞き飽きたんだと思う。月島さんが話の流れをぶった切るように声を上げて僕を見た。ホント、いつまでもグチグチとすいませんでした。


「学食で会うの珍しいって言ってたけど、高梨さんもいつもは学食にいないの?」

「そうだね~、茜も確か弁当派閥だったけど、今日は月島さんと同じで忘れたりしたんだと思うよ」

「ふ~ん、そうなんだ……」


 何か気になったのかな? 少し考え込んでいるような月島さんだったけど、その後も話が続くような事はなく、話題は変わっていった。




 放課後、教室で帰宅部の友達とだべっていると、珍しい人がやってきた。


「圭! 今日どうせ暇だろ? ちょっと練習見に来てくれよ」そう言って笑いながら教室に入って来たのは、金木かねき じゅんだった。


 眼鏡をかけたスポーツ刈りのマッチョ、それが順。努力家でフレンドリーな順はいい奴だった。一年で部活もまだやっていた頃は、よく一緒に行動する仲だったんだけど、僕が部活を辞めてからは、なんだか扱いが酷いような気がして、少し距離を置いていた。実際、順が僕に会うために、こっちの教室まで来たのは今日が始めてだ。


「今日お前が来ることはみんなにも言ってあるからさ」と、まるで部活もしてないのに忙しいわけない、と決めつけているようで、順の中では僕が部活を見に行くことは決まっているようだ。


 勝手に他の部員にも話をしてしまっているなんて、横暴がすぎるのでなないか……まぁ予定は何もないから問題ないけどね。


「順さぁ、勝手にみんなにも言っちゃうのはどうなの? まぁ予定はないんだけど」

「ほら暇なんだろ! まぁ怒るなよオレ達の仲だ、早く行こうぜ」


 あまり反省していない様子の順にせかされて渋々立ち上がる。「悪い、そのまま帰るから」とだけ友達に伝えて鞄を持つ、本当は部活の見学なんて行きたくないけど、他の部員たちにも話がいってしまっている以上は仕方ない。挨拶くらいは一度しておいた方がいいかと思い、僕は順に肩を組まれてテニスコートに向かった。


「お前が来るって言っても、みんな別に気にしてなかったけどさ、一回くらい挨拶しといた方がいいだろ」

「……そうすっね」

「おいおい暗くなるなよ、居なくなったヤツのことなんてそんなもんだろ、気にすんなよ、な!」


 笑いながら背中をバンバンと叩いてくる順。本人なりに励ましているのか、それとも単に嫌味なのか、順の本心はわからないけど、こういう会話でなんとなく順の事が苦手になっていった。


 というか、肩組まないでほしい、汗臭い……。

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