試し書き
「おっぱい」
この言葉に何を感じるだろうか
「おっぱい」という言葉に何も感じ取らない者もいれば「おっぱい」という言葉に宇宙を感じ取る者
「おっぱい」という言葉に「おっぱい」を感じ取る者もいるだろう
私はというと
「おっぱい」とはまずその言葉自体が限りなく
救いようもないほどに「おっぱい」だと考える
「お」という母音で始まることに私は優しさを覚える
「ぱ」という破裂音はどうしようもないほどに攻撃的で刺激的だ
その前の「っ」の発音がそれを加速させ、「おっぱい」の一筋縄ではいかない厳しさと軽く近づいてはこちらが怪我をするという危うさを感じさせる
極め付けは最後の「い」
母音で始まり母音で終わる
優しい手のひらから落とされた人は
社会の厳しさ、汚さ、怖さ
様々な苦難と壁を乗り越え最後に安心を手に入れる(手に入らない者もいるが)
まさに人の生そのもの
たった四文字でここまで人生を語れる言葉は他にあるか?
子供にも読めるひらがなで
誰でも知ってる言葉で
生まれた時から多くの者の身近にある存在に
人生をこんなにわかりやすく説明した名前がついている
日本語で「おっぱい」という名前をつけた者は果たして何者なのか
人類が発明した「発明」と言えるものなんて「おっぱい」という名前くらいではなかろうか
そんなことを考えながら、今日も私はおっぱいを見る
おっぱいという存在を知るために
「おっぱい」に込められた意味を知るために
「バカ長い行数使って何犯罪予告しとんじゃお前は」
そう言い放つ少女の
美しく吸い込まれそうな瞳に自分の姿が映っていた