1話 死亡
よろしくお願いします。
俺は普通の高校生だった。
その日までは。
運動は普通。勉強も普通。体形も、身長も、その他たいていのことが普通であった。
高校でも普通に勉強して普通に寝て、普通にさぼる。休み時間にはずっとラノベを読み、部活に入らず帰宅部として速攻で帰る。特徴といえば、猫好きであることぐらいだった。
その日までは。
その日もいつものように起き、いつものように食べ、いつものように学校へ向かった。
ただ、いつもと違うことが一つあった。
横断歩道に猫がいたのだった。どうやらけがをしていて動けないようだ。
信号は青になり車は猫に気づかず走ってくる。なるべく悲惨な状況は見たくないので目をそらした、
つもりだった。
体は勝手に動いていた。走って猫と車の間に体を滑り込ませる。そして、猫をつかんだままその手を伸ばしなんとか猫を車の軌道上からそらす。
どうやら猫は助かったみたいだ。結構かわいい猫だったので助かってよかった。
まあ、俺は助からなかったのだけれど。
意識があるのかないのかよくわからない。ずっと水の中で浮かんでは沈み、浮かんでは沈みを繰り返しているような感覚だった。
そこにまるで映画を見ているように泣いた両親の顔が見えてくる。
あーーなるほど。これは俺の葬式か。みんな正装をしている。
お?あれは俺のたった一人の友達の田中じゃないか。ごめん田中。
貸すって約束のラノベ、貸せそうにないわ。めっちゃ感動したのにな。あと、悪霊退散とか言っているが俺は少なくとも悪霊じゃない。まあ普通の幽霊になるとかなら可能性あるけどな。
そうだ。火葬はやめてくれよ。死んでから焼かれるとか地獄でしかない。
っておい、母さん。火葬にしてくださいとか言わないで。まじ父さんも同意しないでよ。
あ、もう終わったな。でもまあ楽しいわけでもなかったけど別につらいこともなかった普通の人生だったな。
だんだん視界が暗くなってくる。
もう思い残すこともないな。
では皆さん。さようならーーーーーーーーーーーーーーーーー。