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もう一つの私の始まり

帰りに、小田急線を使って新宿駅に降り立って、西口の雑踏の中にひっそりとあるコインロッカーの前に立つ。

ためらうことなく、26番のBOXにいき、暗証番号を打ち込む。

中には封筒が一つだけはいっている。

私は、その封筒を、バックの中にしまうと、何事もなかったように、その場を立ち去る。

なんて書くと、何となく颯爽としたイメージになって素敵ですが、

実際は、周りのサラリーマンの歩く速度にとても追い付かず、

ゆっくりゆっくり歩いては、人に飛ばされ、体制を立て直してはまたぶつかっての繰り返しです。

改札でてから、もう一回改札にいくまでの間に、

「邪魔なんだよ」とか「ちんたら歩いてんじゃないよ」とか、そん暴言を何回も浴びました。

私だって頑張ってるんだから、って思うんですけど、

高校生にしか見えない女の子が、バリバリのロリータファッションで新宿西口をちんたら歩いてたら邪魔なんでしょうね。


家の最寄りの駅に降り立っときには、すでに8時をすぎていました。

思ったより、遅くまでいたんだな、なんてことを改めておもいました。

いくら日が長くなったといっても、辺りはすでに暗くなっています。

ただ、夜といえども気温は一向に下がってくれないようで、まだ、30度以上はありそうです。

流石に、慣れているとはいえ、一日中、この格好だと少しきついです。

厚手のタイツの中は、汗でびっしょりで、気持ち悪いですし、

3枚重ね着している上半身のインナーに汗が染み込んでいるのが自分でもわかるほどです。

他にも、もっともっと気持ち悪いこともあるのですが、

ま、慣れてるし、これぐらいはね…………とは思いこみたいのですが、ちょっと弱音をはきたくなることもあります。


瀟洒な住宅街の一角に、エントランスだけでも異様に豪華なマンションが現れます。

いつ見ても思うのですが、この無意味に豪華なエントランスには、どんな意味があるのでしょう。

訪れる人を威圧し、常に高みからステータスを誇示するためだけにあるようにしか思えません。

一体、幾ら出せば買えるのか、月に幾ら出せば住めるのか、社会常識の殆どない私には検討もつきません。

でも、ここが一応、私のすみかです。

それも、多分、このマンションの一番いい部屋が割り当てられています。

専用のエレベーターでしかいく事のできない最上階のワンフロア、180平米以上あります。

殆ど、部屋にいることもないのにな…………。


当然の事ながらお部屋の値段がいくらかも知りません。

私のやっているお仕事関係の人が斡旋してくれただけです。


専用のエレベーターで最上階まで上がると、そこが、私のお部屋です。

玄関を入ると、とりあえずだだっ広い空間が広がります。

大抵のスタジオよりも広い空間が目の前にあるだけです。

その端っこにベッドと小さな机があります。

いちおう、立派なキッチンはありますが、使用された形跡は殆どありません。


玄関で、かなりの厚底のロングブーツを脱ぎ捨てると、

そのまま、部屋の中央のピンクがか可愛いラグにゴロンと横になります。

恥ずかしいけど、足が結構くさいです。

横になってる私の鼻までその匂いが漂ってきます。

そりゃ、そうですよね、このクソ暑い中、一日中、ロングブーツはいてたら………。

これじゃみかちゃんやゆりさんたちの前で、ブーツ脱げないな。

ゴロゴロしながら、そんなことを考えつつ、次の行動をどうしようか考えます。


お洋服も確かに早く脱ぎたい気はしますが、

先ほどの封筒も確認しないといけません。

どんなことがあっても、仕事が第一優先なのは、どこの世界でも同じでしょう。

仕事の内容は、違うかもしれませんが………。


無地の茶封筒をとりあえず、手でゆっくり開けます。

中には、2枚の紙切れが入っていました。

いつもより、少ないな………。

大抵は5枚程度は入っているのに、少ない時はロクなことがないんです。


ゴロゴロ横になりながらも、真剣な表情で紙に書かれている内容に目を走らせます。

そこには、ビルらしき建物のあるフロアの平面図が書かれてありました。

平面図には、いつもにように、SとTという記号と網掛けされている部分があります。

ビルの平面図のしたには、そこのビルがある場所の詳細な地図もあります。

1枚目には、だだ、それだけが記載されています。

それは、いつもどおりです。

2枚目の一番上には、《株式会社 ホーリーサービス》とあり、

その会社の概要、仕事内容、そして、現在抱えている問題について簡単にまとめられています。


簡単に一言でまとめると、ホーリーサービスという会社は、

表向きは、格安の旅行会社らしいのだけれど、

その顧客のうち、ある条件に該当した人々を、

海外の反政府組織に斡旋したり、麻薬等の運び屋に本人の知らないところで、

暴力団等に斡旋したりしているようである。

簡単にいうと、人身売買みたいなことをして、

巨額の富を稼いでいるのでしょう。

しかし、あくまでも被害者は顧客の本の一握りであり、

問題が起きても、個人の問題や斡旋先の問題として処理され、

会社の関わりが、明らかになることはないようである。


そのような、恐ろしいことが書かれてあるしたに唐突に

「人身売買リスト」

とだけ書かれてある。


さらに紙の一番したには、本当に簡単なビルのセキュリティ状況が書かれてあります。

確かに、そこに目を通すと、異常なまでのセキュリティを施しているようです。

セコムとか日本警備保障なんていうどこの会社でも委託しているようなレベルではなく、

22階の入り口には、赤外線センサを施し、常に5人以上の警備員のような用心棒のような人が、

交代で、見回りをしているようです。

で、その下に0:00-0:05 停電とだけ書かれてあります。


それだけで、その封筒の中の紙は終わりです。

ようは、新しいお仕事です。

私は、お気に入りのスカートのヒダがシワくちゃになることも、

白いビーズがかわいいアクセントになっているピンクのワンピースがシワになる事も気にせず、

とりあえず、真剣に繰り返し何度も何度もその2枚の紙と睨めっこしました。


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