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境界(表と裏の狭間)

みかちゃんは急いで出て行きました。

「みかちゃん、大丈夫なのかな……」

「まあね、私もじゃっかん、心配はしてるんだけどね、今は、もう、夢中だから。あの子さ、一つのことしか見えないタイプだからね。今は、大学よりも就職よりもその人のことのみって感じだからね。ま、それでも、ゆきちゃんよりは大学真面目にきているけど」

「もう、ゆきだって、頑張って大学行ってるもん」

ちょっと、ほほを膨らませて抗議して見ます。でも、ゆりさんには、まったく効き目がありませんが。

いつものようにゆりさんは、私の頭をよしよししながら、微笑んでいます。

「はいはい、ゆきちゃんは、頑張って大学きてますね。普通の人の半分くらいだけどね。」

ーだから、それでも、一杯一杯なのにな…………

「ゆりさん、本当に頑張ってるんですよ、わたしだって。」

「うんうん、いいんだよ、ゆきちゃんは、可愛いいんだから。」

ちらっと、時計に目をやったゆりさんは、少しだけ真面目な表情で、私の方を向き直り、

「ごめん、私もそろそろいくね、ちょこっと野暮用あるんだ。」

「あ、だったら、ゆきも帰る。駅まで一緒に行こうよ。」

「ごめんね、かなり急がないといけないんだ。ゆきちゃんに合わせてられないの、本当は私も、ゆきちゃんと、いっしょに帰りたいんだけど」

そういいながら、自分の荷物をまとめると、恐ろしく早い動きで席を立って、それからちらっと私の方をふりかえって、ヴィトンの財布から、福沢諭吉を一枚出して、テーブルにおいた。

「これで、会計しておいて、みかちゃんの分も、お釣りはいつでもいいから」

最後の方は、私の顔も見ずに出口のほうへと、歩みを進めていた。

そりゃ、確かに私は普段は、ものすごくのろいですよ…………駅までみかちゃんやゆりさんが10分でいけるところを、私は、20分以上かかります。はい。それに、だいたい、何故か1回はつまずくかよろけます。何にもないところで派手に転ぶことだって日常茶飯事です。

だからって、だからって、置いて行くことないのにな。

一人で帰るのは寂しいよ。

何するとはなしに、目の前にぽつねんと置き去りにされている福沢諭吉に目をやった。

女子大生が、無造作に、福沢諭吉をテーブルなどにおいていくものなのだろうか。

なんとなく偽物女子大生を自覚している私には判断ができない。

でも、きっとこれが、みかちゃんやゆりさんの日常なんだろうな。

二人とも結構なお嬢様だものね………………



そんなことをぼーっと考えていると、バックの中で振動音がした。

慌てて、バックを取ろうとして、バック後と落としてしまった。

「もう………」

誰とはなしになしに呟きながら、振動原の携帯電話をとって確認する。

ゆりさんからだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

さっきはごめんね。

なんとか、でんしゃにまにあったよ。

やっぱりゆきちゃんと帰りたかったよ。

あんまり大学でも会えないしね。



夏、絶対、海行こうね。

ゆきちゃんのかわいい、水着姿もみて見たいよ。

エヘヘ、こんなこと言ってると、またみかに怒られそうだね。



じゃ、また明日、学校で。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



海か、そりゃ、行きたいよ、私だって。

気分が沈んでくるな………………。



ふと、床に散らばっているバックの中身から、

もう一つの携帯に目がいく。

あたりを少しだけ見てから、その携帯をとりあげ、

メールの確認をする。

受信箱に1通だけのメールが残っている。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー

2623

ーーーーーーーーーーーーーーーーー



その数字だけを確認すると、無表情のままメールを削除する。


「よし、笑顔笑顔」

そんあことをつぶやきながら、床に落ちている色々なものを、

無造作に、バックの中に放り込んでいく。

「私も帰ろっと」

そういいながら、バックを持って立ち上がろうとした瞬間、



ガッチャーーーン



またまた床とキスをしてしまった。

そんな音も聞こえないかのように、マスターは、視線を向けることなく、

黙々とグラスを磨いている。

「痛いよ、うーーん、本当に痛いんだから」

私の口から誰にというわけではない抗議の言葉が出てくる。

とりあえず、レジまで頑張って行こう、

そんな、ありさんよりも小ちゃな目標をたてて、何とか、立ち上がってみます。



うーーん、やっぱりこれもいつもの日常ですね。


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