転生者
剣と魔法の王国ハイドフィールド。
初代国王となるハイドと、大預言者ガラテアら賢臣によって建てられ、その後600年続く大国。
王家の堅実な治世の元、貴族と庶民の関係も良好で、活気に満ち溢れた豊かな国だ。
強力な魔物は多いが、才能豊かな騎士団と魔導士団によって護られ、人々は日々の暮らしを安心して送ることができる。
まさに――まさに前世の物語でよく読んだ、典型的なファンタジーの世界なんだけどね……。
王国の中枢に近付き、この国のことを学んできて、私は一つ確信したことがある。
このファンタジーの王国――超・体育会系!!!
なんで……? なんでファンタジーの世界に転生してまで体育会系なの!?
理由は分かってる。魔物の強い情勢のせいで、この国はそういう形態に進化してしまった。
西は海、北は山、東は草原、南は砂漠。そして北東にはドラゴンの封印地とされる峡谷。
その全てで魔物が発生し、国土は魔物に囲まれていると言ってもいい現状。
それでも国民の安全が守られているのは、偏に強力な諸侯がそれぞれ、自身の領地を完璧に守って、魔物の侵入を許さないから。
魔物の特色も、それぞれの土地柄とかがあって、対応や戦い方もそれぞれ違ってくる。
だから王国軍はサポートに回して、土地土地の領主に家業のように魔物対策の役割を受け継がせていくというのは、合理的なシステムではあるんだろうなあ。
代々磨かれて特化された技術と積み重ねられた知識、英才教育により、自領の魔物退治が一番うまいのが領主一族というのは、ある意味当然かもしれない。
その結果国民に培われた価値観。
強さこそ正義!! 強い奴ほど尊い!! 我らが領主こそ最強!!
――ああ……思い出すのは体育大時代。
あそこには明確なヒエラルキーがあった。4年は王、3年は貴族、2年が平民で、1年は奴隷だ。
それと同じことが、ここにはある。
国王という絶対監督の元、補欠の男爵は許されても、ポイントゲッター以外の公爵はあり得ない!!
王国を守る鉄壁の守護集団、五大公爵家。強力なスタープレーヤーは、時には監督の発言権すら凌駕する! なぜなら、国民、領民の命と生活が懸かっているから!!
これ、国で一番強いの、五人の公爵なんだよ、冗談でなくて。
各公爵家の中の最強が、それぞれ現当主。
主力が死傷したら、即、跡継ぎに爵位継承。
公爵家から主力選手が出せない時は、控えの侯爵家と立場を入れ替えることすらある。
だから代々の公爵家は、意地とプライドをかけて、最強のスタープレイヤーを排出し続けている。
……懐かしいノリだわ~。私も次世代の台頭には、いつも目を光らせてたし。
だから、公爵家ほど、体育会系色は強くなるらしい。
爆裂公爵とか撃墜公爵とか首狩り公爵とか、およそ公爵に付けられる冠には不釣り合いな異名のオンパレード。あ、爆裂公爵って、ちょっとかっこいいかも。
公爵家の中には代々、戦闘機の撃墜マークのごとく、魔物撃破数を表す星でタトゥーを刻んで、背中にモザイクアートを作成する剛の者もいる。
ちなみにそこの跡継ぎとは、後に酒飲み友達となる。――類トモとか言うな。
「う~~~ん」
私は伸びをしてから開いていた本を閉じ、次の本と入れ替えた。
今いるのは王城内の図書館。最近一番お気に入りの場所で、暇な時間は大体入り浸ってる。
目下、歴史書に大ハマリしてるもんで。勉強の一環で読んでたものが、今では完全に趣味になってる。
だって、隣国との魔法戦争とか、伝説の騎士団の魔物掃討戦とか、王とメイドの禁断の恋とか、どう考えてもラノベだろっ! って、内容が、史実としてあるんだよ?
中身は盛ってるだろうけど、全部実際にあったってことだよ?
萌えるでしょ~~~!?
戦国時代とか幕末の新選組とかにハマる歴女の気持ちを、転生してから初めて理解したわー。
もうページをめくる手が止められないのよ~~。
どうせ現実は、王城が生涯のねぐらで、派手な冒険とかもないだろうし、恋愛にも無縁。せめて物語にくらいどっぷり浸りたいのだよ!
そんなわけで、次々と歴史書を読み込んでいく。このペースなら、2~3年で歴史系は読破できそう。ほんと、ハマるとのめり込む性質だから。
そして、読んでて気が付いたことは、他にもあるんだよね。
この国、意外と転生者が多い。
前世の記憶を持っていると自称していたという偉人を、すでに30人以上は本に見つけた。
特に隠すこともなくて、普通に公表してる。まあ、他人には確かめようもないことだから、信じるか信じないかは人それぞれ。でも転生自体は、一般的にはよく知られている現象らしい。
300年前の大預言者、デメトリアも一説にはそうだったとかあるし、偉人ほど輩出率が高い印象。
実際私も大預言者ってことだし。
前世の経験値で出世しやすいとか、前世の記憶を持つほど強力な魂だから偉業を成す率が高いとかなのかな。
それとも記録されないだけで、一般人にも裾野を広げれば、もっとたくさんいるのかも。
そうすると、私の他にも今、いるんだろうか?
ヒジョ~に、興味深い。
そこでふと顔を上げると、歩いてきたアイザックと目が合った。
あいつも読書家だから、ここでよく遭遇するんだよね。あ、イヤそうな顔してる。
よし、またからかってやろう!
私は本を置いて、席を立った。