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特攻

 ベルタのフォローもできて、予定していた目的の一つは果たせた。

 あとは最後にもう一つ、最大の目標が残っている。かねてから考えていた超重要計画に手を付ける時が、ついに来た!


 今日の私には、大きな野望があるのだ。人の世話ばかり焼いてる場合じゃない。自分のことも頑張らないと!

 ユーカの誕生パーティーに便乗して悪いけど、せっかくの滅多にない機会。ありがたく有効活用させてもらおうじゃないか。


平穏な日常を投げ捨てる覚悟はあるけど、まずはそうならないですむよう、事前に最大限の努力はしておくべきだからね。


 というわけで、計画とはズバリ、キアラン誘惑作戦だ!!!

 子供時代と違って、学園以外で会うことなんてもうほとんどない。こういうチャンスがあったら、もっとこうガーっと、なんか、とにかくどうにかしたいじゃないか!! 

 世界の平和も大事だけど、私の人生も同じくらい大事なのだよ!!


 この国ではすでに成人だし、同級生には既婚者だってちらほらといるし、機は熟したというか、大人の階段登っちゃっても全然アリだと思うわけですよ。そのためのステージを、少しずつでも着実に上げていかねば!

 極秘交際という縛りはあっても、それはそれ。何もずっと品行方正である必要はないでしょ。

 ヤらずに後悔よりはヤって後悔の精神だ!! もちろん後悔するつもりはないけども!


 そういえば大昔、漫画で読んだなあ。彼がアイドルだとか、家同士がロミオとジュリエットみたいな敵対関係とか、何故か男装して入学してるとかで、秘密の恋人ってやつ。他人事ならときめきシチュエーションではあるけども、現実だと全然面白くないんだよっ!! 相手がVIP過ぎて、こっそり会うだけでも超難関ミッションだっての!


 エリアスとアイザックも、預言者に関する法を変えるために頑張ってくれてるみたいだけど、人に任せっきりで待ってるだけなんて性に合わない。自分でできることにはどんどんチャレンジだ! 何十年生きてもせっかちは変わらないね。


 ガラテアの守護石の存在がやっぱり大きい。キアランから借り出すことさえできれば、転移魔術でいつでも密会可能になるのだ。

 こんな無敵のアリバイ工作そうそうないよ。犯罪やり放題! いや、犯罪じゃないんだけど、でもやっぱりこの国的には明らかに法に抵触してたりするからタチが悪い。

 だからこその完全無欠のアリバイ工作。絶対不可侵の預言者に手を出したら極刑、なんて悪法も、()()()なら適用外だ。


 ザカライアの時に一度経験してるけど、魔力測定で魔力ゼロだとバレたら、もうほとんど逃れようがない。そのままみっちり能力を検証された後、最終的に「預言者認定の儀式」が待っている。預言者たちが、自分のお仲間かどうか、予言の儀式で確認するわけだ。


 この候補者が、国に厳密に定められた預言者となる能力、条件を完璧に満たした存在か否か?


 恐ろしいことに、確実に当たっちゃうんだよ、コレ。それが預言者なんだから。

 この儀式を経て、初めて預言者として国家に正式認定される。


 逆に言えば、儀式で明確にされるまでの間なら、どんなに可能性が高くとも、不用意に認めるような発言は許されない。


 なにしろ未来の情報というある意味究極の動く戦略兵器。安保やら経済、行政、国家運営果てには自然災害や大事故、その年の収穫量、天候まで、あらゆる方面を見通せる規格外の存在だから、軽率な憶測は口にできないのだ。確実に混乱や犯罪を引き起こす。法を犯す覚悟のある者なら、何を置いても手に入れようとする。

 仮に、人知れず発見した預言者を、個人的に囲い込んだ場合、当然極刑。


 それを考えると、身内とはいえジュリアス叔父様でも、実は結構グレーゾーン……いや、すでに踏み越えちゃってるかもしれない。

 昔からその点については家族の誰も決して触れないし、トラブルの相談すらされたこともない。使用人にすら徹底されてる。ひたすら気が付いていないフリ。みんな危ない橋を渡って、私の自由を守ってくれているのだ。


 もちろん預言者もまた、大預言者ほどの予知の精度はなくても、この国では同様に計り知れない価値ある存在。というか、大預言者がレア過ぎて、ほとんど前例は預言者にまつわるものなのだ。


 というわけで私としては、儀式を逆に利用して、トリスタンのパターンを狙って獲りにいきたい。

 仮に預言者の疑いをかけられても、すでに資格は失効、手遅れ状態というやつだ。いざ認定の儀式の段になっても、規定通りの条件が満たされていないと、弾かれてしまえばいいのだ。


 そこで、前にアイザックから受けたアドバイス。「キアラン陥落作戦」を、満を持して実行に移してしまおうというわけだ!!

 預言者認定前の過去の出来事では、いくら厳格な法でも裁けない。

 いつバレるかとヒヤヒヤする綱渡り状態から解放されるなら、多少の体裁の悪さなんて気にしない!


 イメージをガラリと変えた今日の服装も、その作戦の一環なのだ。なんだかんだでキアランは正統派がお好みなのは承知している。

 いつも斬新なファッションの私が、清楚系! そのギャップで迫ってやるのだ!

 更に服どころか、なんなら下着だって頑張っちゃってるのだ! 出番のでの字もないってのに、いつでも勝負可能だ! 私的にはこのあとすぐのお持ち帰りでも全然オッケーなんだけど、さすがに強敵キアランでそれはないだろう。とにかく千里の道も一歩から! まずは足技でコツコツと崩していって、一発大逆転を狙ってやる!


 野望を胸に悠然と歩く、普段とは趣の違う私に、あちこちから視線が注がれている。有象無象はどうでもいい。勝負の相手はキアランただ一人! 


 私の戦意に景気でも付けてくれるかのように、視界の端でベルタが派手にすっ転んでいた。道連れにテーブルクロスをひっ掴んで盛大にひっくり返して。

 おお、早速か! さすが、それでこそベルタだ! 私も頑張るぞ!!


 いっそベルタみたいに奇跡的なラッキースケベスキルでもあればいいのにと思わないでもないなあ。私に限ってはあり得ないのが残念なところだ。わざと転んだフリなんかしたって即座にキアランに看破されて、激しくイタイ思いをすること請け合い。

 まさかベルタのドジをうらやむ日が来ようとは!

 でもないものねだりしてもしょうがない。私は私のやり方で正面から突撃だ! 偶然(ラッキー)がないなら自力でゴー!!


 戦いで重要なのは、自分の武器と弱点を把握すること。どうせ私にはこっち方面での駆け引きなんかできないけど、経験は乏しくとも大きな武器がある。


 それは、生まれつきの素材プラス徹底した管理で、前の二周とは比較にもならないわがままボディ!

 私とほぼ同サイズのグレイスを客観的に見た限り、私基準で完璧なスタイルに仕上がってると言っていい。

 天に選ばれし者のみに許される伝説の必殺技『アテテンノヨ』が余裕で行使可能なのだ!! っていうか、ぎゅっとしがみつきさえすれば、勝手に自動発動だ! 持てる武器は総動員がこの国流だからな!! 先手必勝!! 柔らかい圧力をガンガン炸裂させてやらあ!! ところで私の特攻はキアランに通用するんだろうか!?


 いやいや、戦う前から失敗のイメージなんて持たない! 勘違いでなければ、この前の医務室では、なかなか好感触だった気がする。描くのは成功する未来図だけでよし!

 それにしてもテンション上げ過ぎ!? 戦いの前なら、これくらいでちょうどいいよね!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ちょっと気になる〜。 「ザカライアの時に一度経験してるけど、魔力測定で魔力ゼロだとバレたら、もうほとんど逃れようがない」の部分です。 ザカライアは、測定の結果、魔力0で当初は王都へ連れ…
[一言] グラディスがめっちゃテンション高くて笑える。 戦い前は意気軒昂でなくてはね! でも、グラディスvs.キアラン、てグラディスの勝ち筋が見えない気がして余計に笑ってしまう。 何だかんだ言って根…
[一言] いきなりテンション上がりすぎてて笑いました
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