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人生の方針

 屋敷に帰り着いたのは、まだ日も高いうち。そもそも同じ王都内の邸宅だから、あまり距離もなかった。


 グラディスとしての予定はあったはずなんだけど、今はそれどころじゃない。

 最低限の身支度だけ変えて、全部キャンセル。


 気分が悪いからと、一人で部屋に閉じ籠る。ザラが心配そうにしてくれてたけど、夕食も断って休むふり。正直まだ混乱もしてるし、これで一晩ゆっくり考えられる。


 今後について、しっかり考えないといけない。

 私がグラディス・ラングレーとして生きていくために何よりも重要なこと。 


 それは、前世に捉われないこと。これは私の、一から始まった新しい人生。

 一番大事なのは、いつだって今とこれから。その意味では2周目の時だって、1周目を利用はしても、引き摺らずに自由に生きた。

 すでに終わった人生に絡め捕られて、今を自分らしく全力で生きられないなら、生まれ変わった意味もない。私は私らしく生きたいの。

 転生の事実を隠すことと、自重しすぎて今の人生を楽しまないことはイコールじゃない。


 私はグラディスの人生を満喫する。


 だから、まずはグラディス・ラングレーとして、よりよく生きていく環境を整えることにしよう。


 幸か不幸か、齢10歳にして私、すでに変わり者認定は当然のように受けている。なんか腑に落ちないけど。

 多少変わったことをしたところで、今更怪しまれたりはしないだろう。お嬢様がまた妙なことを始めたと思われるくらいで。

 あれ? 前世もそうだった気がする。――なんで?


 とにかく自由奔放な令嬢像は続行だ! 私にそれ以外はできないし。


 記憶が10歳まで戻らなかったのは、むしろ良かったよね。中途半端な知識なしで、純粋に令嬢教育受けてこれたから、身のこなしや振舞い方は問題ないな。貴族との付き合い方は2周目でよく分かってるし。

 こう言っちゃなんだけど、()()()()がすでにいなかったのは、小さいグラディス()にとっては幸いだったね。

 あれ絶対悪影響の塊だからね。


 そして父親のトリスタン。アレに怪しまれる心配は、まずない。


 そもそもあいつ、ほとんどラングレー領で魔物狩りばっかりしてて、社交シーズンとか、ごく限られた時期しか、最低限王都に滞在しない。領主の最大の義務は魔物を狩って領民の生活を守ることだから、我が国においては大変模範的な公爵とはいえる。


 私は基本的に王都の別邸暮らしで、滅多に会わないんだよね。会ったら会ったで、べろべろに可愛がられるけど、あいつ親としての自覚は絶対ない。育てたり躾けたり、全然しないもんな。

 いわゆる優しい虐待ってやつ。


 あのまま育ってたら、グラディス、平気で轢き逃げする人間に育ってたぞ。

 そんで、山ほどフラれたり殺されたりしてたからな。手遅れになる前でよかったよ、ホント。


 ってゆーか、私を振ってた水色髪の青年は、さっきのアイザックの孫(仮)で確定かな?

 今日フラグが立ったわけか。


 おおっ、トータルで苦節80と数年、なんか恋愛戦場(バトルフィールド)にやっと立てた気がする!

 今の私は参戦可能なのだ!! うはははは!!

 人生経験と精神年齢は、私に限っては比例しないぞ!!

 そもそも恋愛経験値自体0だからね!! 喪女をこじらせすぎて、何をやったらいいのかサッパリだ!!


 まあ、だから、バレそうという意味で危険なのは、ジュリアス叔父様の方だよね。お父様の下の弟で、物心つく前から王都の屋敷で一緒に暮らしている。私の実質的な保護者。


 銀の髪に、金の強いアンバーの瞳。本業は農業の研究者だけど、さすがに公爵家の男だけあって、学者然とした雰囲気よりは、細身の騎士みたいな趣が強い。実際、学園入学前までは年の半分は領地住まいで、実戦で鍛えてるし。


 あれ? そういや私を振るメンツには、銀髪青年もいたっけ? でも叔父様だし、関係ないか。外見はかなり好みなんだけどねえ。


 叔父様はまだ二十歳そこそこなのに、魔物ばっかり狩ってる兄の代わりに領地運営の責任も果たしてるしっかり者なんだよね~。学園卒業後は領地と王都を行ったり来たりで、すごく忙しそう。


 バルフォア学園でも、就学前に週一の特別教室で何度か見かけた。外見は兄とそっくりなのに、中身は温厚で思慮深く、とても頭のいい子だった。


 あの頃のままに成長して、まさに絵本から抜け出てきた王子様のような理知的で穏やかな風貌。どっちかというとお兄様と呼んだ方が相応しいんだけど、私はあえて、頑なに叔父様呼びを貫いてきた。

 記憶が戻る前は「素敵なお兄様ならその辺にいくらでもいるけど、こんな素敵な叔父様、そうそういないわ!」って理由。

 記憶が戻った今なら、余計お兄様とは呼べない。脳内に筋肉ゴリラどもが再生されちゃうのよ。この世にあんなムキムキの『お兄様』いるわけねえ。


 とにかく叔父様に怪しまれないように立ち回ることが、ひとまずの課題だよね。

 ザカライアが死んだのは、叔父様の就学前。ルーファスみたいに個人的な繋がりも特に持たなかったし、そこはなんとかなるかな。

 あとは、大預言者の能力を見せないようにだけ気を付けよう。


 明日の朝食時からが、私の新しいスタートになるわけね。


 ふふふ。それはそれとして、子供として美青年に甘えられる環境ってのは、ちょっとワクワクするね!!


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