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成績発表と誕生日

 翌日の新聞には、バルフォア学園恒例、新入生歓迎バトルロイヤルの結果が詳細に報じられていた。


 個人結果。

 1位・ヴァイオラ・オルホフ。

 2位・ソニア・エインズワース。

 3位・ダニエル・ハンター

 4位・ティルダ・イングラム。

 5位・フジー・ユーカ。

 6位・ノア・クレイトン。

 7位・キアラン・グレンヴィル、マクシミリアン・ラングレー。

 9位・アーネスト・イングラム。

 10位・グラディス・ラングレー。


 優勝候補をことごとく沈めて、半分をルーキーが占める大波乱。しかも3チーム中、2人が1年生リーダー。その上10人中3人が、非戦闘員。


 撃破数にいたっては、ヴァイオラとティルダがぶっちぎりの1位2位。しかもティルダなんて、ガイとアーネストとという、過去の優勝者を堕とす大金星。補佐がメインのソニアとダニエルですら、開きはあるものの3位4位と、1パーティーから上位独占!


 ポイント数では、予想外なことに、ノアに1位をかっさらわれていた。

 1から99までのナンバーカードのうち、ノアはなんと90番台をコンプリートしてやがった! あいつの情報力、ホントにどうなってんだ!?

 100、200、300のポイント集めたのに、私は2位止まり。個人成績ここに賭けてたのに、ちくしょ~~~~!!

 ユーカが3位で、ポイント獲得数は、非戦闘員が上位独占。


 総合では、グラディスチームが1位、キアランチームが2位と、やっぱりルーキーがワンツーフィニッシュ。


 前例が、片っ端からないない尽くしの結果となった。その原因として、私、グラディス・ラングレーが全てを引っ掻き回したように、新聞の総評で結論付けられていた。


 各新聞社がこぞって私の戦略を分析している。なんだか総理大臣の一日の動向のように、私の行動と、それに伴う結果が、時系列でいちいち報じられてる。

 しかもなんかタチが悪いと言わんばかりの論評。ルール違反は一切していないのに。そもそも私戦闘職じゃないし。


 やり方ひとつで、ここまで従来の流れをひっくり返せると見せつけられたことが、世間には衝撃だったらしい。

 多分来年は、システムへの介入は禁止されるだろうな。まあ、私も1回きりの使い捨ての策のつもりだったから構わないけど。ダニエルだって卒業しちゃうし、メンバーが大きく入れ替わることだって考えられる。

 まあ、来年のことは来年考えよう。


 なにしろ今日は別のお楽しみがある。


 激戦の翌日、今日は学園が始まってから、最初の休日。

 私の16歳の誕生日をお祝いするディナーの予定がある。


 この世界の誕生日パーティーは、基本家族だけのプライベートイベント。

 魔物が多い世界で、前線で戦う命の危険が多い貴族ほど、無事年を重ねられたことを、身内だけで祝う習慣がある。

 私は毎年叔父様と2人でお祝いしてたけど、去年からはマックスも参加。3人で、王都一の王侯貴族御用達のレストランの予約を入れている。


 私の誕生日は3日後だけど、忙しい叔父様の都合が何とか取れたのは休日の今夜。それでも自宅の書斎で、片付けなければならない仕事が山積みらしい。ディナーまでには終わらせると頑張ってくれている。


 マックスはマックスで忙しい。休日くらいしか、ガッツリ騎士修行できる時間が取れないから、朝から王城まで出かけている。領地から離れて実戦に臨む機会の減る有力な騎士は、年齢問わず、王立騎士団の訓練に参加できるのだ。

 多分昨日戦ったメンツもいっぱいいるし、ルーファスも騎士団員として所属してる。今まで領地にこもってた騎士は、こうして王都でいろいろと人脈を築いていく。


 私も学校が始まったせいで滞りがちな仕事を、休日に一気に進めないといけない。大分手広くなってきたし、経営の実務は元からほとんど人に任せてるけど、デザインだけは譲れない。私の私による私のためのブランド。そうでなきゃ、わざわざ趣味で会社を作った意味がない。

 鈍らないように、ダンスとか空手の(かた)とか、アクセサリー作りの時間も必ず毎日作ってるし、エクササイズの時間も欠かせない。


 ほんとに入学した途端、殺人的な忙しさだよ、もう。明日からは本格的な授業に入るし、慣れるまでは少し時間がかかるかな。でも睡眠時間は極力減らさないぞ! 美と体力が減ったら本末転倒だ。


 こうして、ディナーを心置きなく楽しむため、家族3人はそれぞれに忙しい日中を送った。


 夕方近くになり、仕事が終わった叔父様が、私にお祝いのプレゼントをくれた。


「誕生日プレゼントはまた当日にね。これは、パーティーの優勝と個人入賞祝いってことにしておこうかな」


 私にプレゼントをたくさん贈りたい叔父様は、ことあるごとに小分けにしてくる。


「ドレス!?」


 思わず驚きの声を上げる。私に服をプレゼントする人なんて、今は誰もいない。しかもアクセサリーも靴も一式。


「君にドレスを送るのは、子供の時以来だね。似合いそうだと思ったら、どうしても贈りたくなってね」


 ふんわりと笑う叔父様に、なんだか胸が熱くなる。着るものは当然のように自分で用意するものだと思ってたけど、大切な人からプレゼントされるというのも、これはこれで格別だぞ! 新しい発見だ!

 私がロレインやクリスに可愛い服を着せたいのと同じ気持ちかと思うと、なんだか照れる。


「ありがとう、叔父様! 早速今日着ていきます!」


 すぐに部屋に戻り、ザラやメイドさんたちに手伝ってもらって、お出かけの準備をする。

 女の支度は時間がかかるのよ! ――とか言ってみたかったんだ。前世はどっちとも、起きて10分で出かけられたからね。これぞ貴族の令嬢って感じだ。


 部屋にこもってる間に、マックスも帰ってきたらしい。あっちはあっちで慌ただしく着替えてるだろう。


 ヘアメイクも終え、アクセサリーもつけて、姿見でチェックする。


 シルバーグレーの、清楚で上品なドレス。露出はもちろん控え目、オーソドックスなロング丈のAライン。同色のハイヒール。

 私の瞳を思わせるブルートパーズのイヤリングとネックレス。


 ――正直、目から鱗が落ちた。


 叔父様は好みは保守的だけど、センスはすごくいいんだ。私が普段絶対に選ばないような種類なのに、自分で見てももの凄く似合っている。いつものトガリが皆無で、かえって新鮮だ。


 一周回って戻ってくるというか、また新しいインスピレーションが、降ってきてヤバイくらい。

 帰ってきたら早速デザイン画だ!


 これは直ちに叔父様に見せねばと、喜び勇んでドアを出たところで、マックスと鉢合わせた。

 フォーマルを着たマックスが、私を見て目を丸くする。


「どーしたんだよ、それ! すげーいいよ!!」


 珍しく手放しの絶賛。そうだろうそうだろう!!


「叔父様からのプレゼントだよ!」

「――その手があったか……!」


 満面の笑みの私の返事に、途端にマックスが渋い顔で、畜生またやられたと、ブツブツぼやく。

 そういえば昔読んだ漫画で、男が服を贈るのは脱がすためだとか言ってたなあ。とりあえず、もしマックスが贈ってきたら、ソッコーでつき返すか。


「叔父様、どうですか!?」


 玄関ホールで待っていた叔父様に見せると、嬉しそうな笑顔が返る。


「素晴らしいよ、グラディス。やっぱり贈ってよかった」


 こっちも大絶賛。こちらこそ新しい視野が拓けた気分で、二重に感謝です!


 すっかりいい気分になって出かけたレストラン。

 明らかにいつもとは違う注目のされ方で、更に新鮮な気分を味わった。


 まあ、私たちが正装で出かければ、どこでも大注目ではあるんだけど。マックスも体格が叔父様にほぼ追いついてきたし、それこそイケメン二人に甘やかされる私、とか最高だ。どっちも身内だけど。


 でも私が注目されてたのは、ドレスのせいだけじゃなかった。


 今朝の新聞に、でかでかと載ったばかりなのを忘れてた。

 バルフォア学園の由緒ある伝統行事を、狡猾で悪辣な策で荒らし回った小悪魔として、また悪評が広まってたらしい。――納得いかん。 

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