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決戦直前

 開始1時間でハンター陥落という大波乱。


 今年の新歓バトルロイヤルは、大荒れだ。うちはちゃんと台風の目になれてるかな。


 ここまでは作戦通り。うまいことハマってる。


 ただ、難敵はまだ残っている。アーネストのパーティー。ティルダを引き抜いたとはいえ、もう一つの優勝候補の地位は揺るがない。


 アーネストは、ギディオンよりもクエンティンによく似ている。意外に食えなくて冷静なんだ。もうハンターと同じ手は使えない。

 そもそもアーネストは、ハンターみたいに無駄な反発も受けてないから、さっきみたいに人も動かせない。っていうかこれ以上やると、私が反発されるわ。


 特別教室棟を本拠地に、他を潰すことに専念しよう。アーネストのパーティーは後回しだ。


 例年なら、数が減ってくると会敵率が下がってまどろっこしいんだけど、私は職員室の監視モニターから全情報を得ている。


 どこに隠れ潜んでようが、ヴァイオラ、ティルダ、ダニエルの攻撃陣が、容赦なく奇襲をくらわす。生き残りの数は万事順調に、サクサクと減っていった。


 ヴァイオラはユーカを、ソニアは私を守りながらの、それぞれ実質単独行動みたいなもん。だけど、戦う環境さえ整えれば、全然危なげなくいけた。50年前、ギディオンでやってた経験が生きてる。

 ユーカも、ヴァイオラ相手によく付いて行ってる。うちはまだパーティー6人、誰も欠けてない。

 ルーキーとしてはなかなかの快挙だ。


 そしてもう一つ、快挙と言えるルーキーがまだ生き残っている。

 キアラン、マックス、ノアのパーティーもまた無傷。


 この3人は常に固まって行動をとっている。安定した堅実な作戦行動は、指揮がキアランだからだな。まさに安全確実に、それでいてマックスの力を最高レベルに引き出してくれている。


 モニターで、常に現在地を欠かさずチェックして、うちの分隊に近付いたらその都度、退避させてる。


 マックス、敵にするとマジに厄介なんだよ。入学したてのペーペーが、あの実力は反則だろ、ってくらい。その上、キアランの判断力とノアの情報力のサポートが付くと、まったくもって手に負えない。

 正直、うちの総戦力で奇襲しても、難しいだろうなあ。


 再びモニターでキアランチームの様子をうかがうと、けっこうな強敵を、マックスが圧倒的な実力で、全滅させたとこだった。キアランのサポートも実に巧みだ。ノアの姿は全く見えない。光点では存在が近くに確認できるから、ホントに隠密行動がうまいんだな。あの情報力の源か。


 そしてこれで、とうとう最終段階だ。


 あとはうちと、キアランと、アーネストの3チームを残すのみ。アーネストのパーティーは、うちと同じく6人。ティルダの穴は、さっさと埋められたようだね。


 これで生き残りは全部で15人。あと5人落とせば、校庭での最終決戦になる。


『全員、体育倉庫前に集合』


 これが最後の放送。全員に招集をかける。


 ここまで計画通りに運べてる。あとは、キアランとアーネストが遭遇するまで、一切手を出さず、ある程度距離を置いて見守る予定。


 事前に、マックスを通してキアランには共闘を申し出ている。対アーネスト限定で。

 最初から全部共闘だと、マックスを手放した意味がないし、何より戦力を持ちすぎるから、やめといた。絶対結果が一方的になり過ぎて、まともなゲームにならない。


 遠巻きに見守り、この2パーティーが戦闘に入る瞬間、加勢してアーネストチームを確実に潰すつもり。逆のパターンも考えたけど、結論として組む相手にキアランを選んだのは、正直アーネストは信用できなかったから。


 ザカライア時代、トリスタンとの鬼ごっこでも、クエンティンが参謀につくと、たまにヒヤリとさせられることがあった。アーネストにも同じ空気を感じるんだよな。うっかり信用したら、背中から撃たれる気が、するようなしないような……何とも言えない。

 この懸念がなければ、一番強いマックスを、力を合わせて倒すのもアリだったんだけど。


 開始から2時間ちょっと、初めて私たちは全員集合した。


「みんな、あと一息だよ。残る敵は、キアランチームとアーネストチーム。まずはキアランチームと連携して、アーネスト潰して、最終決戦に行こう!」

「私が、お兄様を倒してあげるわ!」


 ティルダが意気込んで応えた。


「うん、頼むね。ティルダは後衛。アーネストに隠密行動(ストーキング)して、隙を見つけたら、迷わず狙撃だよ。ヴァイオラ、ダニエル、ソニアは前衛に出てもらう」


 3人の騎士がそれぞれ頷く。


 残り3チームになった以上、放送での指示はもう意味がない。キアランもアーネストも、私の誘導には引っかからないだろうし、逆に警戒させるだけだ。だから、これが最後の指示になる。後はみんなの実力と判断に任せよう。 


「ダニエル、狙撃ターゲットの確認はあんたが一番早い。決着後生き残ってたら、すぐティルダについてフォローして。私は校庭で待機して、ナンバーカードの独占を狙うから、ティルダは遠距離から援護ね。カードを回収し終わるまで持たせれば十分」

「了解よ」

「分かった。任せろ」


 ティルダとダニエルが力強く了解する。今回の戦闘でダニエルは、観測手として大戦果を挙げてくれた。狙撃の成功率の高さは、ティルダ一人の手柄じゃないことは、ティルダ本人も分かってるだろう。


 みんなが戦う間、私はさっさと次のステージ、校庭で待ち構えておく。

 残り10人になった合図の鐘と同時に、100、200、300の高ポイントカードが投入されるから、直後にゲットしてやる。校庭中走り回っても、1分程度だろう。もう私の役割はほぼ終わったから、捨て石で構わない。ここから先は非戦闘員の出番はない。


「ユーカもあとは、私とひと足先に校庭付近で待機ね」

「はい!」


 戦えないなりに、カード集め要員として必死にヴァイオラに付いていったユーカが、まだまだ元気に返事をした。


 私は監視モニターのスクロールを広げて、地図を攻撃組4人に見せる。


「こっちがアーネストで、こっちがキアラン。時間稼ぎのために、できるだけ校庭から離れた場所で決着つけてくれると助かる」

「ええ、分かったわ。グラディスも気を付けてね」


 ずっと私を守ってくれていたソニアが、短い別れを惜しんだ。


「私とユーカはいったん戦線離脱するから、生き残る確率は高い。みんなの方が正念場だよ。私はもういらないから、スクロールは持ってって」


 一番集団戦慣れしているダニエルを指揮官として、スクロールを渡した。敵の位置を把握できれば、突入のタイミングも計りやすい。


「あとは任せた! 全員で最終10人に残るよ!!」

「「「「「おお~っ!!!」」」」」


 全員で気合を入れ直して、それぞれの道に分かれた。

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