表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/378

本業開始

 私が大預言者の地位に就くにあたって、現在の預言者はサポート的な立場になった。主力は私になるけど、修行と経験を積んだ優秀な預言者チームがお払い箱になるわけではない。


 元々預言者の仕事は、けっこうな規模の儀式をした上で、やっと予言が降ってくるらしい。

 だから懸案事項をリストにしておいて、原則週に1回、儀式を行い、重要度の高い順から予言を導いていくというスタイルになる。ただし緊急事態の際には、国王の承認の元、即時の儀式開始も可能。


 例年よくあるお題は以下の通り。


 今年は豊作か、否か。

 水害は起こるか否か。

 A地点とB地点、どちらに(ダム、貯水池、堤防、トンネルなど)を設置すべきか。

 今年はあの流行病が流行するか否か。

 国家行事の当日は晴天か否か。等々。


 二択とはいえ、必ず当たる予言なら、国政において値千金の価値がある。

 だからこそ、預言者はこの国で非常に大事にされるのだ。そちらはそちらとして、二重体勢で続けていくらしい。うん、堅実だね。私が急病とかなった時、何もできなかったり、知識と技術の継承が途絶えたりしたら、後々困るもんね。


 大預言者の私ともなれば、扱いは当然預言者以上。下手したら国王よりも大事にされる。

 何しろ国王は20~30年に一人は出るけど、私は300年ぶりだからね。代わりがいない。表舞台に立つことはないけど、国家として重大な決断には、大体私が噛んでると言っていい。

 例えるなら高卒の10代をいきなり政治の世界にガッツリぶっこむんだから、ファンタジー世界スゲエよね。


 しかも私の場合、面倒な儀式とか全く必要としないし。

 訊かれた傍から、お得意のパターン別予言で最善の結果を教えてあげられる。

 週に一度とかの制限もないし、緊急時には特に大活躍する。予言が降ってきたらすぐ「明日ここで土砂崩れが起こるよ。避難所はここがいいよ」とか告げれば、避難や対策、再建の準備なんかが災害が起こる前から始まるんだから。

 こりゃ、重宝されるわけだよ。

 王様には可愛がられ、重臣たちにも頼りにされ、大した時間もかからず国家の中枢に欠かせない一人になった。


 更に国家行事ともなれば、預言者チームの筆頭として先頭に立つ役も負う。

 ローブからこぼれる黒髪に意志の強い緑の瞳、自信のある堂々とした物腰――なかなかいい女風味に仕上がってきて、儀式の際なんか、国民の前に出れば惜しみない大歓声だ。


 かつて収容人数数万人の体育館で、注目を浴びて戦っていた時代を思い出す。それよりもはるかに上回る熱気に、内心テンションを上げながら、優雅に微笑んで手を振りこたえる。これぞ大人の女の余裕!!

 若く美しい大預言者様は、国民にも大人気ですよ!

 国民はお前の中身までは知らないからな、なんてアイザックの憎まれ口も気にしない!


 仕事に関しては、完璧……というより、私にかかればどんなトラブルも解決するか回避できる。生まれ持った棚ボタみたいな力とはいえ、人の役に立って感謝までされる仕事は、嫌いじゃない。

 毎日充実してるとは思う。


 でも、数年のうちに、何か虚しくなってきた。

 いくら仕事は充実してても、プライベートは……。


 ――周りの同世代が、どんどん結婚してるんだよぉぉぉおおお。

 ――子供も次々生まれてるんだよぉぉぉぉぉおおおおお。

 うあああああああああああああ!!!!


 私はこのまま恋もせず一生一人なのかと思うと、正直辛い……。せめて子供でもいれば……。


 どん底にヘコみかけた時、はっと気が付いた。


 そうだ、子供に関わる仕事をすればいいじゃないか!


 この世界に幼稚園の先生的な仕事ってあったっけ? いや、私に幼児の面倒は無理だ! 精神レベルほぼ一緒だからね! おもちゃの取り合いとか普通に混ざるからね!

 よし、母校の教師だ! 子供というにはちょっとデカいけど、細かいことはどうでもいいっ。もっかいあの学園で遊び倒したらあああ!!


 子供の頃からラノベ気分で歴史書読み込んでたから、歴史なら下手な教授より詳しい。国政に関わる以上、政治経済地理国際情勢の社会系、農業や畜産、気候・地形とか自然科学系もイケる。その上一周目では、保体だけど教員免許(高校)持ち!

 なんだ、私、適任じゃないか!! 泥船だろうが、巨大さだけは超ド級だぜ!!


 この大預言者様が、迷える子羊たちを導いてやろう!!


 思い立ったが吉日と、とりあえず手近なとこで、新婚のコーネリアスと婚約者の決まったアイザックにゴネてみた。

 お前たちばっか幸せになってんじゃねえ。裏で動いてなんとかしろ。ここで通らなかったら、国王の謁見の場でゴネるぞ。


 こうして私は、大預言者の本業の傍ら、バルフォア学園の教師の副業を持つことになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ