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学園卒業

 私は学園生活を大いに満喫した。


 ここでは、誰も私を縛れない。

 就学前と違って、比較的自由に動けるようになったのが大きいよね。一応15歳で成人年齢に達し、物々しすぎる警護も大分緩まった。外歩きも前みたいに煩わしいほどではない。仲間と連れ立って街歩きくらいはできるようになって、楽しさ激増。

 私が予言の力で、自分に降りかかる災いをことごとく回避可能なことも、証明してきたからね。


 卒業すれば、大預言者として重い責任がかかる立場になる。小さなお山の王国で、好き勝手に大将が出来るのは今だけだから、目いっぱい楽しむ使命が私にはあるのだ(キリッ)!!


 そういうわけで、本来厳しいはずの軍隊生活式教育も何のその、私はかなりのびのびとやらせてもらった。


 1年間で不動のアンタッチャブルな地位を確立させ、2年生へと無事進級。幼馴染みのコーネリアスとアイザックを新入生として迎えた。

 入学と成人祝に、私おススメの下町酒場に連れてったよ。坊ちゃんどもに、下々の楽しみ方を教えてやるのだ!! 最初は警戒してたアイザックも、慣れたら意外と気に入った様子。コーネリアスは初っ端から常連のように馴染んでた。さすがだ。


 入学直後から、当然かのように生徒会副会長に就任したアイザックは、相変わらずクソ真面目でうるさかった。気ままで奔放な私の振る舞いは、やっぱりあいつの目に余るらしい。毎日飽きもせずにお小言を食らった。すごい根気だよね。けど、私の自由は誰にも止められないぜ!


 ちなみにコーネリアスはのんきに書記なんかに収まってた。王子なのに生徒会長、やらないんだね。まあ、らしいんだけど。突っ走りがちな堅物の親友を、後ろから緩やか~に誘導してさりげな~くコントロールしてるよね。意外にやり手だ。ホント、良い王様になるよ。


 学園生活はとても楽しい。

 私の人生、多分今が一番無責任で楽しい時期なのは間違いない。


 ただ一点、非常に不愉快なことがあった。


 お前ら、イチャイチャしてんじゃねえっ!!! 心の底から叫びたい。


 ここは学問と戦闘技術を修めるための神聖な学び舎ですよっ!!

 将来国家を担うための人材を育成する非常に重要な修行場です!!

 何あちこちで桃色空間(フィールド)展開させちゃってんの!?

 お年頃ですか!? お年頃ってやつですか!? いいですね! 青春真っ盛で!!

 私にもちょっと分けて!!


 まったく腹立たしい限りですよ! ああ、好きなだけ若者の特権を謳歌すればいいさ! どうせ私参加できないし、こうなったら徹底的に陰から邪魔したらああああっ!!!


 ……まあ、そういう心境です……。


 私だって、モテないわけじゃない。多分。

 ワイルドな美人系姉御ポジションくらいには収まっているはずなんだよ。おそらく。

 言い寄ってくる青少年だって、それなりにはいるんだ。それなりに。


 それだけに、余計悔しい!


 私がうっかり手を出したら、罰を受けるのは彼らなんだから。そりゃ色っぽいアプローチは、片っ端から弾き飛ばしていくしかないでしょ。こちとら血の涙だよ!


 まあ、ギディオンが番犬のようにいつもつるんでるもんだから、みんなあっさり撤退してったけどね。ねえ、もうちょっと粘ってみないっ!?

 ちなみにギディオンとは一緒にいる時間が長い分、噂にはなったけど、完全に男同士の付き合いだった……。こらこら、まがりなりにも女子に、もろ肌脱いで入れ墨自慢をするのはやめなさい。そもそも未完成だし。星が増えるごとにいちいち見せなくていいから。


 そしてコーネリアスは、ちゃっかり可愛い婚約者を見つけてた。意外にもお見合いとかではなく、学園で出会った同級生。おっとりとしつつもしっかりとした、とてもお似合いの伯爵令嬢。あの子が将来の王妃なら王国は安泰だと、大預言者として太鼓判を押してあげよう。相変わらずコーネリアスは地味ながら堅実だよ。


 でも、やっぱり学園に広がる浮かれた空気は癇に障る。


 ムカつくからアイザックを、気になるあの娘の逢引き現場にご案内~。ちくしょう、コノヤロウ。お前まで色気づきやがって。ちょっと色目使われたくらいで舞い上がってんじゃねえ。この大預言者様が、世間知らずのボンボンに現実を教えてやる。

 へい、ダンナ! 彼女なかなかの発展家でげすよ! 受け入れるかどうかは男の器量次第でやんすね!!


「ザカライア~~~!!!」


 久しぶりにガチ切れされました……。

 ワルノリが過ぎました。スイマセン。


 めちゃめちゃ怒られた後、その日は潰れるまで、いつもの下町酒場で自棄酒に付き合わされたよ。ホントにゴメンね。思春期の純情潔癖少年をからかいすぎちゃったね。


 後に、後輩たちが噂することになる。――いつも冷静沈着な優等生のアイザック先輩の怒鳴り声を聞いたのは、あの1回だけだった……と。


 こうして私の学園生活、たまに少々度を越したワルさはあったけど、色気はないながらも充実した三年間を送った。


 勝負事、イベントごとは常にあらゆる手段を駆使して優勝を勝ち取り、個人戦であるところの学問は、当然すべて満点トップ。

 多少は問題児ながら、私は前代未聞空前絶後の最優秀成績での卒業を果たした。


 そして、鍛え上げられた卒業生たちは、それぞれの進路へと踏み出す。


 もちろん私は、大預言者へと――。


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