表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/378

学園入学

 15歳。


 バルフォア学園の入園式の日、生徒の大半が最初にやることは、パーティー作り。

 各種鬼イベントを単独で乗り切るのは厳しいから、それはよくある手段。


 校内のいたるところで、新入生たちは朝からメンバー選びに奔走してる。


 そんな中、私は人混みの中、足取りも軽やかに突っ切っていく。


 すご~く気分がいい。


 だって、久し振りに王城の外に出れたの! これから、学校のある日は毎日だよ!

 ちょ~~~嬉しい!!


 この国は大らかというかいい加減というかで、王子のコーネリアスすら、割と一人で出歩くのも見逃されるのに、それ、私には適用されない。

 王城に慣れた頃、いたずら心を起こして初めてのお使いをやってみたんだよね。一人でふらっと町まで抜け出して。

 そしたらとんでもない数の組織と人員が、私の捜索と保護に動員された。


 私、ホントに国家の財産なんだね。改めて実感した出来事。


 たまに外に出かける用事が出来たら、色々な関係機関で護衛計画が調整され、大掛かりな警備体制が実施されるの。私はどこの大統領だよ!?


 これ、さすがにきつい。もう出る前からウンザリ。

 前世であれだけアウトドアだった私が、すっかりインドア派になっちゃったよ。

 王城内が一つの町みたいなものだったから、まだマシだったけど。遊び相手もいたしね。


 でも今日からは学生! 普通の、とはいえないけど、校内では肩書に関係なく全員新兵扱いが建前だから、私の特別扱いは変わるはず。

 それだけで気分が晴れやか。


 そしてもう一つ私の気分をアゲるのが、みんなと同じ制服。

 いつもの年寄り臭いローブじゃなくて、ちゃんと年相応のファッションができる!

 前世の時は制服ってキライだったけど、初めてありがたく堪能してるわー。まあ、この世界の女子ファッションは露出が少ないから、スカートとかほぼくるぶしだけど、このみんな同じって感じがいいんだ。

 身分差の激しい世界だけに、ほっとする。


 何より、制服姿の私は、なかなかに魅力的なのだ! それが一番でかい!

 王城でいい生活を送ってきたから、スレンダーながらも健康的なボディ。緑系の制服に、漆黒の髪とエメラルドグリーンの瞳がよく映える。迫力系美人へのゴールへ向かって、一直線な感じ。

 まだきっと誰も、私が大預言者だなんて気が付いてないよ! 基本私の顔を見れるのは、王城内に限られるからね。


 バルフォア学園の最大の目的は貴族の跡取りを鍛え上げること。そのためには強力なライバルが必要なわけで、超難関テストを潜り抜けてきた市井の優秀な人材が、生徒数の半分以上を占める。

 1学年100人以上。身分もバラバラだけど、学内では全員対等からのスタート。

 横並びの状態の同級生たちと、これからどう差をつけていくか――すでに競争は始まっているのだ!


 これから3年間お世話になる学び舎を、一人で悠々と散策していた私は、中庭で足を止めた。

 一人の少年がベンチで早弁ならぬ早パンをしている。周囲の遠巻きの視線など気にもせず、一心不乱に食べていた。

 ライオンの鬣を思わせる濃い金髪、同い年のはずなのにすでに現役騎士かのような体格。一見怖そうな雰囲気と奇行のせいか、あえて近付こうとする者はいない。


 けれど私は彼の真正面まで直行した。

 少年は食事の手を止め、目の前で立ち止まった何者かへと視線を上げた。鳶色の瞳と目が合う。


「こんにちは。私、ザカライア。私とパーティー組まない?」


 名前も知らない少年に、いきなり直球の勧誘をした。


「俺は、大会と名のつくものは、全部優勝をさらうつもりだぞ?」


 見知らぬ美少女(自称)からの突然のお誘いに動じもせず、少年は答えた。私はにっこりと笑う。


「奇遇だね。私もそう。私と組めば、その目標は達成できるよ」


 断言する。何故ならこれは、大預言者の予言だから。

 この人の名前も知らない。

 でも、一目見て分かった。コーネリアスやアイザックと出会った時と、同じ感覚があったから。


「ふーんじゃあ、組もうぜ。俺はギディオンだ。よろしく」

「ふふ、よろしく」


 握手。――あっ、ちょっと手、拭いてないでしょ!? なんか付いた~!


 こうしてパーティーはあっさりと結成された。


 この光景を遠くから目撃していた同級生たちは、後に言う。

 あの伝説の二人の、初対面から組むまでを、30秒で見れた――と。


 これが大預言者ザカライアと、後の公爵ギディオン・イングラムとの出会い。


 ちなみにこいつが、撃墜マークのタトゥーを背中に刻む一族の跡取り。一度見せてもらった時には何の絵かわからなかったから、完成したらまた見せてもらう約束をした。――もっとも、完全に完成させた当主はまだいないらしいから、一体いつになることやら……。

 まあ、私は脳筋とは相性がいいから、いつまででも付き合ってあげるけどね。


 そしてこの二人だけのパーティー。

 私は遠くまで見通す目と頭脳、ギディオンは作戦を確実に遂行する強力な手足となって、学園のイベントというイベントで、三年間、予言通り君臨することになる。


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ