空をかける義弟に見下されて歩いて帰る
子どもたちが、空に向かい両手を広げている。広場に集まった子どもたちは紙飛行機や、凧、シャボン玉などで遊びはしゃぎ、それをこれまた広場に風呂敷を広げる保護者たちが其処此処で見守っていた。
平和だ。
「ああ、空を自由に飛びたいなぁ。」
「思考読んでいいなら飛びたいように飛ばしてあげるよ?」
「広場がパニックになるからやめて」
魔法使える人間なんてほぼ都市伝説なのだから不用意な発言やめていただきたい。
国が国なら火あぶりの刑だと言うのにこの男は今日もあざとい笑顔と柔らかな物腰でサリーの隣に佇んでいる。
おかしいな、一昨日も昨日も今日も、到底社会人らしからぬスケジュールだけどなんでここにいるの?いや、私も私で普段なら家の手伝いやお茶会があるのになんでいいつけられないの?
「サリーが、結婚に頷いたらこの休暇も終わるよ?」
「え、もう了承したんだけど」
ストップザモーション(?)
私たちの間の空気が突如固まった。
え、あ、なんで?
え?ローレンスはよくわかんないけど許嫁返り咲いた…んだよね?じゃあもう結婚ってことじゃん?え?違った…?
ていうかそもそも許嫁返り咲き騒動から両親はとにかくローレンスの無事な帰還に喜んでいるし、許嫁の件も「アイス食べていい?」「いいよ」くらいのテンションで了承していた。
今更…なに、か…問題が?
疑問符を頭に生やしてローレンスの動きを待った。
どうやら、彼の頭は彼の頭でショートしてしまったらしい。面白いほどピクリともしない。つつんつんつん、ほっぺたをつついても反応なし。顔を覗き込むが前髪が邪魔で視線が合わない。
サッと前髪をあげて視線を合わせようとしてみる。
「ローレンス…?ローレンスさーん、起きてまむぅうウウウ”ッッッ?!?」
あ、視線があった、と思ったらやられたよ…。顔面を両手で抑えられブッッッチュュユうううとかまされた…っていや、なんで?!私がなにしたよ!!?
いやいやいや、周り見てっから!善良な子供達が見てっから!!なんという周知プレイ?あ、いや羞恥プレイか…ってもうなんだよ!重ねて恥書いたわっ!!
今は口をきけないけどね!唖然としすぎて!抗議すらできない私って一体…。
未だに私の顔面から両手を離さないローレンスが言った。
「サリーは、僕のこと好きってこと?」
彼の表情は恍惚と輝いていた。
「…私が生きてきた人生の中で出会った男の人の中では(顔は)一番好きだし(衝撃的な思い出的な意味で)思い入れがあるよ…」
「そ、そんな!世界で一番好きだなんてっ!!」
「あれそんなこと言ってたかな?」
コイツ明日は耳鼻科行きだな、と思いながらサリーは抱きついてくるローレンスにされるがままだった。