時を越えた義弟を愛せるか
本当に自分を守れるか…。
いや、ホント…“人権”ってさ大事な言葉だよね。人権を無視された時にこそわかるわ、人権って大事!プライバシーも!!
「というわけで」
「どういうわけだよマジで。」
相変わらずあざとく小首かしげて見つめてくるローレンスは実に満足気な顔だ。
「別の世界ではさ、今日クリスマスなんだよ。」
「は?クリすま、え?それなに?」
「それにさっきの木の葉っぱ柊に似てたよね。」
「え、無視?ひいらぎってなに?え?」
「クリスマスはね、柊の木の下では女の子は男の子からのキスを拒まないんだよ」
「いや無視かよ、つうかどういう制度の国だよ。」
「流石恋人たちの聖夜だよね」
「拒否権ないのになにが“恋人たちの聖夜”たよその国ヤバイじゃん、あとローレンスの頭も」
「もっかいキスしていい?」
「あ、ごめんなさい」
ぐぐっと笑顔で近づこうとするローレンスを押しやる。
初回だというのに濃厚なキスをぶちかまされサリーのライフはゼロに近い。
もう勘弁してくれ、とばかりにため息をつく。
「あらあらまぁまぁ仲がよろしいこと!」
「母さん、ただいま。」
「あれ、幻聴か?母さんにはゲンナリした娘の区別がつかないかな?」
帰宅、とともに出迎えた母の手にはコケーッと騒ぐ鶏。あ、今からね、アレしちゃうのね…。
ゲンナリにさらにゲンナリが重なる。いや、鶏肉は好きだから仕方ないんだけど、今のテンションで出会いたくなかったわー。
「さぁさ、入んなさい!お父様も待ってたのよ!ご飯早めにしますからね、貴方たちはゆっくりしてて!」
ホホホ、と上機嫌な母は屋敷の裏手に消えていった。
断末魔を聞く前にさっさと入ろう…。
居間に入ると父はおらず、おそらく書斎にこもっているのだろう。
ソファに座るとローレンスもすかさず真隣に座る。いや近いわ。席まだあるじゃん!まぁそうくると思ったけどね!昔はそうだったしね!
「ところでさ、」
「ん?」
「ローレンスは今無職なんでしょ?時空?を渡ってきたわけだし?お姉ちゃんね、無職の男に引っかかってる暇なんてな…」
「会社3つ持ってる。」
「え?」
ローレンスはにこやかを崩さずにさらりと言ってのけた。
「だから、会社、今、3つ持ってる。」
開いた口が塞がらないとはこの事か…。
聞き間違いではないらしいその言葉に動揺が隠せない…。
「簡単に言えば株と貿易と研究機関かな?」
これで安心?と言いたげな彼が足を組み、肩に腕を回してくる。おいおいやめなさいそんな社長みたいなポーズ。
「新婚旅行、どこ行こっか?」
彼は固まる私のこめかみにチュっとキスを落とした。