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2pt,2ptの評価をくださった方、ありがとうございます!
1、1じゃないところに人の優しさを感じました。
そして、なんだか正しい評価だ!(ダメだし)
華藤アオイと出会ってから、俺の中で、一連の現象が解き明かされ始めていた。
結論から言おう。
俺は今、学園もの乙女ゲームの世界に滞在している。
イケメンになったあの日からだ。
華藤アオイを主人公とした乙女ゲームの世界に、俺は巻き込まれているんだ。
俺を始めとした、髪色が派手な男子生徒が、どうやら攻略対象らしい。校内で、赤髪とか、紫の髪の男と、華藤が会話をしているシーンを目撃したことがある。
あいつらは俺より攻略が進んでるように見えたな。
ちなみに、華藤とぶつかる前に回避したショートの黄髪の陸上部女子は、華藤の親友ポジションのキャラらしい。
ようするに見た目が派手な生徒が乙女ゲームの主だった登場人物なんだ。
これで、俺の身体に掛けられた恋愛を制限する呪縛の存在理由も説明がつく。
この世界にとって、俺に勝手に恋愛をされては都合が悪いのだ。
水ノ宮ユキトとは、何人かいる攻略対象キャラのうちの一人に過ぎないのだから。
ほら、今日も華藤が俺を攻略しに来た。
俺だけの空間だった屋上に現れた華藤は、まっすぐ歩いてくる。
ピンクの髪を風に吹かれながら。
「またここにいたんだ」
「ここは俺の特等席なんだ」
俺の口からは無関心に聞こえる口調で言葉が滑るように出てくる。
実のところ全く関心がなくはないものの、積極的にこのゲーム世界の恋愛対象としての役割を果たしたいとは思えなかった。
他のイケメンと股を掛けられていることを思うと、あまり気分がいいものではない。
「いつも何を読んでるの?」
「本」
「そ、それはさすがに私でも見ればわかるよ」
華藤は苦笑いを浮かべる。
ころころと表情がよく変わるあたり、さすがは主人公といったところか。
「何か用でも?」
「えっとね、今度の休みなんだけど、空いてるかな~なんて?」
おっと。
いきなりデートの誘いとはな。
華藤のやつ、攻略を焦りすぎなんじゃないのか。
まだ出会って数日だし、これまで何人もの女子が当たって砕けてきた水ノ宮くんなんだぞ。俺は。
だいだい、色んな攻略対象に声を掛け過ぎて、普通の恋愛の距離感がワケわからなくなってるんじゃないか。
俺も、ゲームのプレイ中はそんな感覚だから、よくわかるんだけど。
リアルにそんな感じで何人も声を掛けてたら、超絶ナンパ人間じゃないか。
「残念だな」
ほら、俺がわざわざ言わなくても、勝手に口が動いて呪縛様が断ってくれる。
そもそも、俺の休みと言えば、家でゲームに決まっているのだ。
ゲームで俺は二次元の女の子と思い通りの恋愛をエンジョイできてしまう薔薇色の青春を謳歌するんだ。
悪いな華藤。
休みは二次元の方で予定アリだ。
「だよね、そうだよねー」
華藤は、やはり攻略を急いだことが解ってか、恥ずかしそうに頭を掻く。
ダメでもいいから誘ってみたという感じかもしれないな。
だが俺はそんな軽いキャラではないのだ。
「えへへ、残念でした」
「そう、残念だ。あいにくその日は丸一日、予定がないんだ」
えー。