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短編集

グッバイ・スクールライフ

作者: 竜野 早志

2015年7月2日午前11時58分 僕は死んだ…



さかのぼること約5時間前――



目を覚ますと早く起きろと言わんばかりに騒々しく目覚まし時計が鳴り響いていた。

音を止めて時刻をみるとちょうど7時だ。いつもなら2度寝をするのだが、

夏特有のむわっとした暑さに襲われた僕は、2度寝することもなくすんなり起きることができた。


すぐさま部屋にある扇風機をつけ学校の準備に取り掛かった。


「信也ごはんできたわよー!早く食べて学校行きなさい!」


ちょうど行く準備を終えたころ、1階のから母さんの声が聞こえてきた。どうやらご飯ができたらしい。


「はいはい!今行く!」


適当に返事をしながら階段を降りていく。

僕は必ず朝食を食べていく派なので朝食は楽しみだ。

今日の朝ご飯はいったいなんだろう?と思ったが、まぁ実際のところ何でもいい。

欲を言えばバランスのいいごはんをいただきたいところだ。


「ほら、早く食べちゃいなさい。遅れるわよ」


リビングに着くと母さんに急かされた。とりあえず食卓に着いた僕はご飯を確認。

今日のご飯は、と



えーと――『白米』と『納豆』と『キムチ』に『ヨーグルト』飲み物は『R-1』



「なんだこの腸がフル活動しそうな朝食メニューは!!!」


あまりの偏り方に思わず叫んでしまった。何でもいいと思ったが、

これはどう考えても常識の範疇を超えている!


「いいじゃないの。信也の好きなものばかりよ。それにお母さん昨日帰りが遅かったのよ。どれも健康的なものだから食べなさい!」


「そうだけどさー」



僕はため息交じりにそう言った。僕の両親は共働きだ。

仕事で忙しいはずなのに毎朝ご飯を作ってもらっているのに母さんに文句は言えない。

健康なのはいいが、菌同士が体の中で戦争を始めて逆に不健康になりそうで心配だ。

しかし食べないという選択肢はないので、しっかり食べて学校へ向かうことにした。



……が、やはりあの朝食はまずかった。学校に着いたころには腸がフル活動を始めていた。


「やばい…腹が痛い…あんなもの食べるんじゃなかった…」


後悔してももう遅い。あの中のどれか一つでも効くのに、全部となるとその力は驚異的。

夏の暑さからくる汗に、腹痛からの冷汗も加わり、もうわけがわからなくなっている。

だが俺にはトイレに行くという選択肢はない。

なぜなら男子学生は学校で『アレ』をしてはいけないという暗黙の了解があるからだ。

それに今日は、3時間授業。3時間ならなんとかなる。ということで俺は我慢するにした。


教室に入ると、そこには親友のアキラがいた。

やばい。こいつは俺を見つけるといつもなぜか肩パンをしてくる。

いつもならどうってことじゃれあいだが、今日は爆弾を抱えている。

幸いまだアキラはこちらには気づいてはいない。僕は見つからないようにそーっと自分の席は向かった。



「あっ!おう!信也!」



しまった!見つかった!!

こちらに気づいたアキラは、いつものように笑顔でこっちに迫って来る。

こうなってはしかたがない!全神経を肩に集中させて、衝撃に備えるしかない!



「おっはよーう!!おらっ!」

「ゲふっ!!」


まさかの腹パンだった。


ズダンッとひざから崩れ落ちる僕。


「おっと溝内に入っちまったか?メンゴメンゴ!」

「……何で……何で今日に限って腹パンなんだよ!人の事考えろや!!!」


涙目になりながら言い放った。本当のところは今すぐ殴ってやりたいが、

今は左手は『腹』に、右手は『出口』にかかりっきりで両手は大忙しだ。特に右手。

なんで今日に限って腹パンなんだ?!もう少しで過ちを犯すところだったじゃないか!


「何怒ってんだよ。考えろってただの腹パンだぜ?なにかあんのか?」


うっ!言えない!腹が痛いなんて言えない!

こいつにそんな事を言ったら面白がって話を広めだすだろう!その速度は音速…いや光速か!


「……何でもない!!!!」


この歯がゆい気持ちを押し殺しながら僕は席に着いた。

とりあえず椅子に座り楽な姿勢を確保することはできた。後はここで3時間じっとするだけのこと。

そう思い僕は瞑想に入ろうと目を閉じようとした。


するとクラスのマドンナのみやびさんがこっちに向かってくるのが見えた。

何だろう?僕に用事だろうか?…いやちがうな。確か……3か月前もこんなことがあったな。


みやびさんが『今日天気悪いね』なんて突然僕に向かって話しかけてきたもんだから、

女の子耐性がない僕は『あっ……あ、いや、そ、そうだねクラウディだね!』っと返しをしたところ、

隣の何とかあきほっていう女子に話しかけてたみたいで、変な回答も相まって

大変な空気になったことは今でも鮮明に覚えてる。


……黒歴史を思い出したらそっちに気が回って少し楽になった。二度とあの状況になるまい。

そんなことを思い出している内に、みやびさんは僕の前を通り過ぎて行った。


「あきほ!ほら約束どうり作ってきたぞ!」


ほら、やっぱり隣の何とかあほ子に用事があったようだ。俺じゃない。……がっかりはしていない。

第一に女子とそんなに交流がない俺にマドンナのみやびさんが話しかけてくるわけがない。

さぁ、気を取り直して瞑想に入るとしますか。


「ねぇ、信也君!ちょっといい?私今日、あきほにスイートポテト作ってきたんだけど、ちょっと多く作りすぎちゃって。よかったら食べてくれない?」

「へっ?」


突然話を振られたので変な返事が出てしまったが

なんていうことだ!みやびさんから手作りお菓子のおすそ分け!

みやびさんとは普段話すことすらできないのにお菓子をもらえるなんて!

こんなにうれしいことがあっただろうか!

だがなぜ、なぜ……



『スイートポテト』なんだぁ!!



今の俺にはただのダイナマイトでしかない!!

ここは何としてでも避けたい!!

だがしかし!ここで断ったら二度とみやびさんの手作りお菓子なんて食べれないかもしれない!!

くっそ!神様!なぜ僕にこんな試練を!!僕が何をしたっていうんでしょうか?!


「あっ、無理だったら別にいいけど…」

「いや食べる!もちろんもらうよ!」


しまった!勢いでOKしてしまった!これはもう覚悟を決めるしかない!


「じゃあいただきまーす!」


ええい!ままよ!僕は丁寧に包みを開けスイートポテトを一気に咀嚼する。


「そんなに急いで……信也君おなかすいてたの?……どう?おいしい?」


うーん。これはサツマイモがサツマイモでとっても腸に作用しそうだ。

味なんてわかったもんじゃない。

途中走馬燈が見えかけたがすんでのところで意識を取り戻し、喉から声を絞り出す。


「ヴん…」

「よかったー!ちょっと心配だったのよね!隠し味にヨーグルト入れてあるのがポイントなの!」


……なんてことを!!しっ、しまった!ダイナマイトじゃなくてニトロ爆弾だったか!


みやびさんのニトロ爆弾を食した僕はさらに限界になりながらも、

なんとか2時限目の終わりまで耐えていた。


しかしここで新たな敵が現れた。それは『エアコン』だ。

僕の席はちょうどエアコンの真下。熱い真夏の日には風が心地いいのだが、

今日はいつも味方のエアコンが、暴力をふるっていた。何とかしなくては…

みんなには悪いが先生に頼んでエアコンを切ってもらおう。



「先生、寒いのでエアコンを切ってください」

「えっ?寒いって、いきなりどうした?どう考えても熱いだろうが。みんなは熱いんだから我慢しろ」



何っ!切ってくれないだと!それもそうか!今日の気温は37度どう考えたって、

多数決的にもそれは無理な話だったか!だが今の理由以外にエアコンを止める理由があるか?!

いったい僕はどうしたらっ!!


「えーっと!ちがくて!その…なんていうか…」

「何だ、橋本。他に言うことがないなら授業再開するぞ。授業がおくれる」

「エ、エアコンの気持ちがわかるんですっ!」


突然何を言ってるんだ僕は。


「ど、どういうことだ?」

「僕にはエアコンの気持ちが伝わってきます。エアコンはたまには休みたいと言っています!みんなに感謝されるわけでもないのに永遠と冷風を流し続ける。無給で働いていると。なのに休みも休憩もない。僕はつらいと言っています!!可哀そうだと思いませんか!もし先生が無給で休みなかったらどうです!嫌ですよね!…先生…今先生にはエアコンに休ませる権限があるんです…少しでもかわいそうだと思ったら!どうかエアコンを……エアコンを休ませてあげてください!」


もう自分でも言ってる意味がわからない。こりゃダメだ。明日からあだ名は『エアコン』かな?


「そ、そうか。わかった。確かにエアコンはかわいそうだな。エアコンを切ることにしよう。みんなそれでいいな!よし!山田!窓を全部開けろ!」


えっ?いけた?!伝わった?!

言ってる本人がわからないのに、先生には何がわかったんだ?!

とにかく、なんとかエアコンを止めることができた様だ!よかった!

しかし、だいぶパ二クっておかしなこと言ってしまったけどみんな変な風に思ってないだろうか?

まぁ大丈夫だろう。多少変なこと口走っただけだし

何の問『…ねぇ信也君って中二病?』聞こえない。聞こえない。聞こえない。

隣の女子の会話なんて聞こえてない。それになんだか先生とクラスの皆が可哀想な目で

こちらに視線を向けている気がするがきっと気のせいだろう。

なんか色々失った気がしたが、今は背に腹は変えられん。



そして、魔の3時間授業が終わり放課後。

あとは帰るのみとなった僕はすぐに荷物をまとめ教室を出ようとした。すると


「おう!信也!変えるのか?一緒に帰ろうぜ!おr」


あつしが『おr』と言ったその瞬間僕は何も聞こえなくなった。

そして僕はなぜか今までの人生を振り返っていた。



初めての自転車。

初めての遊園地。

初めての小学校。



小さなころは何もかもが楽しかったな、と。



そして悟った。

これは走馬灯。アキラに腹パンをされ僕は――



――やっちまったんだな、と。



2015年7月2日 午前11時58分 僕は社会的に死んだ…


なろう 初投稿作品です。いずれ連載小説を投稿しようと思うので、試しに短編を書いてみました。1カ所でも笑ってくれたらうれしいです。小説は独学で書いているので誤字脱字、読みずらいところはあると思いますがよろしくお願いいたします。今後の活動に取り入れますのでコメント・評価お待ちしております。

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