毒芹
わたくし二作目の小説投稿ですよぉぉぉ↑↑wwwwwwwwwwwwwwww色々と語彙が無くて困ってますよぉおおおお↑↑↑
女は電気一つ点けていない暗闇の部屋の中で
自身が動かすパソコンの光一点だけを見つめて椅子に腰かけていた。
女は毎日「幸せの麻酔」というサイトを見ることが日課だった。
名前とは裏腹にそのサイトは地域別に分かれた自殺サイトだった。
死にたくても死ねない同郷の者同士がサイト上で集まり、
そして一緒に自殺を決行するといういわば「一緒に死んでくれる人」を探すサイトだった。
トップページは美しい花や絵画の絵で彩られているものの
その絵画に描かれている聖母の心臓をクリックすると
一転して自殺サイトへとリンクされる仕組みになっている。
最近はこういった自殺サイトや薬物取引が増えて社会的に問題を増やしている事もあり
インターネット上での規制が以前より厳しくなったため
普通の検索語句を入力しても出てこないものが多く、
URLを入力して接続するものがほとんどといった時代になったのである。
このようなサイトはこういった小細工を施して細々と運営しているのである。
女は死にたくて堪らなかった。
理由はただ一つ。
8年にも及ぶ片思いが崩れ去った事だった。
女は18歳の時、高校を卒業して小さな会社の事務員に就職した。
それから二年後の事である。
彼女の運命を変えるあの男が現れたのは。
男は色が白く、端正な顔立ちで仕事も出来、優しい一面もあり
女が何か失敗を犯すと注意しながらも慰めてくれた3歳上の上司だった。
日ごろからその男に惹かれていた女ではあったが
仕事が終わらず仕方なく残業を夜中の1時までその男としていたことがあった。
その時、男と女は過ちを犯したのだった。
高校の頃から冴えなかった女を優しく美しい男は抱いた。
女はその日からその男に異常なまでの果てしない愛欲を抱き
それ以上に私を抱いたくせに、と自分のものにならない男を憎んでいた。
度々それからも男との関係はあり、その度女は男からの愛を感じていた。
女は後に気づく、男に本当に好きな女が居ることに。
余計憎らしかった。余計愛してしまった。
その女が自分よりも男に愛されている事を考えれば全身の血がのぼせて
噴き出すほどに屈辱を感じた。
しかし、この関係でしか成り得ない何かがあった。
女もそれでいいと思っていた。
男から「少しでも」必要とされるのならば、それでいいと。
思っていたはずだった------------
ある日、男は女を抱いた夜、「微笑みながら」女に言い放った。
この関係をもう終わらせようと。
いつもと変わらない優しい口調で言った。
------もう必要無くなったのね私が。
女の中で何かが切れた。
今まで我慢していた何かが一瞬にしてくず折れた。
女は冷静を装い、そうとだけ言うと服を着た。
男はその女を不思議そうに見つめた。
私が必要とされなくなったのは、あの女のせいなのね。
あの女がいるから、あの女がいるから、あの女がいるから。
生きる価値の無くなった女は死のうと思った。
どうせ死ぬなら運命の人が愛した女も道連れにして。
今日の朝、女は来訪客を装ってあの憎い女の家を訪ねた。
つまり愛しい、憎らしいあの運命の男の家だ
中から出てきたのは自分より何倍も、何十倍も美しい女だった。
玉露の様に美しい瞳をしている女だった。
そして何処かあの男に似ていた。
よく愛し合っている二人は顔が似てくるという。
女はそんな話を何処かで聞いたことがあり
ただでさえ肥大化しているその女への憎しみが体内を出るほどまでに膨れ上がった。
地味で未だ冴えない女はその女に乗りかかり右手に持っていた包丁で
心臓を何度も何度も刺した。
飛び散る血飛沫で美しい女の白い肌に赤い飛沫がついた。
それでもこの女は美しかった。
男なんてこんなものだ。
結局美しいものが良いんだ。
そう思うと涙が止まらなかった。
全身全霊の力を込めて下にいる女の首を絞めた。
既に事切れている女はピクリとも動かず
瞳孔を見開いてこちらを見ていた。
美しい、美しい、美しい。
憎らしい憎らしい憎らしい。
この女さえ居なければ、居なければ、居なければ。
憎しみが止まらなかった。
一度は刺す事を、絞めることを辞めた両手が再び動き出した。
正気を取り戻す頃には原形を留めないほどまでに顔面が醜く歪んでいた。
これでよかったんだ。きっと。
女は血や指紋を丁寧に拭き取ると家に帰ってきた。
ふと女の目に写真立てが写った。
愛しているあの男と笑顔で写る女、そしてその横に居るこれまたすべてが整った男だった。
全員笑いながら仲睦まじく写っている。
女は動かない女を睨むと写真立てを床に叩きつけ割った。
男に必要とされなくなったあの日から、女はこのサイトの常連になって居たのだった。
どうせ、自分が殺したことが公になるのも時間の問題だろう。
あの塀の中で希望のない毎日を何日も何年も過ごすのなど
今の女には無理だった。
そうなる前に、せめて自分で死にたかった。
あの男の落胆した顔が見たかった。
しかし一人で死ぬのはいささか恐怖だった。
なんて都合のいい話なんだろうと女も思っていた。
ならば同じく死の願望がある人達と死ぬのはどうだろうと。
思い立ったらこのサイトを開いていた。
----「幸せの麻酔」----
このサイトに入ったとき既にここの常連と思われる数人が居た。
女を含めてアクティブ中の4人と、ロム中の1人
計5人がこの自殺サイトの中には居た。
女はいつも疑問に思っている事がある。
このサイトに入り浸るようになって2週間
数日してからいつの日に入っても、いつの時間に入っても
「毒芹」というハンドルネームの人がいつもロム中になっている。
定員の満員を防ぐため2時間放置していると自動でその部屋から落ちる仕組みになっている。
その間に何か操作やチャットを送らないと勝手に落ちてしまうので
少なからずその「毒芹」さんは操作をしているということになる。
疑問に思っているのは女だけではなく
自分の他によくこの部屋に来る3人も思っていたらしい。
一時は管理人や運営側の人間等ではないかとの噂も出たが
他の部屋に古くからこのサイトに居るいわゆる古参さんに聞いても
このサイトの管理人はもう6年ほど前に自殺に成功しているらしい。
毒芹さんに何度話しかけても反応はない。
見ているはずなのに返信をしないとは、と逆上した人もいたが
女はそれを必死に宥めた。
そんなある日の事だった。
女はある日、まだ明るい昼の時分から幸せの麻酔を開いた。
いつもの部屋に入りお馴染みの人々を待つと同時にロム中の毒芹さんを見やった。
見ればロム中のマークが外れている。
チャット欄に目を戻すと
--貴方は、本当に死にたいんですか--
と一言だけ送られてきていた。
女は驚きと同時に咄嗟に毒芹さんが居る間に返信をした。
--私は本当に死にたいです。--
すると比較的早い速度で返信チャットが送られてきている。
--なら、一緒に死にましょうか。--
そんな言葉が送られてきた。
今までだって幾度か送られてきたことがある。
しかしいつも違う話に話が逸れて結局無くなってしまうのである。
他には誰も居ない。
このやり取りを見ているのは女と他でもないこの毒芹だけだった。
--死んでくれるんですか--
--はい。--
短くとはあろうとも本気なのが伝わってくる文章だった。
地域別に分かれたチャットサイトだったので会うことは容易いだろう。
--「最近○○市に出来たデパートの裏にある○○街を知ってますか」--
毒芹は女の家から徒歩でせいぜい5分程度の場所を指定した。
--そこなら近いです。--
--ならそこで、明日昼の2時に--
女は突然指定された思いもよらぬ早い死の宣告に驚いた。
--そんなに早いんですか--
--だって、死にたいんでしょう。--
--そうですけど。--
--なら死にましょうよ。--
--わかりました--
女は怯んだものの男に必要とされない毎日など希望も無かったので死ぬことにした。
というよりこの毒芹は来ないだろうと思っていたのが大きかった。
次の日の朝、女は最後のテレビを点けた。
点けた瞬間自分が使っている携帯会社の不具合のニュースがやっていた。
通信速度の遅延だのメール受信の遅延だの。
しかしそんなどうでもいいニュースは直ぐに終わってしまい次のニュースへと移る。
殺人事件が起こったらしい。
被害者の顔はよく見たことのあるあの女だった。
あぁ、私の事をやっているのか。
捜査は難航しているらしい。
何故、すぐに自分だと分からないのかが女は謎だった。
そもそも殺してから一週間も経っているというのに
警察の捜査が女に及んだことが一度もない。
しかしそんな事はこれから死ぬ女にとってはどうでも良いことだった。
普段は財布と携帯を持って出かけるのだが
財布に一枚だけ入っていたはずの名刺が無い。
以前幸せの麻酔のURLをメモしておこうと思ったのだが
近くに書くものも無かったので仕方なく名刺の裏にメモしておいたのだった。
女の中で自殺サイトに接続するための大事なものだったので
少し残念に思った。
結局女は携帯だけを持って出かけた。
男と繋がれるただ一つの手段だったからだ。
そして約束の時間がやってくる。
昼の二時、指定された路地街にやってくる。
出来たばかりのデパートに人が流れ込んでいるせいか
ただでさえ人が居ないこの場所は人が居ないようにも思えた。
少し歩くと水の止まった噴水を囲む石垣の上に背の高い男が俯きながら凭れかかっていた。
女は近づいていくと顔を上げた男と目が合う。
自殺を志願しているとは思えない顔立ちの整った青年で
あいさつをした後、微笑みながら小さな小屋を指差した。
青年は大きめの袋を持っており薄く七輪と練炭が透けた。
女は青年に付いて行くようにして小屋へと入る。
青年が言うには今はもう使われていない何十年も前の見世物小屋らしい。
取り壊そうとするとその作業員達が原因不明の高熱を出したり心臓発作を起こしたりで
今の今まで残ってしまっているらしい。
中にはぽつんと椅子が外の風景が目に入ってくる窓ガラスの方を向くようにして置いてあった。
青年は女をその椅子に腰かけるように指示するとその横に七輪と練炭を置いた。
苦しまないようにと睡眠薬をミネラルウォーターを差し出した。
青年も女と形状の違う錠剤を口に含む。
女は徐々にやってくる睡眠薬の効果を必死に意識で繋ぎとめていた。
青年は女に向って悔いの無い笑顔で微笑む。
何処かで見たことのある笑顔だ。
青年は七輪に火を焚き、小屋の外へと出ていく。
一人だけ取り残された事に
驚き目を見開くが今にも睡魔に襲われそうな女はそれを制止することは出来なかった。
女は薄れゆく意識と一酸化炭素の海の中で
目の前の窓ガラスの外側に立った見覚えのある青年が誰なのかを思い出す。
---あぁ、あの写真立てにあの男とあの女と共に写っていた青年か。---
思い出し、虚ろな意識の中に大きく携帯のメール受信音が鳴り響く。
女は咳き込みながら携帯に表示された名前を見るとあの男の名前だった。
最後の力を振り絞り一心不乱にメールBOXを開き、
女はメールを読むと全てを知ったのだった。
「何か君は誤解しているようだけど、
この関係を終わらせたいって
君との関係全てをって事じゃなくて
あの時言いたかったんだけど結婚しませんか?
って事なんだ
誤解させたのなら申し訳ないです。
今度会えた時には、ちゃんと口で結婚してくださいって言うね。
そういえば、もうすぐ妹も結婚をするんだ。
妹も僕の好きな人に会いたがっています」
ありがとうございました。