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作者: 月猫百歩
掲載日:2026/02/17

 聡太は、いつもいじめグループから暴行を受けていた。ある日、放課後の倉庫裏で羽交締めにされ、身動きが取れなくなった。


「なぁ、化粧してやるよ!」


 嘲るような声と共に、誰かがポケットから黄色い口紅を取り出した。

 豹柄のケース。どこかで万引きしてきたものだろう。


「顔出せ!」


 顎を乱暴につかまれ、無理やり顔を上げさせられる。ぐり、ぐり、と。聡太の唇は、容赦なく黄色に塗りつぶされた。


「やめて……やめて……!」


 泣き喚く聡太を見て、いじめグループは腹を抱えて笑った。


「やべ、超ウケるんだけど!」


 誰かがスマホを構え、動画を撮り始める。


 そのときだった。


 聡太の喉から、低いうなり声が漏れた。肩が震え、髪が逆立つ。目つきが変わる。

 みるみるうちに、聡太の姿は豹へと変わった。


 羽交締めを振りほどき、牙を剥く。


「うわっ!」


 豹になった聡太は、いじめグループへ飛びかかった。

 腕に噛みつかれ、肩に爪を立てられ、悲鳴を上げながら彼らは逃げ惑う。

 そして、散り散りになって逃げ去った。


 ――――


 その夜。


 いじめグループは「すごい動画が撮れた」と、ネットに映像を投稿した。

 再生数はみるみる伸びていく。


 だが、コメント欄は想像と違っていた。


「いじめ最低」

「普通に暴行事件」

「学校特定した」

「犯罪だろ」


「は? 人間が豹に変わったんだろ!」


 苛立ちながら、もう一度動画を再生する。

 そこに映っていたのは――


 泣き喚きながら、必死に手足を振り回して抵抗する聡太の姿だけだった。


 豹など、どこにもいなかった。


 ――――


 後日。いじめグループは、暴行と撮影・拡散の罪で逮捕された。


 聡太は教室の席に座り、窓の外をぼんやりと眺めていた。

 ペンケースの中に、あの黄色い口紅が入っている。


 聡太はそれをそっと取り出し、ぎゅっと握りしめた。


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