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魔物が神聖視される世界に転生したら、ワタシは【戦闘狂】に目覚めました〜生贄から始まる狂戦士無双〜  作者: 早野冬哉


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35.不死鳥のザレク戦③

「まずは魔術師、貴様からだ」


 そう言うとザレクは、周囲に氷柱を生成し、放つ。


「ったく芸がないねぇ。それじゃあさっきと属性を変えただけじゃないか」


 ライラも負けじと挑発し、火を纏う。その火はやがて大火となり、氷柱の悉くを食らう。龍がごとく猛り狂った炎はやがてザレクへと襲い掛かった。だが──。


「どこに向かって打っておる?」


 ザレクの煽り声が聞こえると、ザレクの姿が揺れ、跡形もなくかき消えた。ライラが放った火の龍は空を攫う。


「チッ……幻影かい。面倒だねぇ……」


 空に現れた三体のザレク。どのザレクの輪郭もぼやけていて、蜃気楼の原理を使って幻を見せる能力だとわかった。


「ゆくぞ人間。かわして見せよ」


 三体のザレクが同時に動き出す。魚を狙う海鳥のように、ライラを狙って急降下する三体のザレク。


 目があてにならないなら殺気を探って……。


「これって……」


「天下の神獣様が小細工なんてねぇ……プライドでも捨てたのかい? でも無駄だよ、くたばりな!」


 いつの間にかライラは、先ほどザレクの翼を二枚貫いた六色の魔法陣を重ねた砲口を三つ、準備していた。


 シュドオォォォオオォォン!


 周囲から色が抜け落ち、放たれた三本の光線は三体のザレクを正確に打ち抜く。勝ち誇ったライラの横顔に、ワタシは叫んだ。


「ライラさん違う! それ全部偽物です!」


 フッ……。


 ライラの背後から、さっきのお返しだと言わんばかりに姿を現すザレク。その翼が、ライラの胴体に迫る。


「……っ。やってくれるねぇ!」


 強大な攻撃に、咄嗟に張ったアイスウォールも時間稼ぎにすらならなかった。だが、問題はない。


 スパアァァァンッ!


「ぐおぉっ!? ばかな……何故!?」


 ライラを叩き殺すはずだったザレクの翼は、根元から斬り落とされていた──そう、ワタシの手によって。


「気付いてたんだよ? 間に合わないわけないでしょっ!」


 ワタシは、そのまま連続で翼を斬ろうと前に出た。折れた剣を振るい、翼の根本に打ち付ける。『剣術』スキルで強化された切れ味と、『狂戦士化』スキルで底上げされたステータスがあれば、固い骨だろうと切断可能──そのはずだった。


 カキイィィィン!


 だがまたも分厚い氷を生成され、剣戟が弾かれる。


 やっぱり狙いがバレたら防がれる……。


 ライラがエレナを連れザレクから距離を取る。それを確認したワタシも後ろに跳んだ。


「行き詰ったら、新しいこともやってみないとねっ!」


 ワタシはライラたちとザレクの間に立ち、初めて前衛まがいのことをしてみる。


「サクラおめぇ……陣形を組んだ戦闘なんてできるのかい!?」


 常に一人で突っ走ってきたワタシが前衛の位置につく。そのことに驚きつつも、ライラは魔術で剣を作り、投げ渡してくる。


 ワタシは投げられた剣を受け取り、無邪気に笑った。


「わかりませんっ! でもっ、たぶんできます!」


「その自信はどこから来るんだい……」


 一応根拠はある。この世界で戦闘を繰り返してきたことでわかったことだが、戦闘時の立ち回りや駆け引きの考え方はゲームに似ている。そして、ワタシは日本で本気になれるものを探していた時、当然ゲームも通っていた。


「後衛火力があるときは、前衛は後衛に攻撃を通さないようにして、牽制だけしていればいい。あと、後衛をいつでも庇える位置にいる……」


 ブツブツと自分に言い聞かせ、役割を身体に覚えさせる。防御に徹するという今までなかったシチュエーションに、普段とは違った静まり返った高揚感が沸き起こる。


「貴様ら……ワレを前に付け焼刃の戦法をとるつもりか? ワレをおちょくるのも大概にせよ!」


 ザレクの頭上に現れた、ザレクの巨体にも見劣りしない大きさを持つ氷柱。


「貴様に回避の選択肢がないのなら、圧倒的な質量で押しつぶすまで!」


 放たれた氷柱は地面すれすれを滑空する。その氷柱が眼前に迫った時、ワタシはトラックにでも轢かれるかのような錯覚を覚えた。


 確かに迫力はすごいけど……。


「これなら、さっきまでの速い攻撃の方が強かったよっ!」


 一刀両断。力を入れずスッと振り下ろした剣は、一切の凸凹がない断面を作って氷柱を二分した。


 バリィィィンッ!


 一泊遅れて氷柱が粉々に砕ける。その破片はワタシとライラたちを避けて、真っすぐに流れ散った。


「小癪な……」


 歯噛みするザレクは、今度は矢と同じくらいの大きさをした氷柱を次から次へと生成し乱射する。


「それはもう見たって言ったよねっ?」


 もう技のレパートリーが切れたのかなぁ……そうじゃないといいんだけど。


 まだザレクには切り札が残っている。そう願いつつ、ワタシは精度の悪い氷柱を斬り落としていった。


「ふんッ……やればできるじゃないか。サクラ、おめぇを信じてやる……死ぬ気で五分稼ぎな!」


「はい! 任せてくださいっ!」


 ワタシがザレクの攻撃を余裕でいなす姿を見て、ライラは機嫌よさげに鼻を鳴らす。ワタシが返事をすると、ライラは杖を床に突き刺して六色に光る魔法陣を展開した。


 ズンッ……!


 その瞬間、大気中の魔力が根こそぎライラの元へ吸い込まれ、ヒシヒシと空間が揺れ始める。ザレクも金色の目を見張り、そして鋭く細めた。


「小賢しい人間どもめ……ワレのとっておきを見せてくれる!」

この話を読んでいただきありがとうございます!


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