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魔物が神聖視される世界に転生したら、ワタシは【戦闘狂】に目覚めました〜生贄から始まる狂戦士無双〜  作者: 早野冬哉


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27.呪術書

「これが、呪術書の残りが封印されている扉なのよぉ~」


 ティーナが持っていた呪術書の断片には回復阻害の呪術に関する記載はなかった。そのためワタシたちは呪術書の封印されている部分を求めて、ティーナのログハウスの地下に来ていた。


「ダメだねこりゃあ。この魔法陣、アタシの魔術を一切受け付けないよ」


 高さ二メートル半くらいの大きな石扉。その側面に描かれた紫色の魔法陣が、ライラの魔術を弾く。


 魔術がダメなら物理──。


「だったらこんな扉、オレ様の『怪力』スキルでぶち破ってやるぜ!」


 ワタシより一足早く、ロクが筋骨隆々な右腕を石扉目掛けて全力で振り抜く。


 ドオォォォン!


 ロクの拳が石扉に当たり、大砲を打つかのような爆音が響く。だが──。


「マジかよ……」


 鉄をも砕くロクの一撃を受けた石扉は、依然として無傷だった。


「ワタシも試してみますっ!」


 ロクの陰から飛び出し、走る勢いも乗せた全身全霊の突き。


 キイィィィン!


 石扉と剣先が衝突し火花を散らす。だが──。


 あ、これ以上やったら剣が折れるっ……。


 カアァァァンッ……。


 咄嗟に剣から手を離すと、剣は天井で跳ね返って地面に突き刺さった。石扉の表面を確認すると、突きをぶつけた場所には数センチほどのくぼみしかできていなかった。


「無理そうだな……やはり謎を解くしかないようだが……」


 そう言ってウィリアムが目を向けたのは、見るも無残に砕け散った石板の欠片。山積みにされた石板の欠片の数は、ざっと見て五百は超えていた。


 しかも、ティーナの説明によると、


「石板の欠片は正しい位置に置かないとぉ~、文字が浮かび上がらないのよぉ~」


 ということらしい。つまり石板の欠片は今、真っ白な五百ピースのジグソーパズル状態となっている。


「ここじゃ魔術は全部石扉の魔法陣に打ち消される。地道にやるしかないねぇ……」


「冗談だろ!? これを全部組み立て直すのかよ……こんなの一日二日で終わる量じゃねぇよ!」


 うんざりとした顔でそう告げるライラに、愚痴を漏らすロク。二人の会話を聞いて、ウィリアムはいっそう苦い顔をした。ティーナもこの地獄のパズルをやりたくないようで、いつの間にか姿を消していた。


 だが、ワタシは違った。


 これなら五時間くらいあれば終わるかな?


 ワタシは日本にいた時、本気になれるものを探すためいろんなことに挑戦してきた。そのうちの一つにパズルもあったのだ。ワタシはその時に、パズル上級者レベルの実力を身に着けていた。


「あのっ、これワタシが組み立てます。ウィリアムさんとライラさんは似たような形の欠片ごとに分けるのを手伝ってくれませんか?」


「いや、俺たちも組み立て手伝うぞ。この量を一人でやるのは無謀だ」


「大丈夫ですよ。ワタシパズルも得意ですから」


 本気になれるものを探し続けた唯一のメリット──多才さ。それだけが、ワタシが日本で十五年間生きてきた唯一の意味だ。やりたいことのために雑事はさっさと終わらせる。その一点において、このメリットは大きな意味を持つ。


「ザレクと王国騎士団と戦うためにもこんなこと、早く終わらせましょう」


***


「これで最後です」


 そう言ってワタシは、最後の一欠片を石板にはめる。


 やっと終わったぁ……。


 作業を終えた解放感を味わいながら、ワタシは両手を絡ませ伸びをする。


「本当にやりやがった……まだ五時間もたってねぇじゃねぇか」


「サクラは本当に多才だな。何をやるにも人並み以上の結果を出せて、俺は助けられてばかりだ」


 ウィリアムの誉め言葉に、ワタシの脳裏に嫌な思い出が流れる。


「加藤さんってすごいね。なんでも卒なくこなせて」


「サクラちゃん、欠点がないなんてすごい才能よね。羨ましいなあ」


 本気になれるものが何一つ見つかっていなかった頃に、ワタシのことを何も知らないクラスメイトに言われた言葉。すごく嫌で、聞いてるだけで首を絞めつけられるように苦しくて、不快でしかなかった言葉。


 でも今は、少しだけ嬉しい……かな。


 本気になれるものを見つけた今、胸躍る戦闘に有り付くまでの障害を取り払うことができる多才さは役に立っている。日本で過ごした空虚な時間も無駄じゃなかったと認められたような、ウィリアムの言葉を聞いて、そんな嬉しさを感じた。


「……ラ、サクラ! 大丈夫か?」


「ん? ああすみませんウィリアムさん。少しボーっとしてました」


「そうじゃない。急に涙を流すなんて……疲れているのではないか?」


「えっ……?」


 気付けば視界は涙で歪んでいた。涙が頬を伝い、雫となって地面に落ちる。


 ワタシ、今泣いてるのか……。


「ハハッ……アハハッ! ああもう、こんなに嬉しく感じた誉め言葉、初めてっ!」


 ポロポロと零れ落ちる涙を拭いながら笑う。そんなワタシに、ウィリアムは何かを察したように微笑み、ワタシの頭を撫でた。


「あらぁ……まさかもう石板を復元させたのぉ~!?」


 地下に様子を見に来たティーナは復元された石板を見て、眠そうにしていた目を見開く。その声を聞いて、ワタシもだんだんと涙が収まってきた。


「なあ若作り魔女。おめぇの話だと、石板を復元したら文字が浮かび上がるんじゃなかったかい?」


 完璧に復元された石板には、一向に文字が浮かび上がる気配はない。ライラは話が違うとティーナに詰め寄った。ティーナも半分閉じた瞼の下から、冷たい眼光をライラに向ける。


「年寄りのクソババアは短期で嫌ねぇ~。慌てなくても、こうすれば文字は浮かび上がるのよぉ~」


 ティーナはそう言って石板に手のひらを押し当てた。


 ジジッ……。


 ティーナが手のひらから石板に闇属性の魔力を流し込むと、石板に紫色の光でできた文字が浮かび上がる。


「ふんッ……おめぇの方が歳食ってるだろう……それに、そういう大事なことは最初に言うもんだろうが」


 ティーナに悪態を吐きながら、ライラは石板の文字に目を通す。


『汝、呪いの力を欲する者よ。我はかつての勇者なり。我は呪いの力を受け継ぐ汝に求めん。神獣を滅ぼし、魔物どもの支配から人々を解き放つことを。故に汝のカンストしたスキルを以ってその意志と実力を示せ。さすれば扉は開かれよう』


 ライラが石板の文字を読み終えると、石扉に描かれた魔法陣が光りだす。次の瞬間、石扉の前には木の棒に藁を括りつけた、かかしのような形の藁人形が現れた。


「要は、このかかしか藁人形かわからない物体にレベル十五のスキルを使って攻撃すればいいってことですよね?」


「そうだろうな……ライラ、頼む」


「言われなくてもわかってるよ」


 ズドンッ!


 無詠唱で放たれた鍾乳石。それが藁人形の腹を貫き、奥の石扉に当たって砕けちる。すると間も無く、固く閉ざされていた石扉はひとりでに開いた。


「あれだな?」


 その中には、真っ黒な表紙の本が浮いていた。

この話を読んでいただきありがとうございます!


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