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魔物が神聖視される世界に転生したら、ワタシは【戦闘狂】に目覚めました〜生贄から始まる狂戦士無双〜  作者: 冬哉


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20.王国騎士団第二隊

「敵襲ですかっ?」


 ワタシはウィリアムの膝からガバッと起き上がり声を弾ませる。


 貴重な対人戦っ!


 ワタシは三百人近くいる騎士を見ると、すぐさま剣を持って走り出した。


「許さない……!」


 憎悪を募らせたウィリアムも、ワタシとほぼ同時に走り出す。だが──。


「待ちな!」


 ライラが魔術で出現させたツタが、ワタシとウィリアムの足に絡まった。


「サクラおめぇ、寝起きの悪さはどこにいったんだい……それに小僧。おめぇは少し頭を冷やしな!」


「あいつら王国騎士団の連中か?」


 遅れてテントから顔を出したロクも合流し、ワタシたちは王国騎士団と向かい合う。すると王国騎士団から数人、騎士が飛び出してきた。


「隊長! たった四人相手に第二隊全員は過剰ですよ。こんな奴ら、俺ら四人で十分です!」


「そうだよ! ボクたちはザレク様に見初められた王国騎士団。まともなスキルも持ってない奴らなんて余裕だよ!」


 兜を脱ぎ捨て、嗜虐的な笑みを浮かべる騎士たちは河の水面を駆け迫る。


「見ろよあいつら。僕たちの水面走りに驚きすぎて固まってるぜ!」


「やっぱりザコだな。すぐに終わらせ──」


 ザッッッバアァァァンッ!


 穏やかな流れの河から突如、巨大な水柱が立ち昇る。それは蛇のようにうねり、調子に乗った騎士たちを丸ごと呑み込んだ。


「若造どもが。調子に乗るんじゃないよ!」


 水柱を操っていたのはライラ。彼女が頭上に掲げた杖を振り下ろすと、大質量の水は王国騎士団を呑み込まんと渦を巻く。


 あれだと全滅するんじゃ……。


「ライラさん。少しはワタシの相手も残し──」


 そんなワタシの心配は無駄だった。


「「「大地よ、我らが願い、我らが魔力を持って守護せよ。ロックフォートレス」」」


 王国騎士団後方に控えるローブの集団──五十人余りの魔術師が声をそろえ、城壁のごとく巨大で堅牢な岩壁を出現させた。


 ドゴォォォン!


 岩壁は濁流の衝突を受けてなお揺らぐことなく立ちはだかり、ライラが操る濁流は霧散する。


「チッ……今ので半分は持っていくつもりだったんだがねぇ」


「「「大地よ、打ち砕け。ロックバレット」」」


 続けざまの詠唱。今度は岩壁が砕け、無数の岩弾へと変わる。


「……ったく。今の魔術師はその程度の魔術も一人で唱えられないのかい……嘆かわしいねぇ」


 岩弾による視界を埋め尽くすほどの乱れ打ち。それを前にしてなお、ライラさんは落胆を漏らした。


 ブオッ……。


 半球状に展開された風の防壁が、接触した岩弾を一つの例外もなく塵に変えた。


 狙いを逸した岩弾が木をへし折り、地面を抉る。そんな中、ワタシたちにはかすり傷一つつくことはなかった。


「バカな……我々が五十人がかりで放った魔術をたった一人で防ぎきるだと!? ありえん……」


 防がれるはずがないと高を括っていた魔術が防がれ、魔術師団がどよめく。中には、逃げ腰になる者も少なくなかった。


「黙れ! 役立たずの愚図どもがっ!」


 王国騎士団の後方から響く怒声に、魔術師団が固まる。声の主は他の騎士たちをかき分けて、王国騎士団の前に立つ。


「よぉウィリアム。オマエの仲間も少しはやるようだなぁ?」


 堀の深い顔に伸びきった暗赤色の髪。落ちぶれた中年男性といった出で立ちの男が、片方の口の端だけを吊り上げ、下卑た笑みを浮かべた。


「……っ! デモンッ!」


***


 中年の男──デモンの顔を見た途端、俺は『俊足』スキルを発動した。それを見て、デモンも背中に差したロングソードを抜く。


「待て小僧!」


 ライラの制止も振り切り、河を割って突き進む。瞬間移動と見紛う速さでデモンの眼前まで駆け抜け、俺は剣を振るった。


 ガキィィィン!


「そのスキルはもう知ってんだよ元隊長様!」


 目で追うことすら許さない斬撃を、デモンは難なく受け止める。


「くっ……貴様は必ず俺が殺すッ!」


「おいおいそんな怖い顔するなよウィリアム……そんなんだから部下たちにも見限られるんだぜぇ!」


 ドガッ!


 デモンが繰り出した蹴りを腕で防御する。


「貴様のやり口はもう知っている! 姑息な手立ては通じないぞ!」


 その一瞬、俺が剣に込める力が弱まったタイミングで、デモンは俺の剣を弾いた。


「そいつはどうだろうなぁ! おれは今やこの第二隊の隊長……部下なら腐るほどいるんだぜぇ」


 言うと同時。デモンが親指を立てて振り下ろすと、王国騎士団が動いた。


「相手はウィリアム元隊長だ! まずは周囲を固めろ。『俊足』スキルを使わせるな!」


 副隊長らしき栗毛の青年の指示により、一瞬のうちに二百人以上の騎士に囲まれる。


「……っ!」


「魔術師団。やれっ!」


「「「火よ、烈火よ踊り、焼き払え。フレイムトルネード」」」


 俺の頭上に現れた炎の竜巻。視界を赤く染め上げるそれが、地上に迫る。


「終わりだなウィリアム! これが、このおれを差し置いて隊長の座に座ったおまえへの罰なんだよぉ!」


 俺の逃走能力を封じ、俺の魔術や聖剣と相性がいい火属性魔術で仕留める。統制の取れた攻撃に、俺はなすすべがなかった。


「デモンッ! 貴様だけは──俺とエレナを真っ先に裏切った貴様だけは、絶対に俺の手で殺すッ!」


 憎しみに顔を歪め、俺は渾身の力を込めて剣を投擲。重力に抗い一直線に飛ぶ剣はしかし、デモンのロングソードに弾かれる。


 くっ……どうしてっ!


「ハッ! 好きなだけ吠えろ負け犬! おまえはもう終わってんだよぉ!」


 その時にはすでに、魔術によって現れた炎の竜巻は俺のすぐ上にまで迫っていた。そのことに気付き、俺は膝をついた。悔しさにうめいた。


「クソッ……クソクソクソクソクソクソクソッ! 俺は妹の仇を打つことすらできずに死ぬのか!」


 どうして俺はこんなに無力なんだ! 俺がもっと強ければ……。


 地面に叩きつけた拳からは血が滲む。それでも俺は、胸を焼く無力感に耐えられず、もう一度地面に拳を叩きつけた。その時──。


 ズバッ……ズバババズバンッ!


「アッハハッ! たまには無双展開も悪くないかもっ!」


「オレ様こそが最強だぁっ!」


 背後から聞こえた聞き慣れた声に、俺は思わず振り返る。


「サクラ……それにロクも」


 二人が騎士たちを圧倒し切り開いた道を、ライラは飛行魔術でくぐり抜ける。それから彼女は俺の横で杖をつき、挑戦的に笑った。


「三流魔術師どもが……このババァが一流の魔術ってやつを見せてやるよ」

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