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魔物が神聖視される世界に転生したら、ワタシは【戦闘狂】に目覚めました〜生贄から始まる狂戦士無双〜  作者: 冬哉


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10.カークスの町

「二日後の朝に正門前。いいかおめぇら。少しでも遅れたら置いていくからね」


「はい」


 ワタシたちは効率的にお金を稼ぐため、二手に分かれることにした。どうやらライラさんには何か考えがあるらしく、ロクを連れ、確かな足取りで人混みへと姿を消した。


 さてどうしようかな。異世界でのお金の稼ぎ方なんて全くわかんない……冒険者ギルド的なものがあったりしないかな?


「お金を稼ぐ方法、ウィリアムさんは何か知りませんか?」


 異世界に来て初めての町。右も左もわからないワタシは大通りの傍らで、一緒に取り残されたウィリアムに意見を求めた。


「そうだな……俺は貴族の出身で、そういうことには疎くてな」


「そうですか……」


 どうしようかな……ワタシたちだけ一銭も稼げませんでしたっていう落ちは絶対嫌なんだけどなぁ……。


 腕を組み頭を悩ますワタシに、救いの手を差し伸べたのはウィリアムだった。


「たしかカークスのような大きい町には大抵。賞金首の手配書が貼られている掲示板があるはずだが──」


「そうなんですか? だったらそこに行きましょうよ」


「しかし、手配書の似顔絵はあてにならないぞ」


 そうだった……途中の村で見たワタシたちの手配書のイラストはよく言って化け物。目は白塗りで、顔の輪郭すらぼやけて幽霊みたいになっていた。


「で、でもっ……もしかしたら細かい情報が文字で記載された手配書があるかも。とりあえず行ってみましょう」


***


「これっ! 違法奴隷密売人の手配書。夜に特定の裏通りに現れるって書いてありますよ。これなら見つけられるかも」


 大通りのはずれに位置する指名手配所の掲示板。そこに貼られた判別不能の手配書群から一つの手配書を選び指さす。


「そうだな。それだけの情報があれば探しようもある。だが具体的にどうする? 密売人かどうかを判断する方法があるのか?」


「それは大丈夫です。ワタシに考えがありますから」


「そうか。ならばその手配書にしよう」


 自信満々に言い切るワタシに、ウィリアムは特に異論を唱えなかった。


「まだ夜まで時間がありますし、とりあえずここに書いてある裏通りの下見に行きましょう」


 そう言ってワタシはウィリアムの前を歩く。すると、後ろでウィリアムがぼそりと何か呟いた。


「……して、信頼するんだ?」


「ん? 何か言いました?」


「どうしてきみは、出会ったばかりの俺を信頼するんだ? 『王国騎士団の元隊長』なんてどう考えても怪しい肩書きを持っている俺に、どうしてそう易々と背中を見せられるんだ? 教えてくれ!」


 唐突にウィリアムは、初めて声を震わせる。あまり感情を見せなかった彼が浮かべる悲痛な表情に、投獄に当たって何か大きな出来事が彼の身を襲ったことが容易にうかがえる。


「なあ、答えてくれないか? 俺はもう、どうやって人を信じればいいのかわからないんだ……」


 急に豹変したウィリアムに声を出せないでいると、ウィリアムはワタシにすがるように金色の視線を向けてくる。


「俺はもう、誰も信用できない」


 声を絞り出すように話すウィリアムを見て、ワタシはただ、自分が思っていることを口にする。


「何があったかは知りませんけど……ワタシは別に、ウィリアムさんを信頼しているわけじゃないですよ」


「ならどうして俺に背中を向けられるんだ! 信頼できない相手に隙を晒すなんてできるわけがない!」


「できますよ。ワタシは、ウィリアムさんになら裏切られてもいいって思っていますから」


 微笑みながら話すワタシの言葉に、ウィリアムは探し求めていた答えを見つけたように息を呑んだ。その様子に気付かず、ワタシはまた心の中で高揚感を言葉にする。


 だって裏切ってくれたら、強いウィリアムさんと心置きなく全力で戦えるからね。そんなの絶対に楽しいじゃん!


「まあ何であれ、自分が楽しいと思えることを選べばいいんじゃないですか? ワタシもそうしたから今ここで生きてるわけですし」


 それだけ口にして、ワタシはもう一度ウィリアムに背を向け、歩き出す。


「そうだな……そうかも、しれないな」


 表情筋を緩め、清々しい笑みを浮かべたウィリアムはまたゆっくりとワタシの後を付いてきた。


***


 ジャラッ……。


 本来は動物を捉えるための檻がいくつも置かれた地下室──違法奴隷密売人の隠れ家。その中で目を覚ました十歳の少女が身体を起すと、彼女の首に繋がれた鎖の音が鳴った。


「うるせぇぞクソガキ!」


 バシィィィン!


「……っつ!」


 派手柄のバンダナを口に巻いた男がムチで少女を打つと、少女は口に手を当てて必死で悲鳴を堪える。そうするのは、悲鳴を上げれば上げるほど多くムチで打たれると知っているからだ。


 何度も何度も響く破裂音。それが止む頃には、少女の背中はあざだらけになっていた。ムチを振り終えた男は少女の前に屈みこみ、ガンを飛ばす。


「次音を立てたら……わかってるよなぁ?」


 少女の後ろにいる二人の小さな男の子を見て話す男に、少女は震えながら何度も頷いた。


「ヘッ! 見たかおめぇら今の顔! これだからガキと女をいたぶるのはやめられねぇ」


「ほどほどにしろよガリス。そいつは魔物様直々の依頼だからなぁ」


「わあってる。おれもそこまでバカじゃねぇよ」


 じゃれ合うように会話する二人の男の元に、ドスの利いた声が響く。


「おまえたち、そろそろ奴隷の数が足りない。今夜にでも補充してこい」


「わかりやした」


「了解です。ボス」

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