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33.

 ロザリンは一瞬、恥ずかしさで言葉を飲み込んだ。

 マクシミリアンの穏やかな眼差しと、用意されたテーブルと向かい合うように置かれた二つの椅子。

 庭の花々が彩る温かな光景に、彼女の心は静かに揺れる。


 彼の笑顔は、まるで春の陽だまりのように柔らかく、ロザリンはその温もりに背中を押されるように小さく頷いた。


「えっと……じゃ、じゃあ、いただきます。こんな素敵な昼食、断れませんから……」

 

 彼女の声は少し上ずり、頬は夕暮れの空のようにほのかに赤らむ。

 笑顔にはどこか弾むような明るさが宿っていた。


 マクシミリアンの目元が眩しいものを見るかのように、柔らかく緩む。

 

「それは良かった。さあ、行きましょう。花も、僕たちも、少し休憩が必要ですから」


 彼は軽く手を差し出し、指先に込められたさりげない優しさがロザリンの心をくすぐる。

 彼女はおずおずとその手を取り、温かな手のひらに触れた瞬間、胸の奥が小さく高鳴った。

 

 マクシミリアンは彼女をエスコートするように歩き出し、ロザリンはその背中に続いてテーブルへと向かった。


 席に着くと、目の前に広がる素朴で温かな光景に目を奪われる。

 白いクロスの上には、丁寧に盛り付けられたスープと、こんがり焼けたパンが並んでいる。スープからはトマトとハーブの優しい香りが漂い、パンの表面にはバターが溶けて黄金色に輝いている。


 テーブルの脇には小さな花瓶が置かれ、庭から摘まれたばかりの小さなマーガレットが可憐に揺れている。


 そのさりげない心遣いに、ロザリンの胸はまた温かくなる。


「こんな素敵な昼食……マクシミリアン様が用意を?」


 いつこんな準備を?

 先ほどまで、私と一緒に土をいじっていたのに。

 

 ロザリンは思わず尋ね、目を丸くして彼を見上げる。

 彼女の青い瞳には純粋な驚きと、ほのかな憧れが宿っていた。

 マクシミリアンは軽く肩をすくめ、穏やかな笑みを浮かべる。

 

「執事に頼んで食事の用意をしてもらいました。花は私が準備しました。ロザリン嬢に似合うと思って」


 その言葉に、ロザリンの心はふわりと浮き立つような感覚に包まれる。思わず花瓶のマーガレットに視線を落とし、頬がさらに熱くなるのを感じた。


「私に……、似合う?」


 彼女の声は小さく、まるで風に揺れる花びらのように儚い。

 マクシミリアンは彼女の戸惑った表情を見て、くすっと笑う。


「ええ。純粋で、でもどこか強い。庭に咲くマーガレットは、ロザリン嬢の心に似ています」


 その言葉は軽やかだったが、彼の眼差しには真剣な光が宿り、ロザリンの胸をそっと締めつける。


 彼女は慌ててスープに視線を落とし、スプーンを手に取って照れを隠した。

 スープは温かく、口に含むとトマトの甘みとバジルの爽やかな風味が広がり、彼女は思わず「美味しい!」と小さく声を上げる。


 マクシミリアンはその様子を見て、満足そうに目を細める。


「それは良かった。ロザリン嬢の笑顔が見られれば、用意した甲斐があります」


 その言葉に、ロザリンの頬がまた少し赤くなる。彼女は慌ててパンを手に取り、ちぎって口に運ぶことで照れを隠した。パンは外側がカリッと香ばしく、中はふわっと柔らかく、バターの風味が口いっぱいに広がる。


 マクシミリアンの言葉は軽やかだが、その眼差しには真剣な光が宿っていた。ロザリンはその視線に少しドキッとして、慌ててスープに視線を落とす。


 二人はしばらく静かに食事を楽しみ、庭を渡る風と鳥のさえずる穏やかな時間。

 ロザリンはスプーンを置いて、ふと花壇の方に目をやる。


 マーガレットの小さな苗が、太陽の光を浴びて静かに揺れているのが見えた。


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