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25.

 父との会話を終え、ロザリンは執務室を後にした。

 廊下には、ひんやりとした夜の空気が漂っている。静まり返った屋敷の中を一人歩きながら、ロザリンは胸の奥にたまっていた重さが少し和らいだのを感じていた。


 ――これで、よかったんだ。

 誰かの期待に応えるだけの人生じゃなく、自分の足で立つという選択。

 それを、やっと父にも伝えられた。


 窓の外に目を向ければ、夜空には星がまたたいている。

 闇の向こうにも、確かに光はある。

 そう思えたのは、マクシミリアン様や、父の言葉があったからだ。


 部屋に戻ったロザリンは、ゆっくりとドレッサーの前に座った。

 鏡に映るのは、かつての従順で控えめな伯爵令嬢ではない。

 傷つき、泣いて、それでも立ち上がろうとする、一人の若い女性――ロザリン・シュヴァルツ。


 手首に残る痣の痛みも、あの部屋で見たアイザックとミエールの裏切りも、決してなかったことにはできない。

 けれど、それを抱えたまま、前に進まなくてはならない。


 ロザリンは小さく息を吐いて、意を決したように立ち上がった。


 彼の前で、これまで胸に秘めてきた本当の思いを、自分の言葉で伝えたい。


 ――これが、私の人生の第一歩なのだから。


 万年筆を手に取る。

 何度目か分からない手紙なのに、手が震えてしまう。


 胸の奥では、まだかすかな過去の痛みがくすぶっている。

 けれど、それはきっと、過去を乗り越えるために必要な痛みなのだろう。


 夜が明ければ、新しい一日が始まる。

 ロザリンは、それを信じたかった。

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