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女性に独創的な仕事はムリだと婚約者に言われました ~私はただ錬金術師として天命をまっとうしたいだけ~  作者: 脇役C


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後日談


翌朝、いつものように研究室に向かうと、意外な人物が待っていた。

「エミリア!?」

まだ祖国に帰ってなかったの?


「マリ様、久しぶり」

以前の派手な装いではなく、質素な服を着ている。

「ごめん。でも、どうしても会いたくて」

口調は相変わらずだけど、以前あったトゲトゲしさを感じない。


「どうぞ、中へ」

研究室に案内する。

エミリアは、緊張した様子で椅子に座った。

お茶を淹れ、エミリアと自分の分を配膳する。

あんなにおしゃべりなエミリアが、その間何も話し出さない。


「なにか、話?」

耐えきれずに聞く。


「パパの会社なくなっちゃった」

「そう…」

私のせいではないと思いつつも申し訳ない気持ちになる。

「あ、違うの! マリ様を責めようと思ってるわけじゃなくて、その逆!」

「逆?」

「一から出直すことにしたんだ」

エミリアは、顔を上げた。

その目に、以前とは違う強さがあった。


すごい。

すごい勇気がいっただろう。

彼女の生活の軸が2つもなくなって、それでも前を向いている。


「私、勉強を始めたんだよ」

「勉強?」

「うん、錬金。ちゃんとやって来なかったなあと思って。だって私の仕事、お茶を淹れていればいいと思ってたから」


エミリアがもう一度ちゃんと錬金をやろうと思うなんて意外だった。

嬉しい。


「すごいね」

「いや、全然まだまだなんだけど、でもね、楽しいの」

彼女は、はにかんだように笑った。

「マリ様が研究に夢中になる気持ちが、少し分かった気がする」

「エミリア」


「それで、今日は謝りに来たんだ」

エミリアが深々と頭を下げる。

「あの時は、本当にごめんなさい」


「やめて」

私は、彼女の手を取った。

「みんな、それぞれの事情があった。それに、あなたも被害者だった」

「マリ様」

エミリアの目に、涙が浮かぶ。

「ありがとう」


エミリアが紅茶を口に運ぶ。

でもすぐにカップを置いた。


「あの」

エミリアが、そう言って止まる。

「どうかした?」

「ケルヴィ様のこと。…聞いた?」


ケルヴィ。

あれ以来、消息を聞いていない。


「いいえ」

「死んだよ」

「え」


カップが手から離れ、落ちた。

紅茶がテーブルを汚していく。


「そんな、なぜ」

「あれだけのこと、やらかしたからね。所長はもちろん、貴族でもなくなっちゃった。次の日、首をつったんだって」

「そう、なんだ」

私が彼を殺した。


「私も死ぬべきだったよね」

「そんなこと言わないで!」

思わず叫ぶ。


「ごめん、生きててくれてありがとう」

錬金は人を幸せにすると疑わなかった。

人を不幸にもしてしまうんだ。


「マリ様は、優しいですね」

エミリアが言う。

「あれだけのことをされたのに」

「優しくなんか、ない」

私はケルヴィを追い詰めた。

もっと違う方法があったのかもしれない。


エミリアは立ち上がった。

「長居してごめん。でも、会えて良かった」

「また、いつでも来て」

「え?」

「友達として」

エミリアの目が、驚きで見開かれる。

「なんで? 私なんか」

「エミーって呼ぶね。私のことはマリーって呼んで」

あっけにとられたような顔をする。


その後うつむいて、ちょっと恥ずかしそうな顔をして

「ま、マリー」


その一ヶ月後、母国に帰ってサプライズパーティした。

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