MMW-095
「荒らされた形跡は無し。あの敵たちは興味がなかったのかな?」
「そもそも、何が狙いで襲ってくるかだな。人間の命って可能性が一番高いが」
半分は外で警戒、半分は中にという分担。
俺はリングと、他数名の戦士たちと一緒に突入組だ。
普段MMWで握っているような銃……いや、逆か。
MMWの武装の多くが、人間のそれを大きくしたんだろうな。
(生身は怪我で終わりだから、気を付けないとだ)
いつもは感じない、装備の重さというものを妙に感じる気がした。
使い捨てで数時間は持つという照明を通路に投げ入れつつ、進む。
少しずつ、下っているようだ。
「1機ずつならMMWや車両は通れそうか? いや、何かあったときに困るな。戦士セイヤ、何かあるか」
「んー、怖いぐらい、何も感じないよ。隠してるみたいな、そんな感じ」
言いながら、壁に手を付ける。
自然にできたとは思えない、加工されたように感じる壁。
これが、ソフィアの両親たちによるものか、彼らが見つけたという他コロニーの人間によるものか。
何もないのが逆に怖い中、どんどんと進んでいく。
と、疲れてきたなというところで通路が行き止まりになった。
「ずいぶん大きいな。それに、徒歩だとかなりの距離だった。地下……どのぐらいだろうな」
「これで何もありませんでした、じゃ儲けにならないぜ」
皆が口々に似たようなことを言うのを聞きながら、それを見る。
行き止まりにあったのは、トラックが2台ぐらいは止まれそうな空間。
その壁を、縦に割るように線が入っている。
『どこかに操作の装置があるはずだ。この構造だと、後ろの壁か』
「この感じだと……ええっと……あった」
まるで自分で見つけたように装って、それを見る。
岩壁に埋もれるようないくつかのスイッチ。
なぜか、誰でもわかるかのように絵が描かれている。
(開く感じのほうっと……)
念のために銃を構えつつ、スイッチをぽちっと。
わずかな音がして、それは大きくなる。
視線の先で、開いていく扉。
「有毒ガスがあるかもしれん」
「了解」
誰かの指摘に頷いて、用意した装備の1つを装着。
幸い、すぐにそうということはないようだった。
扉の中に広がっていたのは……荷台がからっぽのトレーラー複数と、奥へ奥へと延びるトンネル。
物は、他には何もなかった。
「外れ、か? トレーラー程度じゃなあ」
「待って。これ、やばいかも。このトンネルさ、どこまであるんだろう」
プレストンが息をのむのを感じ、思わずそう口にした。
感じる緊張具合からして、やばいものだ。
俺も、なんとなくウニバース粒子を探って、そのどこまでも流れていく感じでゾワっと来た。
「……提案だ。外の連中を全員呼んで、MMWとトラックも中に一度入れよう」
「賛成。そのほうがいいと思う」
俺は、とあるものを指さしながらそう言った。
みんなの視線が集まる先で、何枚ものプレートが壁にかかっていた。
何が書いてあるかも含めて、皆でいたほうがいい気がしたのだ。
話が決まれば、動きも早くするべきだ。
トレーラーが動くのを確認し、それぞれ乗り込んで入口へ。
徒歩で行った俺たちがトレーラーで帰ってきたのだから、驚きだろう。
「セイヤ!? なるほど、残されたものですね?」
「うん。MMWをこれに乗せて、みんなで降りるよ。ここは、閉めておこう」
戻ってくるときに気が付いたが、中から閉めるための装置も見つかった。
ここが激戦地だったのは間違いなく、いつやつらが来るかはわからない。
みんなそれをわかっているのか、素早く動き、準備もできた。
トラックとトレーラーとで結構長くなった車列を最後まで見守りながら、入り口を閉じる。
『これはまさか……可能なのか?』
地下へと進む途中、プレストンのそんなつぶやきが俺の頭にだけ響いた。




