MMW-092
ずっと不思議だったことの1つが、コロニー全体の戦士の数だ。
もっと言うと、多いのか少ないのかわからない人通り。
見かける人数では、コロニーを維持するのは難しいのではないか、そのぐらいの人数だった。
けど、これで疑問も解消したと思う。
見かける戦士やそれらの人数の対して、試合が少ないように感じたのは定期的に外仕事があるから。
俺が顔を出さない場所からも、多くの戦士が外で仕事をしていたのだ。
そうして資源を回収し、時には発掘をし、あるいは鉱山で掘る。
(散財してるなと感じる人が多いのは、そうして外の実情を知ったからだろうか?)
俺も外に出ると、寂しさを感じる時がある。
教育で、コロニーの生活で、あるいはソフィアたちとの会話で得た明るい話題。
……明るいと、感じた話題。
外には、そのどれもがない。
いや、探せばあるのだろうけど、広すぎる。
どこまでも荒野で、薄暗い空の壁に時折光がある。
『地上はそれよりももっと広い。人類は、まさに埋め尽くす勢いで増えていたらしい』
(そして、空がどこまで広がってるんでしょ? いいなあ……)
こんな会話を続けられるぐらい、道中は静かだ。
ひたすらに隊列を組んで進む時間。
目的地までは、安全なルートを選んでいることがよくわかる。
時に曲がり、時に速度を上げて。
案内を受けて進む時間は、とても遠征とは思えない。
けれど、休憩時間に目に入る他の戦士たちの姿に、楽観はない。
「星の海、かあ。教育でもほんの少ししか情報がなかったんだよね」
「そりゃそうだろう。人類が激戦を繰り広げた場所で有名だからな。命の危機しかない」
リングはそんなことを言うが、なら不思議なことがある。
どうしてソフィアの家、グランデールはそんな場所の遠征に参加したのか。
いや、戦力的にはほぼ強制的な参加だったのかもしれない。
今回の遠征が、結局俺たち主導ではなく、こうしてほぼコロニー側の主導になったように。
「父は……グランデールは戦って地位を守ってきました。だから、でしょう」
「そっか。何か手掛かりが見つかるといいよね。ただやられるような人たちじゃなかったんだろうし」
「はい、期待しています」
そう本気半分、慰め半分の言葉を口にして、移動に意識を向ける。
ないとは思うけど、奇襲があるかもしれないからね。
こんな生活を続けて1週間
周囲の景色に変化が出てきた。
「残骸、かな?」
「ああ。古いのもあるな。エルデ、そっちはどうだ」
「同じね。古いのもあるぐらいしかわからないわ」
MMWらしき機械の残骸が、岩に混ざり始めた。
これらは、人類の戦いの歴史なんだろうか?
それにしては……。
「問題だ、人類はどうやって地下に来たと思う?」
「え? うーん。たまたま穴が開いてたとか?」
突然の問いに、思わず単純に答えてしまう。
「半分正解だ。地下に、大規模なウニバース粒子のたまり場があったんだ。とても力のこもった鉱脈、それが世界のあちこちにあった。それがいつできたのか、あるいはいきなりできたのか、それは誰にもわからない。俺も、聞いた話の受け売りさ」
リングは続けて言う。
──何かがきっかけで、それが爆発した。
星の各地にあったらしいそれは大穴となり、地下に空洞があることを示したらしい。
地上から、かなり潜った場所にあった空間を、人類は逃げ込む先に選んだ。
どうして逃げる必要があったのかは、記録は残っていない。
ともあれ、そうして、今のコロニーが誕生したのだと。
「なるほどね。じゃあこの残骸は……」
ふと感じた。
何か、力が動いている。
『その感覚に従え。なにせ、星の海は俺が何度も……』
(プレストンが何度も負けて、死んだはずの土地、でしょ。うん、伝わっているよ)
「っと、赤ちゃんは元気だねえ」
「いいんだぜ、通信切ってても。うるさいだろ」
感じたものを探ろうとしたところで、泣き声。
通信越しでもわかる、その力いっぱいの叫びが、妙に心地よい。
それはやはり……。
「いいじゃん、命を感じるよ。俺は好きだよ」
「ふふ、ありがと。お腹空いたのかしら……」
コロニーを出てずっと一緒の生活。
赤ちゃんのいる生活にも慣れてきた。
だからこそ、違和感はつぶして、危険は排除しなくては。
改めて、感じたままに周囲を探り……とある山を見る。
ここからトラックで数時間も走ればつくような距離の岩山。
「報告。左前方、あの山……何か出てきそう」
「何か? 戦士セイヤ、具体的に……いや、待て。こんな場所で揺れだと?」
戦士のまとめ役、その1人の声に緊張感が走る。
俺も感じる地面の揺れ。
何かが下にいる? いや、違う。
「噴火だ! 物陰に隠れろ!」
誰かの叫びにみんな動き出した。
俺もリングとともにソフィアたちのトラックを誘導し、一緒に移動したところで揺れ。
直接上下に揺らされるような衝撃が、襲い掛かってきた。




