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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-088


 ひたすら撃って、撃ちまくる。

 射撃は……いや、なんでもそうかもだけど、回数、経験がものをいう。


 少なくとも、後から思い出すように腕が上がる俺にとっては。

 やればやるほど、しっくりくるのが、不思議な気分。

 そのたびに、プレストンと名乗るいつかの俺はどれだけの経験を積んだのかと感じてしまう。


「ソフィアお嬢様、次を」


「ええ、大丈夫です。セイヤ、見えている……のですか?」


「それは正しくないかな。俺にもまだよくわからないけど」


 ターゲットをソフィアに出してもらいつつ、次の行動を意識。

 ソフィアのいうところの、見えているか、は合ってるけど間違っている。


 体に染み出してくる俺と、感覚を合わせていくことで自分の力にしているのだ。

 結果、予測というか、わかる……って感じかな。


「相手をうまく無力化するには、ちゃんと狙ったところに当てないとね」


「それは、理屈の上ではそうなんですよね。私もよく聞かれますよ。他の飼い主から……どうして当たるんだ、どんな特訓を課してるのだと」


「そうなの? 迷惑かけてるかな?」


「いいえ。こちらが私の戦場ですから。それに、いくらかは秘密なぐらいがいいんですよ」


 画面越しのソフィアは、出会ったころと比べて、きりっとした感じがする。

 ふにゃっとしたのも、可愛いと思うんだけどって何を言ってるんだ、自分。


 会話しながら、数セットのターゲット射撃をこなしていく。

 その傍らで、リングはひたすらにMMWを動かし、何やらやっているようだった。


 空砲を撃っているので、仮想敵と戦ってるのは間違いないと思う。

 けど、そんな動きをする相手、いたかな?と感じる動きだ。


(それにしても、リングってやっぱり強いよね?)


『ああ。最後まで生き残るし、頼りになる。自分でも言っていたが、下手に殺せなくなったのが大きいんだろう』


 トップランカーであるアデルや、他の面々とも知り合いらしいし、面白い。

 もう俺も若くないなんていうけど、戦士としては若くないというのは誉め言葉だ。

 それだけの長い間、試合で死なずに済んでいるのだから。


「っと、予定金額を消費。どうかな、ソフィアお嬢様」


「まだ大丈夫ですよ。やはり、修理費用があまりかかってないのが大きいです」


「動きすぎて、摩耗した部分を修理しないといけないのは、反省点だけどね」


 言いながら、自分のMMWを隅に寄せ、外出る。

 集中してやれていたのか、結構な汗をかいていたことがそれでわかる。


 体を冷やさないようにと、ソフィアに渡されたタオルでふいていると、リングも区切りがついたようだった。

 突進から、近接武器を一閃、動きを止める。


 そのままこちらに移動してきたかと思うと、慣れた動きで降りてきた。

 うん、この動き1つ見ても、やっぱりリングは強いな。


「そっちも終わりか。どうだ、問題はないか」


「うん。ばらまくタイプ以外は、無駄弾は撃たなくて済みそうだよ」


「……なるほど、そいつはいい挑発になるな」


 気にせず告げた俺の言葉に、なぜか笑いながら答えるリング。

 どういうことだろうか?と横のソフィアを見ると、こちらも笑っている。


 少し考えて、ようやく答えにたどり着く。

 確かに、これは挑発になる。


 つまり、外さず当てるぐらいの動きだと相手に告げるようなものだった。


「あー、うまく使うよ」


「そうしとけ。エルデ、どうだった?」


「そうね、いい勝負はできてると思うわよ」


 あまり歩き回れない状態のエルデが、操作している端末から顔を上げてこちらを見る。

 出てきた言葉は、よくわからない内容だけど……悪いことではないだろう。


 問題は、相手を誰にしていたか、なんだけど。


「よし、休憩後に続ける。ああ、セイヤ……気になるだろ?」


「そりゃあね。結構ろくでもない動きだったと思うけど」


「ははっ、そいつは笑える冗談だ。お前だよ、相手にしてたのはな。自覚を持て。そのぐらい、今のお前はやばい評価を受けてるのさ」


 ……なるほど?


 え、そういう状態なの?


(それこそ冗談……じゃないのか)


『少し前に、試合が組めなくなったろ? そのぐらい、ランクと実力があってないんだよ』


 あきれたようなプレストンの声。

 どうやら、そういうことらしい。


「だから、そんなセイヤ相手に動きを磨けば、自分のためにもなるってこった。ああ、そうだ。セイヤはソフィアと一緒に買い物にでも行ってこい。いつ忙しくなるかわからないからな」


「だそうです。行きましょう、セイヤ」


「よくわからないけど、わかったよ。行こうか、ソフィアお嬢様」


 相方の、確かな強さの向上による喜びと、少々の困惑を抱えながら買い物に向かうのだった。


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