MMW-085
敵機の沈黙を確認し、相手……もうあれだ、機械虫とでも呼ぼう、が出てきた建物へ。
近づいても反応はなく、動力が沈黙したことで全部止まったのだとわかる。
どちらかというと、大きな箱、だ。
連絡を取りながら、みんなで調査した結果は……
──昔々に、落っこちてきた移動工場
というのが共通した予想。
予想でしかないけど、たぶん当たり。
逆に、それしかわからないということになる。
「移動工場……そんなの必要なの?」
「どうだろうな。その場その場で、戦力が確保できるっていう点では、かなり重要だが……。問題はここが地下世界ってことだな」
「であるな。どこかには、地上とつながる大穴があり、そこから人類は逃げ込んだと聞くが……」
「今考えてても、仕方ないよねー。問題はこれを持ち帰ることができるかだよ」
最後のフェイスレスの疑問というか意見には、みんなが無理というだろう。
なにせ、トラック10台分ぐらいはある大きさの箱と、その動力部分だ。
ここから移動させるにしても、一体どれだけのって……おかしくないか?
「セイヤ、どうしました? そんな首をひねって」
「うーん、いや……これ、どうやって移動してたのかなって」
「確かに、それはそうね。リング、そっちに何か移動手段は見える?」
俺の返事に固まるお嬢様とは対照的に、冷静に動き出すエルデ。
彼女の相方であるリングからは、何もとの回答。
俺から見ても、特にトラックのようなタイヤはないし、それこそ足もない。
あるとしたら、何か所もの柱状の……何か。
『俺も見覚えがあるな。昔の記憶じゃないぞ。最近の話だ……』
(最近の話で、移動に関する……あっ!)
アデルのガレージで見た、移動用の台座みたいなやつだ。
となると、もしかしたら、だ。
「一応武器、構えておいてよ。うまくいけば移動手段が見つかると思う」
「お、おう……」
お嬢様たちには少し下がってもらい、戦士3人に見守られながら建物の隅に近づく。
妙にそこだけ頑丈そうな柱があり、そこにMMWの手を乗せた。
そうして、ウニバース粒子を意識してメタルムコアを動かせば、見事に反応。
全く読めない何か言葉が、柱の表面に浮かんでくる。
「ふむ、奇怪な模様のようにも見えるな」
「アデルのやつもつれてこりゃよかったな」
「さすがのアデルもこれは読めないんじゃないのー? でも、大体決まってるでしょ、こういうのは」
近づいてきた3人の反応は様々。
その声を聞きながら、文字を目で追い、すぐにあきらめてウニバース粒子として見た。
結果、2か所に分岐してることがわかる。
片方は、どうも機械虫のほうだから……もう1つのほうだな。
恐る恐る、そちらを押すようにMMWの指をそうさすると、力の向きも変わるのがわかった。
すぐに箱全体にメタルムコアからの力がそそがれていくのを感じた。
「何も起きない? ううん、何か起きてる。いったい何が……おっと?」
思わずという感じで、MMWを操作してしまい、もたれかかるようになった。
ただそれだけなのに、確かに箱が動いたのだ。
わずかに、だけど、大きな建物並みの箱が、動いた。
「!? セイヤ、浮いています。ほんのわずかにですけど」
「マジだな。エルデ、高度はどうだ!」
「同じぐらい、ね。接地面にあった高度に変わってる感じかしら」
混乱する頭をどうにか整えつつ、今度は柱をつかんで引っ張ってみる。
すると、まるで滑るように箱が手前に来た。
そのまま実験を続けるように、移動させていくとあっという間にMMWで100歩は動いた。
大きな大きな、重量物のはずの箱が、だ。
「戦士セイヤ、そちらは任せた。あちらの動力源であれば、我らでも運びようがあろう」
「了解。よくわからないけど、コロニーが喜びそうだね」
まだ混乱は収まっていないようで、そんな間抜けなことを口にする俺だった。




