MMW-082
「正体不明の敵と、遭遇する可能性がある場所を敢えて狙う、ね。面白いねえ」
「うむ。考えてみれば、皆このルートは回避している」
直接出会っての2人から、依頼内容をほめられる俺。
どんな依頼がいいかと考えたとき、思いついた内容である。
鉱山もいいし、この前のように探索もいい。
けれど、遠くない未来にやりたいことを考えると、その意味では経験を積んでおきたかった。
あの謎の敵機との戦い、あるいはその情報を少しでも。
(コロニーじゃ、詳細が調べられないんだよなあ)
『詳細不明だからな。仕方ない』
さらりとプレストンはそう言うが、本当だろうか?
コロニーを維持し続ける上層部のことだ。
わからないじゃなく、情報を独占しているだけだと思うんだよね。
でも、それは今の俺にとっては、違いはないのかなとも思う。
知りたければ、上に上がるか、こうして直接しかない。
「突然の誘いというか提案に乗ってくれて、ありがとう」
「何、若い考えは大事である。それに……考えを変えてみれば、これは魅力的だ」
「そうそう。もしかしたら、もしかするかもね」
何やら含みのある2人の返事に、疑問が産まれるが、答えてはくれなさそうだ。
悪いことではない様子なので、今は聞かないでおく。
と、食料などの積み込みが終わったようで、お嬢様たちがやってくる。
俺はオックスとフェイスレスの出迎え、リングたちは準備という分担だ。
お嬢様はいつだったか運転の資格を取ったらしく、トラックの運転手である。
今回、オックスたち名義で向かう先は、とある岩だらけの山。
まあ、この地下世界はそんな場所ばかりなんだけど……。
ほとんど土もかぶっていない、まさに岩山があるのだ。
「よう、準備はいいぜ。今回はよろしく頼む」
「強い戦士がお二人も……セイヤ、頑張らないといけませんね」
「ふふ、大丈夫よソフィア。2人は紳士だから」
リングは彼らと、試合だけでなく一緒に仕事もしたことがあるに違いない。
慣れた様子の2人に、緊張しているお嬢様。
エルデも、彼らなら安心して過ごせるという感じのようだ。
俺も、このぐらい頼れる存在にならないとなと思う。
「では参ろうか。資源はほとんど見つからなかった、偽鉱山とも呼ばれる山へ」
オックスの声に頷き、MMW4機とトラック1台で出発する。
トラックには、空のコンテナ部が2つ連なっている。
そんなに持って帰るものが見つかるかわからないけど、余裕がないよりはいいらしい。
目的地は、コランダムコロニーから数日。
道中は安全だが、目的地である偽鉱山近くでは、謎の敵機、無人機と比較的遭遇しやすいらしい。
何もないことも当然あるが、危険は回避が当たり前の世の中、このルートは人気がない。
(なんとなーく、気になるんだよね。資源がろくにないのに、敵機が出てくるのが)
『このパターンはあまり経験がない。助言はできない』
(うん、それでいいよ。全部知ってる未来より、このほうが面白いよ)
申し訳なさそうなプレストンに返事をしながら、MMWでの移動を続ける。
ちなみに俺はわずかに浮いた状態での移動だ。
試合会場じゃできない、長時間の駆動、動き。
これだけでもいい経験だと感じる。
「戦士セイヤ、やはり、違うものか」
「うん。足場が気にならないのがいい。砂地でも硬い場所でも、同じ動きができるのが強いよ」
オックスからの問いかけは、自分もそうしてみようかという興味を感じる。
同じく上位ランカーであるフェイスレスは、もう別にメタルムコアを購入したらしい。
機体とコアの更新自体は、また今度らしいけど。
「なるほどねー。高度を維持するのが大変そうだねえ。しっかり訓練しないと」
「今度、ブースター制御関連のデータを送るよ」
「セイヤ、そこは安く売るよ、ぐらいにしとけ。知り合いでもタダはよくねえ」
俺としては、気にするほどでもない情報。
けど、ちゃんと体裁は整えろとリングに叱られてしまった。
納得して、了承の返事を返しつつ、移動を続ける。
そうして予定通り、道中は大した問題なく、移動を終えるのだった。




