MMW-081
最近、視線を感じる。
直接こちらを見る相手を見つける時もあれば、誰もいないように感じる時も。
さっと視線を外されたときなんかは、妙な居心地だ。
……とはいえ、自覚はあるのだ。
(まともに敗北なし、連勝。そりゃあ、あやかりたいよね)
「甘いものに誘われてってことか……な?」
「ま、有名税ともいうな。名前が売れてきたと考えれば悪いことじゃねえ」
引っ越しを終えた俺は、リングと共に細かいものの買い足しに出ていた。
そう、チームを組み、今後のことを考えた結果だ。
リングたちに、こっちに来てもらう。
俺たちのガレージには、リッポフ商会による警備があるし、さらに足してある。
聞けば、リングたちもどちらかに一緒に住んではどうかと考えていたらしかった。
これまでも、よくお嬢様はエルデと一緒に過ごしていたし、大した違いはない……はず。
それに、だ。
「儲かってるって思われてるよね?」
「だな。実際暮らすだけなら困っちゃいねえ。間違いじゃない」
事実、身の回りのあれこれは良いものになっている。
食事も、栄養とやらをよく考えたものに。
健康は高くつく、と教育でも教わったような気がする。
同時に、気にする前に死なないように、なんて言葉もセットだった。
俺は気にしないのだけど、お嬢様やエルデは、服装なんかもすごい気にするのだ。
『俺たちへの評価は、そのまま彼女やリングたちの評価にもつながる。ふさわしい暮らしをってことだ』
妙に落ちついたプレストンの声。
不思議と反論する気にならないあたり、難しいところだ。
でも、確かに……連勝してるやつが、適当なMMWに乗っていたら、変か。
強そうな姿なら、納得するというのはわからなくはない。
「セイヤ、遠征をしたいんだよな。いきなり本番は大変なのはどれも一緒だ。この前のような外仕事を、俺たちで提案、相手から発注という形でやってみたらどうだ」
「なるほど……うん、良いと思う。失敗の時は怖いけど、それも経験ってことだよね」
「ああ、そうだ。もちろん、成功したときには自主的に、コロニーにある程度収めるとかしたほうが許可はおりやすいが」
そりゃ、そうだ。
コロニー側だって、貴重な戦士を外でいきなり失いたくはないはず。
そう、失いたくはないはずなのだ。
でも、お嬢様の両親、その仲間は帰ってこなかった。
いったい何があったのか。
そのことを知るためには、足りないものが多すぎる。
「俺はいいけどさ。リングはどうなの? エルデが……ええっと、大変なんでしょ?」
「そこなんだよな。出歩くぐらいは、もう大丈夫なんだが。今日の買い出しもそのためだ」
「そうなんだ? 俺、ずっと安静にしてたほうがいいのかと思ってたよ」
リングとエルデの間にできた、子供という存在。
親のいない俺と違い、2人という親がいることになる2人の絆。
ちょっと前は、エルデも体調が悪いことがあったようだけど、最近は安定しているという。
その分、お腹も大きさが目立ってきて、とても不思議だった。
彼女と子供のことが大事なリングがこういうからには、外で活動すること自体は大丈夫なのか。
言われてみれば、今日の買い物はクッションというか、そういうものが多い。
エルデが車両で快適に過ごせるように、ということだろう。
「激しいのは無理だから、車両で待機だろうがな。だから相手と俺たち4人で行けるような場所でどうだ」
「うん、いいよ。そうだ、下手な相手に声をかけるよりさ……」
そうして、俺が提案した依頼を頼む相手は……以前一緒に戦った二人。
1人は、表情のない陽気な男、オックス。
もう1人は、マスクを外さない男、フェイスレス。
以前の戦いの時に教えてもらった連絡先へ、さっそく用件を伝えてみる。
そして、買い物中にすぐに返事が返ってきた。
どちらも条件は同じ。
面白いものが見つかったら、今後も噛ませろ、と。
リングに確認の上、合意の返事を返す俺。
あとは、2人がコロニー側に依頼を出すだけになった。




