MMW-076
「セイヤと組んだのが、間違いじゃなかったって最近毎回感じてるよ」
「それはよかった。俺もリングたちでよかったって思うよ」
試合終了、俺たちの勝利を伝えるアナウンスを聞きながら、休息中。
視線の先というかモニターには、手足を撃たれて戦闘不能になったMMWが3機。
リングとちゃんと組んでの試合、その決着が1つついたところだ。
今回、俺は一発も当てていない。
「やってみたかったからって、全部切るとか相手はビビっただろうなあ」
「それが目的だからね。リングも、俺の向こうにいる相手に、よく当たったと思うけど」
「避けるからって、自分の視界データを使って撃てって言ったのはセイヤだぜ?」
「あー……うん」
そうだったかな? うん、そうだった。
以前やったように、ウニバース粒子を見る力を応用し、殺気めいたものを感じ取れる俺。
それを意識すれば、後ろから放たれようとしているリングの射撃も感じられる。
だから、撃たれる瞬間避ければ、俺には当たらない。
『相手からすると、幻覚でも見てるかのような状態だったろうさ』
(でも、あの時のアデルはもっと早かった。目指す頂はまだまだ)
以前の、チーム戦としての戦い。
アデルたちとは分けれて戦ったけれど、映像はもらった。
その中での上位ランカーの動きは、事実別物だった。
無駄のない加速、位置取り。
何よりも、決断が早い。
「まだまだ強くなりたいからさ」
「それは俺も同じだ。エルデをこれ以上泣かせたくはねえ」
「なんだ、泣かせたことあるんだ? って、それはこっちもだけどさ」
「ま、泣く相手には勝てねえってことだ。お、そろそろだな」
お嬢様も、案外涙もろいところがある。
感情が豊かといえば聞こえはいいけど、飼い主としてはどうなんだろうね。
それはそれとして、こうして普通じゃない戦い方を続けていれば、いずれ。
そう遠くないうちに、目的が達成できるはずだ。
(それに、現場の情報はようやく得られた)
報酬として要求していた、情報。
お嬢様の家族、グランデール家の面々が最後に戦っていた場所。
その情報が、ようやく届いたのだ。
コランダムコロニーから、急いでも1週間以上かかる場所。
未開拓領域ぎりぎりで、何やら建物群が見つかったという場所。
そこからあふれる何者かと戦っていた、という情報だった。
『遠征に条件が加わったな。十分戦える実力であること、だ』
(うん。だからこそ、もっともっと……)
最悪、俺たちだけでも行けるような実力を。
決意を新たに、移動してきたトラックに機体を乗せ、戻る。
いつものようにお嬢様と会話し、ねぎらいを受け、報酬を確かめる。
貯金する額、使う額、使う先を決め……。
1つのメッセージに目を止めた。
「ようやく、作れるんだ」
「ええ、そうです。青石、恐らくはサファイアを使ったメタルムコアの作成。すごいですよ、基盤を刻むところからやっていいそうです」
俺にはよくわからないけど、すごいことらしい。
教育の内容にもないことだから、わからないなあ。
基盤を刻む、メタルムコアのことだろう。
確かに、メタルムコアは謎な技術だ。
器の内側に、模様のような配線、基盤を設けてその中に宝石由来のカットした石を固定。
それでなぜか、ウニバース粒子が集まり、動力となるのだ。
使う石、大きさなどで力も変わる。
嘘か誠か、かつては建物サイズぐらいの石を使ってメタルムコアを作り、巨大なMMWが動いていたとか。
いったい、何と戦う予定だったんだろうか。
『敵、さ。すべての』
(すべての、敵)
どこか冷静で、冷たいプレストンの声を聞きながら、メッセージに浮かぶ青石の輝きを見つめる。




