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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-073



「セイヤ、何すべきかはわかりますか」


「ええっと、まだ怒ってる?」


「違います! まだ怒ってますけど、ええ」


 女性陣2人による、怒りの嵐が過ぎ去ったと思った翌日。

 俺は朝食の後、こんな感じでお嬢様にたぶん、叱られていた。


 ぷんぷんって聞こえてきそうな姿に、魅力を感じてしまうのは俺だけじゃないと思う。


「最近、話が動きすぎですので、振り返りと足場固めが必要だと思いませんか?」


「……確かに。休憩はあったけど、一気に話が動いてるよね」


 押し黙っているプレストンも、そうでもないぞと言ってこないのだから、相当だ。

 去年の俺は、何をしていたかもう思い出せない。


 もっとも、教育の後遺症か、もともとあまり覚えていないのだけど。


「私は……できれば家を盛り返したいですし、両親たちの行方をしっかり見届けたいです」


「それは当然だと思うよ。俺はそれに納得してるし、問題ない。で、俺は……空を見る」


 俺自身は、生きる目的はなかった……あの日まで。

 偶然にせよ、頭の中に生まれたもう1人の俺。

 プレストンの問いかけに、俺はその手を取ったのだ。


 空を、地上を旅すると。


「私の目的も無理がありますが、セイヤのほうがもっとですよね」


「そうかなあ? そうかもね。でも、空を、地上を知りたいんだ」


 人間が、地下で生活し始めてどれぐらいか、記録は正しく残っていない。

 ヘルメット型の教育装置も、そこは細かくは教えてくれなかった。


 いつだったか、少しだけあった内容は、人間はもともと地上に住んでいたこと、それだけ。


(どこまでも広がる空、岩盤じゃない空の下で……生きてみたい)


 いつしか、その思いは俺の中で確かな目標になっていた。

 そのためには、色々な力がいる。


 MMWという武力もそうだし、地上に行くためのきっかけもいる。

 なにせ、単純にコロニーから出て行ったのでは、そのまま死ぬ未来しかないからだ。


『そもそも、地上が人間の生き残れる状態かどうかは、よく考えないとな』


(そりゃそうだけど、今は考えないでおくよ)


 プレストンからの、冷たいような、やさしいような突っ込みに返事を返し、お嬢様を見る。

 お嬢様は、タブレットを操作してあれこれと情報をまとめているようだった。


「やはり、お互いの目的のためにはランクをあげて、稼げるようにならないとダメですね。暮らすだけなら、どうにかなります。けれど、目的のためには足りません」


「それは俺も思うよ。これからは、殺さないように手加減できる試合ばかりとも限らない」


 相手も強くなるから、殺されないように動くだろうし、それは俺にも言える。

 良いところに当たればそのまま終わり、というシーンは増えてくると思うのだ。


 つまり、より戦いの精度が求められる。


「二人と相談してですけれど、セイヤの使う機体、その装備群をある程度絞ってセットにしましょう」


「セットに? ふうん……聞いてもいい?」


「ええ、もちろん。理由としては、自身の戦闘経験と、連携の精度を上げるため、です。今までのように、あれこれ使うのもありだとは思いますけど、より使いこんでいくほうがいいと思います」


 そうしてお嬢様がタブレットで見せてきたのは、MMWのカスタマイズ画像。

 まるで、手のひらに乗るようなサイズで描かれたMMWたちが並んでいる。


 これからの愛機であるMMW、フローレント。

 都合3機並んだそれらの装備は、ある意味わかりやすかった。


「遠近、至近距離を対応できる汎用、中近距離中心、中長距離中心、だね」


「はい。リングと一緒の時は、汎用以外のどちらかで、一人の時は汎用の物を使い、地力を高めて勝つ方向がいいと思うのです」


 正直、驚いた。

 俺はプレストンからも知識が得られ、相談だってできる。

 でも、お嬢様にはそれがない。


 なのに、俺とプレストンで話し合った結果とほぼ同じ内容なのだから。


「うん、俺も賛成。実際の武装は2人と相談しよう」


 さっそく、と腰を浮かせたところで来客。

 ちょうどよく2人が来たのかな?と相手をカメラに写すと……は?


 そこに写っていたのは、アデルだ。

 慌てて許可を出し、出迎えに向かう。


 ランカーが、1人でいきなり家にやってくるなんて、いつまでも慣れるものじゃあない。


「何か仕事?」


「いや、情報だ。厄介ごととも言うか」


「ランカー直々に、ということは、相当な話ですね」


 お嬢様の真剣な姿を、アデルの頷きが肯定する。

 話が動きすぎるって言ったそばから、これである。


 ひとまずは部屋に入ってもらい、お互いに座る。

 たったそれだけなのに、妙な緊張感だ。

 

「まず、ここから急いでも2週間はかかる場所での、大規模な戦闘の記録が出てきた」


「出てきたって……」


「ベルテクスに吐かせた。借りを作ったわけではないぞ」


 なんでもないように言うけれど、それができるのはアデルぐらいだと思う。

 実際、俺たちで同じことができるわけもない。

 それに、タダより怖いものは無いと思うのだ。


『ああ……その通りだ』


 プレストンの重い言葉に、自然と気が引き締まる。

 アデルに向け、答えを返す。

 何が必要なのか、と。


「実績だな。自分で遠征を発注できるように、どんどん試合を組め」


 今日の食事内容を告げるかのように、アデルはそんなことを言って来るのだった。




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